第8話 化石発見!

「わっ!」


 急に悲鳴が聞こえて、友則がバランスを崩しいているのが見えた。

転ぶ! と思って手を伸ばそうとしたが間に合わない。が、


「大丈夫?」

 

 近くを歩いていた入江がなんとか間に合ったようだ。友則の体を支えている。


「はい。なんとか」

「足元気を付けて。普段歩いてる道と違うから」


 入江に言われて足元を見ると、確かにいつも歩いているコンクリートの道とは違う。土の上に石や葉っぱ、それに木から伸びてきている根っこなんかがあって歩きにくい。


「昨日雨だったし、葉っぱとか草がぬれてて滑りやすいから」

「入江くんの言うとおりですね。みんな気を付けてくださいね」


 にこにこと先生は笑っているけど、直太は入江が自分から話すことにびっくりしている。教室だとわからないけど、必要なことはちゃんと喋ってくれるみたいだ。

 転ぶのを心配しているのか、みんな歩みが少しゆっくりになる。


「ねえねえ、直ちゃん」


 先を行っていた青葉がいつの間にか隣に来ていた。


「やっぱり、道があるところなんて見つからないんじゃないかなあ。だって、みんなが見てるわけだし。私たち以外にも通ってる人がいるならその人たちが見つけちゃってるんじゃないの?」


 青葉が割とまともなことを言っている。確かにそうだ。


「そうでもないです。場所によっては歩道の近くに化石が入った石が落ちているような場所もあるみたいです。別に、みんながみんな化石探して歩いてるわけではないですから」


 そろそろと歩きながら友則が言う。


「うーん。でも恐竜の化石ってでかいんじゃない? 落ちてるようなもの?」

「ばらばらになったものが落ちてることはあるんじゃないですか?」

「あっ、そうなんだ。全部まとめて恐竜の形になってるわけじゃないのかあ」

「なってたら楽ですけど。あ」


 友則がなにかを見つけたようだ。直太も友則の視線の先を見る。

 遊歩道から少し離れた場所に、小さく崖みたいになっているところがある。


「ああいう感じで岩が出ているところに化石があることが多いです。昨日の雨で少し崩れたみたいですね。そうすると今まで見えていなかった地層が現れて……」

「本当!?」


 友則の言葉を最後まで聞かず、青葉は遊歩道から外れて崖の方へ走っていく。


「あー、あんまり道から外れると危ないですよ」


 先生が止めてもおかまいなしだ。


「なにか見つかるかもしれませんから、気にはなりますね」


 友則もがさがさと草を分け入って青葉に続く。すごく歩きにくい。


「ほらー! 直ちゃんたちもはやくー!」

 

 青葉が呼んでいる。こういうときは止めたって聞かない。

 青葉は早くも崖のところに着いている。何かに夢中になると他のものが見えなくなるというか、一直線というか。

 しかも、直太と違って運動神経がいいからヤブの中なんかすいすい走って行ってしまう。


「待ってよ、青葉ちゃん!」


 呼んでもやっぱり青葉は止まらない。


「あっ! これ、貝!?」

「え、本当ですか」

「ちょっと待って、これ、骨じゃない? マジで化石? ヤバいヤバい!」


 青葉の叫び声が聞こえてくる。青葉はウソを言うような性格じゃない。


「本当に?」


 気になっていてもたってもいられなくて、直太も走り出してしまう。

 だって、本当に化石が見つかるなんて!

 ただの山歩きで終わると思っていたのに。もしかして、大発見になったりして!

さすがに入江も気になるのか一緒に並んで走っている。


「見て見て!」


 青葉がぶんぶんと直太に向かって手を振っている。本当になにか見つけたらしい。

 早くこの目で確かめたい。

 だから、


「うえー!」


 先生がなんだか慌てた声で叫んでいても、そのまま青葉の方へ向かって走ってしまった。

 うえ? うえってなんのことだろう。

 意味が頭に入ってこない。

 うえ。上?

 気付いたときにはもう遅かった。

 先生の声がなにか叫んでいる声が、大きな音でかき消される。

 バッと上を見ると、なだれのような土が直太たちに迫っていた。崖が、崩れたんだ。


「わー!」

「え?」


 青葉と友則もようやく気付いて上を見る。

 逃げられない。

 怖くて思わず目をつぶってしまう。

 迫ってくる音。

 そして。

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