第7話 そんなにすぐには見つからないよ

 電車で少し来ただけなのに、いつも住んでいる場所よりも山が近い。田んぼや畑、ぽつりぽつりとある見えている家。そんな中にあるのんびりとした道を歩いているだけで、山はどんどん近付いてくる。

 冒険にはほど遠いけれど、初夏の暑すぎない太陽の光と風が気持ちいい。


「化石は川沿いでよく出るんだそうです。川の流れで地層が削られて、その場所から化石が発見されたりするみたいです」

「すごいですね、片山くん。よく知っていますね」

「同じように海沿いの崖なんかでも出ることがあるそうです」


 先生にほめられて、友則が得意そう続ける。


「楽しみだなあ。恐竜の化石、きっと見つかるよね」


 青葉はスキップでもしそうな勢いだ。ようやくこうやって外に出て冒険部らしいことが出来るんだ。はしゃぐのもわかる。直太だって、こうして歩いているだけで楽しくなっている。

 先生は遠足気分を楽しんでいるのか、元々細い目がいつもよりさらに細くなっているように見える。

 問題は。

 直太は横目で後ろから着いてきている入江を見る。あいかわらず、表情が変わっているようには見えない。

 自分から来ると言ったのだから楽しんでいるのだろうか。表情からは読み取れない。

 部員の一人と言っても、ほとんど初対面みたいなものだ。


「あのさ、いい天気だね」

「うん」

「恐竜、見つかると思う?」

「どうかな」


 黙っているのもどうかと思って話し掛けてみたけど、帰ってくる言葉に次が続かない。

 前を歩く部員二人+先生は直人たちの会話なんて気にしていなさそうだ。


「入江くんって、どうして冒険部に入ったの?」

「……楽しそうだから」

「僕と同じだ」


 直太の場合、青葉に誘われたのもあるけれど、楽しそうと思えたのがやっぱり大きい。


「冒険って言葉だけでわくわくするよね」


 こくりと、入江がうなずく。

 それだけでなんだか嬉しくなった。黙っていても気にならなくなるくらい。


「で、どこで恐竜って見つかるのかな」


 青葉がきょろきょろと周りを見回している。

 わからないでもない。これでは本当に普通の遠足というか山歩きだ。だけど、まだ山に入って沢沿いの遊歩道を歩き始めたばかりだ。


「それっぽいのもないし」


 青葉は結構気が短い。


「だから言ったじゃないですか。化石を見つけるなんてすごく大変なんですよ」


 やれやれと友則がため息をつく。


「せめて、貝かなにかの化石でも見つかればいいんですがねえ」


 にこにこと笑う先生。


「えー、せっかく見つけるなら恐竜がいいよー! やだやだ! 恐竜の化石見つけたいよ!」


 一番年上なのに、駄々をこね出す青葉。


「青葉ちゃん、もう少し歩いてみようよ。そのうち見つかるかもしれないし。すぐに見つかったらつまらないでしょ」

「そっか、そうだよね。楽しみは最後に取っておくのがいいんだよね。ケーキのイチゴとか! さすが直ちゃん!」


 機嫌が直ったようでほっとする。イチゴは関係ないと思う。

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