誰
21歳
盲目
「誕生日おめでとう!今年もXちゃんにとって良い一年になりますように。」
満面の笑みとゼラニウムの花束を片手に俺は友人のXに言った。
こいつはただの大学の連れ。
もう今年でこいつの梟みたいにデカくて円な瞳を拝む歴は4年目になるらしい。
こいつとは毎年誕生日プレゼントを交換するくらいの仲で、大学の連れの中だったらまあ過ごしてきた時間は結構長い方。
多分いちばん長い。
よく周りには、お前はコミュ力お化けだし、友達たくさん居て毎日楽しそうだなって言われるけど、友達なんか本当はいない。
みんな口と口で繋がれただけのただの知り合い。
Xってやつは何処にでもいるお転婆なやつで、その上賢くもあるから、男ウケがかなりいい。
別に俺にはそんな気は全く無いが。
Xみたいなやつは昔から女として好きになれない性で、男が何を好いているか全て分かった気になって、それを恥ずかしげもなく実践してしまうところが、チープで滑稽だと思う。
今流行りのアイドル活動ってのに本気になってるやつも根本は同じ。
造られた愛に盲目になって、週五で頑張って稼いだバイト代を、自分の愚かさに気付かず無意味な出資を厭わない蟻たちを嘲笑う、そんな女王蟻に費やしてしまう。
とか言いつつも、Xとは大分仲がいいのも残念ながら事実。
こいつの真剣な眼差しと黄色い共感の声が、どうも俺の語りには必要みたいで、あいつらにとっちゃSNSくらいの中毒性があるんじゃねえかな。
人間は何か寄り掛かるものが無いと生きていけない。
愚かな生き物だ。
お前も所詮同じなんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます