第134話 天才のアドバイスは役に立たない

前書き&謝罪


前回の話にてメタル系がドロップする素材として「モノゾイドメタル」が登場しましたがこの名称、以前77話でもグランセイバーⅢの材料の金属にも使用していました。

なので

メタル系が落とす生体金属素材→「モノゾイドメタル」

グランセイバーの材料→「グランゾイドメタル」


とします。

該当の77話は既に修正しました。


お手数ですがよろしくお願いいたします。


***

***

***


 メタル系モンスターが闊歩する第二層を進む俺たちの次なる敵は、ドリルの角を持ったカブトムシ型のモンスター、ドリルビートルだった。

 50cmくらいの大きさながら、角を回転させてこちらに突っ込んでくる厄介な敵だ。


「カブウウウ」

「――斬鉄一閃」


 角のドリルを回転させながらクレアに向かって突進していたメタルビートルの一体が真っ二つになった。


「うん。最初は手こずったけど、かなりコツを掴んできたよ」


 これまでの戦闘で、クレアはメタル系モンスターの身体を切断できるようになったらしい。

 なんでも本人曰わく「自然と切りやすいラインが見えてくる」とのことだったが。


「ねぇリュクス。あの女が言っていたこと理解できてる?」

「いや全然」


 レオンの問いに、残りのドリルビートルの突進を捌きながら答える。


 クレアが言っているのは関節が脆いとかそういう次元の話じゃない。

 メタル系の関節は強度を保ったまま柔軟性もあるため、逆に切りにくいまである。


「あはは。どうやら君たちはまだ、私の領域レベルには達していないようだね」

「むっかー」


 クレアの言葉に苛立ったのか、レオンは剣を半回転させる。そして刃ではなくグランセイバーⅢの広い刀身を、突進してきたドリルビートルに叩きつけた。


「ビィイイ」

「ナイスバッチレオン」


 ホームランってとこか。

 打ち返されたドリルビートルはそのまま遠くの壁にぶつかり潰れた空き缶のようになった。


 魔眼で改めてドリルビートルを解析してみるが、クレアが言うようなラインは見えてこない。

 ドミネーションで使役してゆっくりその肉体を観察したいと思ったが、本物の目がないメタル系には通用しなかった。


「素材回収したっす!」

「よし。それじゃあ先に進もうか」


 イブリスの素材回収を待って先へと進む。


 そろそろ中ボスが出てきても良い頃だが。


 少し狭い通路を抜けると、とても広い空間に出た。


 ドーム状になった場所のようだが、天井は高すぎて見えない。


 そしてこの空間にはハニカム構造の巨大なパネルのようなものが何枚も浮かんでおり、見通しはかなり悪い。

 真っ直ぐに進めばすぐに抜けられそうではあるが、中央に進んだところで囲まれたらひとたまりも無い。


「この空間の奥に次の道があるのでしょうか?」

「おそらくな」

「迂闊に進むのは危険かしら?」

「どうする? フォトンディメンジョンで偵察させる?」

「そうだな。頼んでいいか?」

「うん任せてリュクス……待って、何か来る」


 レオンが上方を睨む。


 すると、空に浮かんでいたパネルの裏側から大きな蜂のようなモンスターが姿を現す。


 ブラストホーネット。

 背中に蜂の巣のような巨大なミサイルポッドを積んだ大型飛行モンスターである。


「例によってメタル系だ。しかも飛行タイプ。気を抜かずに行こう」


 全員が頷く。だがそれと同時に先制してきたのは相手の方だった。


 ミサイルハッチが開き、中からミツバチを模したマジックミサイルが大量に発射される。


「迎撃なら――フレイムストーム!」


 リィラの炎の竜巻がマジックミサイルを打ち落とす。

 そのまま炎を敵にぶつけるリィラだったが、モノゾイドメタル合金の装甲には魔法は一切通用しなかった。


「ビイイイイイン」


 そしてブラストホーネットは間髪入れずに次の弾幕を発射する。


「これじゃ近づけないね」


 引き攣った顔でクレアが言った。


「もし近づくことができれば、切れるか?」

「うん。見えているから余裕だよ」


 飛行しているブラストホーネットに落石攻撃は当たらないだろう。

 なら弾幕をなんとかして、クレアに切ってもらうしかない。


「わかった。俺とレオンとリィラ、そしてイブリスで相手の弾幕を相殺しつつクレアが接近するチャンスを作る。エリザはクレアのサポートを頼む」

「わかったわリュクス」」

「わかりました。クレア、頼みましたよ」

「任せて!」

「待って」


 ブラストホーネット攻略に向けて動く俺たちをレオンが止めた。


「なんだ?」

「あっちから物凄い魔力を感じる」


 レオンの指差した方――この空間の奥の方が光っている。

 その光はレーザーのように天井まで伸びると……浮かんでいたパネルに当たる。


「な、なんだ?」

「何かの攻撃かしら」

「でもなんで天井に?」


 パネルにぶつかったレーザーは45℃角度を変え進む。そしてまた別のパネルにぶつかる。


 それらを繰り返しながら、こちらに近づいている。


「まさか……みんな、一度戻ろう」


 何か言いたそうなやつも居たが、俺の言葉に大人しく従ってくれた。

 おそらく全員が「あの攻撃は反射を繰り返しながらこちらを狙っている」と気づいたのだろう。

 レーザーが反射を繰り返しこちらに近づいてくるほどに……その膨大な魔力量に圧倒されそうになる。


「ビィイイイイ」


 だがそんな俺たちを逃さないとばかりに追撃してくるブラストホーネット。

 新たなるマジックミサイルが俺たちを襲う。


 あのレーザー攻撃の狙いは間違いなく俺たち。


 だったらコイツに構っている暇はない。立ち止まってマジックミサイルを迎撃していたら間に合わなくなる。


「レオン、リィラとイブリスを」

「わかった――フォトンドライブ」

「俺も――ファントムステップ」


 俺とレオンはそれぞれクレアとエリザ、リィラとイブリスを脇に抱えると、超加速スキルで戦線を離脱。


「ビィ……ビィイイイイイ」


 そしてその直後。

 先ほどまで俺たちが戦闘をしていた場所に、莫大な魔力を持ったレーザーが降り注ぐ。

 その威力は魔法攻撃に耐性があるはずのブラストホーネットすら消し炭にするほどの凄まじい火力だった。


「ぎ、ギリギリでしたね……」

「あんなの……私の防御魔法じゃ防げないわよ」

「フォトンリフレクションで反射……も無理そうだ」


 レーザー攻撃がもたらす凄まじい衝撃に耐えながら、俺はここをどう突破するかを考えていた。


***

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***

あとがき


メタル系には魔眼のドミネーションも効かない…という説明を前回入れ忘れていたのでここにてさらっと。

クレアが知らない間に切れるようになってますが、ゲームではプロテアさんに殴り倒して貰ったりフォルテラさんにオルガンでガーンしてもらうのが有効打だった様子。


またリュクスが何も言っていないので「メタル系特攻スキル」のようなものは存在しなかったのでしょう。


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