第135話 180秒の作戦
あの撤退から二時間。
俺たちはこのエリアについて調査をした。
そして、このエリアの奥から放たれたレーザー攻撃を行った者について知ることが出来た。
ポジトロンドラグーン。
四つん這いのドラゴンの背に巨大なレーザーキャノン砲がくっついているというなんとも珍妙なモンスターだが、その性質は冬虫夏草に近い。
というのも、本体はレーザーキャノン砲の方で、ドラゴンには意志はなく、ただの魔力タンクのような役割をさせられているのだ。
この世界のドラゴンの魔力量と再生力は大魔族たちを越えて最強。
そのドラゴンの魔力をエネルギーに変換し、侵入者を排除する殺戮兵器としたのがポジトロンドラグーンなのである。
集まった情報をまとめていく俺とレオンの話を聞いて、リィラが疑問を浮かべた。
「ですが何故、あのパネルを介して攻撃してくるのでしょうか? わざわざそんなことをしなくても、直接侵入者を狙い撃ちすればいいのでは?」
リィラの疑問はもっともだ。
このドーム状の空間に入った瞬間を狙えば、侵入者を一網打尽にできるだろう。
「二射目までの時間じゃない?」
「二射目?」
リィラの疑問に答えたのはクレアだった。
そして「そうだろ?」とウィンクしてきたので、俺は頷き返す。
「クレアの言うとおりだと思う。確かに入ってきた直後にあの攻撃を受ければ全滅は必至」
「でも、ボクたちのように回避できる者が居たとしたら?」
「な、なるほど……確か、二射目までの時間は……」
「180秒っすね」
クールタイムについても調査済だ。
とはいっても放熱時間ではなく、限界まで魔力を搾り取られたドラゴンが再び万全の状態になるまでの時間が180秒。
マスマテラたちが一瞬で魔力を回復させていたのを見るに、そこまで時間がかかるということは、本当にあの攻撃のために死ぬ寸前ぐらいのところまで搾り取られているのだろう。
「それだけあればポジトロンドラグーンに接近し、攻撃を仕掛けるか……スルーして奥に進むこともできる」
とはいえ180秒でこのエリアを抜けられるかはかなり微妙なところだ。
ファントムステップを駆使してもギリギリ足りない可能性はある。
真っ直ぐ走ってギリギリ。途中でブラストホーネットの妨害が入ればほぼ不可能だろう。
「それにパネルによる角度変更があれば、侵入者がこのエリアのどこに居ても狙い撃ちできる」
例え一射目を外しても、ブラストホーネットたちに足止めをさせ、二射目で確実に仕留める。
そのためのパネルなのだろう。
また、全ての魔法攻撃を弾くあのパネルは、ポジトロンドラグーンを遠距離攻撃から守るための盾の役割も持っている。
まさに攻防一体のギミックだ。
「なら、このエリアを突破するための作戦は決まりですね」
「ああ」
まずは出口付近でブラストホーネットを誘き出し、敢えてレーザー攻撃を誘発。
その後、俺とイブリスが全力で敵に接近。
ポジトロンドラグーンに二射目を撃たせる。
そのタイミングでイミテーションを使い、ポジトロンドラグーンをコピーパネルで覆い尽くす。
敵のレーザー攻撃をそのまま反射し返すことで倒す。
わずか180秒の電撃攻略。
この作戦でポジトロンドラグーンを倒す!
……。
え?
加速スキル(俺で言うファントムステップ、レオンで言うフォトンドライブ)で駆け抜けた方が早いんじゃないかって?
それをやるとほら、俺とレオンで二人ずつ抱えていくことになるだろ? そうなると重くて速度が十分に出せないんだよ。
あはは、こんなこと、女の子には決して言えないけどね。
「リュクスくんとレオンくんが私たちを抱えて駆け抜ける……では駄目なのでしょうか?」
「お前らが重いから無理」
「なっ!?」
しかしレオンとリィラのバトルが後ろで始まる気配がした。
俺の気遣い……
***
***
***
あとがき
最近更新滞っててすんません。
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