欲望
今からちょうど3年前、俺が東京に越して大学に入学してまだ間も無い頃、高校2年の冬から付き合っていたSと在り来りな理由で別れることにした。
もちろん卒業をきっかけに別れる理由なんて、会えない寂しさと新しい世界への好奇心でしかない。
多分、寂しさってのは、自分では抑えられない好奇心を、心の奥底に隠すためだけの、いや、むしろ少しでも人間としての純白さを保とうとするだけの単純な言い訳でしかない。
好奇心こそが動物の本能的欲望なのに。
そうやって、人間には、欲望を理性という名の美学で圧倒する癖がある。
どうせ心の蓋を開けたら、誰だって欲と毒に塗れた無秩序の荒野がそこには広がっているはずなのに。
それでも人間は、理という道徳を唱える。
蓋を開けることはせず、虚構のブランケットを何重にもして蓋を覆う。
最近は、好きだった子が自分に振り向いた瞬間にその子を気持ち悪いって感じてしまう痛々しい特殊な奴らが蔓延ってる。
それを俗に蛙化現象と呼ぶらしいが、蛙に失礼だろうよそれは。
理性は人間が言うところの人間らしく生きる上で、多分必要なんだろう。
愚かな生き物だ。
お前も所詮同じなんだよ。
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