月光魔法


「大きい……」


 窓から見る満月に吸い込まれそうになる。


「うん」


 がっ君も、同じように、満月を見ていた。

 手がのびる。


 指が絡んで。

 当たり前のように、こうやって。少しでも。ほんのちょっとでも、距離を埋めたいと思ってしまう。その視線が、月に釘付けになって。


 なんだか、面白くない。


 月の向こう側、あちらにいるかぐや姫に、がっ君を取られそうな――そんな錯覚を憶えて。

 私は、がっ君の口にお月見団子を放り込んだ。


「希良――」


 口をもごもごさせるカオが可愛いって思ってしまう。

 がっ君が、やっと私を見る。


 手は繋いだまま。

 分かってるよ。

 がっ君はこうやって。いつだって。いつも、寄り添ってくれているから。


(でもね――)


 つーと、指でがっ君の首筋を撫でる。

 もっと、ちゃんと見てくれなきゃイヤだ。


 他に目移りなんかさせない。

 どうせなら、魔法をかけて。がっ君を狼男にしちゃおう。私しか、見られないくらいに――。









「ここはリビング! お月見団子は私も作ったんだけど?! イチャつくなら部屋で――やっぱり、ダメ! それ絶対お姉ちゃんが歯止め効かないヤツだから!」







 妹がなにか言っている気がしたけれど。


(まぁ、良いか)


 リビングに差し込む月光。がっ君のはにかむ笑顔を照らして。

 ずるいなぁ。


 月夜の魔法。


 かけたのは。

 かけられたのは、どっちなんだろう?






 この魔法、一生、解けそういない。

 

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