第133話 メタルだけど熱いぜ

 第二層に足を踏み入れると、巨大な広い空間に出た。


 第一層は「ザ・迷宮」という感じだったが、第二層はそこから雰囲気を変えてきた。

 個人的には前世の社会科見学で行った大谷資料館を思い出す。

 特撮でもよく使われているあの場所によく似ていた。


「あれは……」

「なんですか?」


 そんな岩をくり抜いて出来たようなダンジョンを我が物顔で闊歩するモンスターたちに、リィラとエリザが驚いた。


「ギィ……」


 横にしたスタンガンから足が六本生えた姿をしているそのモンスターの名はクワガイガーという。

 自家用車ほどの大きさで、スタンガンの放電部分を二本の角に見立てている。


 この世界でも非常に珍しいメタル系、つまりロボットモンスターだ。


「奇怪な動きをするね……」


 クレアも興味深そうにクワガイガーを観察していた。


「ほおお! 見て下さい見て下さい! メタル系ですよ! 自分、初めて見ました!」


 一方のイブリスは大興奮だ。

 大興奮し過ぎたせいで、クワガイガーに気づかれた。


「ギィイ」


 やがて、赤いセンサーをバチバチに光らせながらクワガイガー3体がこちらに迫る。


「気付かれちゃったじゃない!?」

「みなさん! メタル系モンスターは積極的に討伐していきましょう! 素材アイテム【モノゾイドメタル】はできる限り回収していきます」


 モノゾイドメタル。

 生物と金属両方の性質を持つ、この世界の希少金属だ。


 メタル系モンスターの身体に多く使用されている金属で、その性質は謎に包まれており、人間には加工不可能。


 ゲームではメタル系モンスターがドロップするものの、所謂【換金アイテム】だった。


「もしかしてイブリスが求めている素材ってモノゾイドメタルのこと?」


「いえ、違いますけど……モノゾイドメタルが手に入るなら欲しいです!」


「なるほど」


 この世界のイブリスなら……モノゾイドメタルを研究し加工することができるようになるかもしれない。

 そうすれば、彼女がどんな素晴らしいものを作ってくれるのか。


 研究材料として、ここで数を揃えておくのも悪くない。


「よしわかった。余力がある内に集めておこう」

「では、ここは私が」


 プロミネンスによって威力が上がった魔法を撃つのが楽しかったのか、今回もリィラが先陣を切った。


「ああちょっと待ってリィラ」

「――ホーリーフレイム!」


 俺は止めようと思ったのだが、間に合わなかった。


 杖から放たれた聖なる炎は先頭に居たクワガイガーに直撃する。


 だが、炎がその身体を包むことはなく、まるで水のように弾けて消えてしまった。


「わ、私の聖なる炎が効かない!?」

「今の姫様のホーリーフレイムにはプロミネンスの耐性無視も相乗されているはず……どういうことなのリュクス?」


 エリザの問いに俺は答える。


「メタル系モンスターのモノゾイドメタルで出来た装甲には、魔法が通用しないんだよ」


「で、ではもっと魔力を込めて、その耐性を上回れるように……」


「いや、あれは耐性とかじゃないんだ。そういうものと理解するしかない」


「り、理不尽です」


 対モンスターにおいて無敵を誇るリィラの聖なる炎だが、唯一メタル系モンスターには通用しない。


 これはメタル系モンスターが耐性を持っているという訳ではなく、ゲームのシステム的なルールなのだ。


 だから俺たちの努力や工夫で乗り越えられるものじゃない。


 だからメタル系のモンスターは魔法特化のリィラにとっては天敵と言える。


「勉強不足だね王女様」

「ぐぬぬ……返す言葉もありません」

「そう意地悪言うなよレオン。メタル系はローグランド王国じゃ情報が少ないんだ」

「リィラの魔法が効かない……ってことは私の出番だよね」


 そして話を聞いていたクレアは剣を引き抜きつつ前に出る。


「ああ……でも結構コツがいると思うぜ」

「試してみる……よっ」


 先頭のクワガイガーに斬りかかるクレア。


 だがクワガイガーの装甲はその剣をはじき返した。


「ギィイイ」

「うおっと」


 反撃とばかりに放たれた電撃攻撃を躱しつつ、クレアは言った。


「装甲も信じられないくらい堅いね」


「あの女が切れないってなると、結構苦戦しそうだね」


「いや、そうでもないさ」


「うん?」


「魔法か剣。俺たちパーティーの選択肢はそれだけじゃないってことさ。リィラ」


「はい?」


「土魔法だ。君の力を借りたい」


「ですが私も魔法はクワガイガーには通用しないのでは?」


「使うのはクワガイガーにじゃない。アイツの乗っている地面だ」


「地面……なるほど!」


 流石リィラ。もう気づいたようだ。早速プロミネンスを構える。


「――ガイアブラスト!」


 リィラの土魔法が発動し、地面が揺れる。そして、3体のクワガイガーを突き上げるように地面が隆起した。


「ギィイ……!?」


 お腹を隆起した岩石に乗せられ、足が地面に届かなくなったクワガイガー。これで動きを封じた。


「後はトドメだ。よっと」


 俺はリィラの魔法の余波で溢れたラグビーボール大の岩を空中に投げる。


 そしてその岩を素材にイミテーションを発動。


 作り出すのはなんでもない、どこかで見かけた巨大な岩。


 俺の魔力99%で作られた巨大な岩はまるで隕石のように落下し、三体のクワガイガーを下敷きにする。


「ギィイイイイイ」

「何も魔法と剣だけが戦いじゃない。押しつぶす。こういう戦い方もあるって訳だな」


 それに、昔からロボットは落石に弱いと相場が決まっている。


「なるほど。流石リュクスくんですね。私はまだまだ戦闘経験が浅いようです」

「いやいや。あれだけ正確にクワガイガーの動きを封じたリィラもなかなかだったよ」

「ああああああああああ」


 俺の言葉に照れくさそうにしているリィラの横で絶叫する者が居た。


「なんだよ」


 心底ウザそうに言うレオンに構うことなく、イブリスが叫ぶ。


「何をやっているんですかリュクスさん! こんなので押しつぶしたら素材の回収ができないじゃないですか!」


「なんだそんな心配かよ。大丈夫だって。ほら」


「え? えええ!?」


 そのほとんどを俺の魔力で作った大岩は、霞のように消えていく。すると、既にクワガイガーが消滅しており、そこに素材だけが残されていた。


「何か問題あるかイブリス?」

「ないです! 流石リュクスさん!」

「はは……」


 手の平返しの凄まじいイブリスに苦笑いしつつ、俺たちはメタル系モンスターのはびこる第二層を進む。


 ***

 ***

 ***

 あとがき


遅くなってすまない。

あと進行も遅くてすまない。

ただ後々重要なところなのでご容赦を!

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