幕間の物語

エヴォリューションⅡ(前編)+お知らせ

「リュクス様。本日のご予定は?」

「実はあんまりなくてさ。まぁテストも近いし、がっつり勉強でもしようかな」

「では後でコーヒーでもお持ちしましょう」

「それは楽しみだ」


 休日。

 朝のトレーニングを終えた俺は、デポンと共に自室に向かう。


 少し汗をかいたので着替えようと部屋に入ると……。


「カサカサ……」

「「うわあああああ!?」」


 俺とデポンは悲鳴をあげた。

 壁に体長1メートルほどのゴキ〇リがくっついていたからだ。


「い、一体どこから!?」

「き、気持ち悪い……待ってろデポン。こいつをこの世から消し去ってやる!」


 デポンを庇いつつゴキブリの様子を窺っていると、横からキラメの声がした。


「うおおおおお! かぶとむしさいきょうー! さいきょううう!」


「キメ。コイツはカブトムシじゃない。ゴキブリだ!」

「ちがうのー?」

「似て非なるものだ」

『正確にはウルシゴキブリと言います』


「「しゃべったー!!??」」


 壁に張り付いたゴキブリは突如しゃべり出した。

 いや、この声は……。


「この声。もしかしてピエールさんか?」

「その通りです神。お久しぶりです」

「本当に久しぶりだな。ってか、まだ屋敷にいたんだ」


 姿を見かけないから、とっくに旅だったのかと思っていたぜ。


「いえ神。私は小動物の姿を借りて、キラメさんを見守っていたのです」


「なるほど。それはありがとう」


「いえいえ。で、最近動物に興味を持ち始めたキラメさんの命により、様々な動物に変身してみせていたのです」


 なるほど。

 生きる動物図鑑ということか。


「ぱぱ。こいつすごい。ゆうのう」

「ありがたき幸せ」


「まぁ、仲良くて何よりだよ」


「あの、リュクスさま……私、ちょっと気分が」


「ああ悪いなデポン。戻っていいよ」


「お言葉に甘えて……失礼致します」


 青ざめた顔でデポンは部屋の外に出て行った。

 無理もない。

 1メートルの大きさのゴキブリなんて、化け物以外のなにものでもない。

 というか。


「なんでそんなにデカいんだよ? もしかして、俺が知らないだけでそんな大きさのゴキブリがこの世界には存在しているのか?」

「いいえ神。これは間違って潰されないように、敢えてこれくらいの大きさで変身しているのです」


 なんでも、今日のゴキブリ大変身をキラメに見せるため、ピエールさんは王都に繰り出しゴキブリを捕まえてコピー。

 その後、屋敷にてゴキブリになりきるための練習をしていたらしいのだが。


「途中でネギーさんに見つかり、問答無用で潰されそうになってので」

「それで体を大きくしたのか」


 害虫駆除はネギーの趣味だからな。

 昔は猫みたいにキモい虫を捕まえては見せびらかしていた。

 

 とはいえ、その大きさはそれはそれでネギーの抹殺対象になりそうだが。


「ところで神。私は神に抗議しなくてはならないことがあります」


 巨大な不快害虫……じゃなかった。

 ピエールさんは不満げに俺に何かを訴えてきた。


「聞くから元に戻ってもらってもいいですか?」

「我が神よ。了解した」


 ピエールさんは元の姿に戻る。

 しかし、壁に張り付くのはやめないようだ。

 キメが真似すると困るから降りなさい!


