出発! そして、迷子?

第6話 冒険へ出発!

 昨日の雨がウソみたいな青空が広がっていた。


「晴れてよかったね!」

「今日は無理かと思いました」

「……」

「いやあ、本当に来ることが出来てよかったですね」


 電車を降りて、まぶしそうに目を細めながらみんなが伸びをしている。

 住んでいる街から電車に乗って少しゆられた駅のホームに直太たちは立っていた。みんな遠足の時のような格好をしてリュックを背負っている。

 今日は待ちに待った冒険部の、冒険の日だ。


「おやつ、ちゃんと持ってきた? わたしたち昨日一緒に買いに行ったもんね!」

「あ、うん」


 昨日は土曜日で雨も降っていたから家にいたら、チャイムが鳴って青葉が一緒に明日のお菓子を買いに行こうと家に来たのだ。その時には、明日は無理なんじゃないかと直太は思っていた。

 それにしても、入江が無言で直太のことを見ている気がする。なにか誤解でもしているのかもしれない。


「ええと、僕たち家が隣だから」

「そうなんだ」


 言い訳みたいに聞こえただろうか。でも、入江もそれ以上興味はなさそうにうなずく。

 本当に入江が来るとは思っていなかった。一応日付とか連絡はしていたけど、結局部室には顔を出していなかったからだ。それなのに、今日来てみたら集合場所にはしっかりいた。電車の中でも全然しゃべらなかったけど。


「おやつは三百円までですよ。この前も言いましたけど」

「はい! ちゃんと三百円までで買ってきました!」


 先生の言葉に、はい! と青葉が元気に手をあげる。


「いやあ、言ってみたかったんですよね、これ。ああ、もちろん、バナナはおやつに入らないんですよね」


 その言葉も、この前も聞いた。


「遠足と言えば、おやつは三百円まで、ですよね。ああ、まさか本当に言える日が来るとは思っていませんでした」


 なんだかとても幸せそうな顔をして、先生が胸に手を当てている。今日の持ち物を先生が説明した日も同じようなことをしていた。


「先生は遠足、行ったことないんですか?」


 青葉も不思議に思ったらしく、先生に質問している。

 なんで、おやつの説明くらいでこんなに幸せそうにしているのか。この前から直太も気になっていた。というか、変な先生だなと思っていた。


「あ、え、ええ。遠足に先生として行くのは初めてだったもので。も、もちろん、子どもの頃には行ったことがありますよ、はい」


 あっはっはと、ごまかすように先生が笑う。先生のおでこから汗が流れている。なにをそんなに動揺しているんだろう。やっぱりちょっと変だ。まさか、本当に遠足に行ったことがないのだろうか。

 もしかして、体が弱くて子どもの頃は遠足に行けなかったのかもしれない。それで、先生になって夢だった遠足みたいなもの(今回は遠足ではないから)にやっと行くことが出来てすごく嬉しいのかもしれない。

 想像したらかわいそうになってきた。思わず先生のことを見てしまう。直太からの視線に気付いたのか、先生がこちらを向く。


「どうしました? 竹内くん」

「なんでもないです!」


 本当に想像していたことが当たっていて、口に出してしまったら先生を傷つけてしまう。


「そうですか?」


 先生が首をかしげる。けれど、


「じゃあ、行きましょうか。みなさん、ケガのないように気を付けて行きましょうね」


 すぐにそう言って笑ったのでほっとした。

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