「それで。抗議って?」

「はい。風の噂で聞きましたが、神はみがわり人形なる魔道具と戦ったとか」

「ああ。先週の話だな」

「何故!」

「うわっびっくりした」


 突然大きな声を出されたからビックリした。

 横のキメは笑っているが……。


「何故そのとき私に声をかけてくださらない!? 私ならばその魔道具よりも華麗な変身で英雄の息子レオンを完全に再現して差し上げたというのに!」


「いや。そういう話じゃなかったから」


「しかし。やはり神のピンチに側に居られなかったことが! 頼られなかったことが何より悲しい。神。やはりここは貴方様の眼で、私をテイムして頂きたく!」


「えぇ……」


 いらねぇよ……なんかうるさいし。


「いやいやピエールさん。貴方、俺たちに構っていていいんですか? 行きたいところとか、ないんですか?」

「最早帰る場所もない身。神のいるところが私の居場所なれば」


 いやずっとここに住む気やん。

 とはいえ。


「キメと遊んでくれるのは普通に助かるか」


 今は俺とメイドたちが交代で面倒を見ているが、どうしても仕事や作業の片手間になってしまうからな。

 学園に通っている俺は、夜だけになりがちだ。

 じっくり腰を据えて遊んでくれる相手がいてくれるのはありがたい。


「わかった。けど、本当にいいんだな?」

「はい。救ってくれたご恩。この命を以てお返しする所存」

「……。いやまぁ肩の力抜いてな? よし――ドミネーション!」


 魔眼を第二形態に変化させ、支配の力を発動。

 ピエールさんの目っぽいところを見つめつつドミネーションを使うと、支配が完了する。

 とはいっても、テイムだけして、自由意志を奪うようなことはしない。


「う……うおおおおお!? 神! 神と繋がった瞬間、私の体の中に力が溢れてきますよぉおおお」

「うわ本当だ。ピエールさんの魔力がぐんぐん上昇していく!?」


 抑えられない程の魔力が可視化され、オーラのように体から溢れ出ている。


「ウオオオオ! 凄い! 凄いですよ。キラメさん!? これが神と契約を結ぶということなのですか?」

「しらん……なにそれ……こわ」


 キメは知らないらしい……。


 え、何が起こっているの? 俺も怖いんだけど。


 やがてピエールさんの体が光に包まれる。


「このかがやきは!?」

「進化の光だな……」


 まぶしい輝きの中で、ピエールさんの人型がシルエットになっている。

 そのシルエットが全く姿を変えないまま、輝きが収まり、中から現れたのは――


「ドッペルゲンガー超進化! ――ドッペルレイヤー!!」


 中から現れたのは――ちょっとカッコいい感じの普通のおっさんだった。



***

***

***

あとがき


先日7月10日に書籍第一巻が発売となりました。

「おいおいまた宣伝かよいい加減しつこいぞ」と思う方もちょっと待って、聞いていってください。

例のサイバー攻撃だったり、同日発売の他作品が超人気作ばかりだったりと逆境過ぎて胃が痛い日々を送っておりましたが、またもや逆境にさらされております。


というのも、電子書籍大手のブックウォーカーさんでも「魔眼」が配信されているのですが、なんとあらすじ部分がまったく別の作品のあらすじに誤植されているのです。

しかもその作品は11巻らしく、まじで意味わからん状態になっています。

(なんかチョコのためにカカオを探しに行く…みたいなことが書いてあります)

せっかくご新規さんにタイトルと表紙で興味を持って貰えても、あらすじで???なって買って貰えていないという状況が数字に表れています。


一応修正依頼は出しましたが、22時現在直っていないのが現状…。


ラノベは発売から一週間ですべてが決まるというのは有名ですが、発売日というゴールデンタイムを逃しているのはかなり痛手です…。


なので、皆さんにも是非、書籍版を買って頂きたく…。


わかってます。「なんで一度読んだ話を金出して買わなくちゃいけないんだ」という気持ちはメッチャわかるし、僕も昔はそう思ってました。


とはいえ、話の流れこそは同じですが編集者さんの鬼の指導&ツッコミによって、完璧な状態に仕上がっていますので、一度読んだ方でも楽しめる完成度になっていると自負しております。

(個人的にクレア戦辺りがメッチャよくなってます。あとメイドたちとの追加新規エピソードもあります)


本当は格好良く「メッチャ売れてます!」みたいに報告したかったのですが、例の騒動でプロモーションがうまくいってないのか、先月から既存の人気作が安定して売れて、新作は軒並み苦戦みたいな状態が続いています。

しかも僕の場合、あらすじのトラブル。超辛い。


情けないとわかっていても、僕が作品のために出来ることは、皆さんに「助けて」とお願いすることなのかなと思い、こうしてここに書かせて頂きました。

デビュー作の時のように「打ち切り」と、あんな悔しい思いはしたくないのです。


「すでに買ったぜ」という神は、コメントで教えて頂けると、僕の安心ゲージが上昇しますので、是非教えてください!

もう読まれた方はWebと比べてどうだったか?とか教えてくれると嬉しいです。


まだ迷っているという方、後悔はさせません。絶対に面白いので、是非一冊。紙でも電子でもいいので、お手に取って頂けると嬉しいです。


長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。


それではまた次回。


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