第132話 クインズデーモン
補足
この作品における「ダンジョンのモンスター」は、ダンジョンが作り出した防衛装置であり、生き物ではありません。
生きている様に見えても「そう作られているだけ」です。
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「――ヘブンズフェニックス!」
巨大化したグランドデーモンに冠とマントを装備した姿をしたボスモンスター、クインズデーモンに、不死鳥を模した聖なる炎が激突する。
着弾した不死鳥はたちまち炎となって、クインズデーモンの全身を包む。
「ギョエゲエエエエエエ」
専用杖プロミネンスによって強化されたリィラの聖なる炎は敵の反撃を許さず、一発で戦闘不能にまで追い込んだ。
「ふふ。どうですかリュクスくん。貴方からお借りしたこの装備によって、私の聖なる炎はここまで強くなりました」
「すごいなリィラ。でも安心するのはまだ早いぜ」
「え……?」
膝を突き項垂れていたクインズデーモンの瞳に力が戻る。
途端、敵の頭上をクルクル回っていたクリスタルが一つ砕け散る。
すると、クインズデーモンの肉体を焼いていた聖なる炎が消滅。
クインズデーモンは再び元気を取り戻した。
「コアクリスタル。ダンジョンボスが持つ命のストックだ」
「そ、そうでしたね」
強いダンジョンのボスモンスターは、このコアクリスタルによって守られている。
基本的にはボスの頭上をクルクルと回っていて、HPをゼロにすることで一つ破壊できる。
コアクリスタルが破壊されるとボスはHPを全回復し、あらゆる状態異常やデバフを解除。それはリィラの聖なる炎も例外ではなくさらに敵によっては超必殺技を撃ってくる場合もある。
クインズデーモンのコアクリスタルは全部で二つ。今一つ破壊したので、あと一回HPをゼロにして最後のコアクリスタルを破壊。
そこからもう一度HPをゼロにする必要がある。
「しかし相手が死ぬまでその身を焼き続ける聖なる炎が解除されるなんて……厄介ですね」
「一度死んだって扱いなのかもな……」
リィラの聖なる炎を警戒してか、こちらに近接戦闘を仕掛けてくるクインズデーモン。
だが哀れにもクレアの間合いに入ってしまった。
「グゴゲ~!?」
こちらに殴りかかろうとしていた右腕を切り落とされ、驚愕の声を上げ……。
言い終わる頃には残った手と足が胴体から切り離されていた。
「あはは。ここからどう復活するのか見物だ……ねっ」
そして足を切り離された胴体が地面に落下する前に敵の身体を駆け上がったクレアは、首を切り落とす。
「グ……ゴ……げ」
ドタドタと敵の身体が地面に落下すると、胴体以外のパーツは消滅。
最後のクリスタルが砕け散り、クインズデーモンの身体が復活した。
「ちぇ……当然だけどせっかく切ったのにここまで回復されるのも癪だなぁ」
「三連戦だと思えばいいだろ」
「グゴゲエエエエエ!」
起き上がったクインズデーモンのヤギに似た怖い目がかっ開き、俺たちを見据える。
そして、口が四つに割れて大きく開くと、そこに凄まじい魔力が集中する。
クインズデーモンのコアクリスタルが全て砕かれた時に発動される、必殺攻撃エンプレスバーストだ。
学園長たちが攻略した際、この攻撃で壊滅的な被害を受けたという。
ここは全員で防御フォーメーションを組む場面。
なのだが、後手に回ることで相手に戦闘のペースを握られるのは面白くない。
「ここは頼んだぜレオン、エリザ」
「任せて」
「ふん……行くわよ」
まずはレオンがフォトンリフレクションを発動し、光の壁を展開。
クインズデーモンの放ったエンプレスバーストを吸収する。
「――プロテクションブースト」
さらに防御魔法の効果を倍増させる補助魔法をレオンのフォトンリフレクションに対して発動。
「よし……反射!」
吸収された敵の攻撃の威力を倍にしてクインズデーモンに跳ね返す。
拡散した魔法がクインズデーモンの全身に命中。敵の体勢が大きく崩れた。
「このまま畳みかけるぞ!」
その後、容赦のない一斉攻撃により俺たちの勝利。
このメンバーでの初めてのボス戦は、学園長たちの情報のお陰であっさりと勝利することができた。
***
「よし、10分ほど休憩しようか」
「自分は素材を回収してくるっす」
まだみんなに疲れは見えないが、今日の本番はここから先、第二層以降だ。
休憩地点や安全地帯があるとも限らない。
油断は禁物だろう。
「今のうちにライセンスカードを記録しておくか」
クインズデーモンが守っていたボス部屋の奥にある転移ゲートに近づき、自分のライセンスカードを翳す。
ピロンと音がして、この場所が登録されたことを知らせてくれる。
「あのさ。ボク思ったんだけど」
同じく登録をしに来たであろうレオンが背後から声をかけてきた。
「どうしたレオン?」
「ババアたちってクインズデーモンまでは倒せたんだよね?」
「ああ。そのまま第二層には行かず、この転移ゲートで戻ってきたみたいだな」
セレナ以外は限界に近かったらしいから、当然だろう。
「じゃあさ。今日もババアにここまで連れてきて貰えばよかったんじゃない?」
「……」
「リュクス?」
「言われてみれば確かに」
何故気づかなかったんだろう。
「ま、まぁいいウォーミングアップになったし。いいんじゃないか?」
「声、震えてるよ?」
「気のせいだ」
その後、俺たちは10分の休憩を終え、いよいよ未知の第二階層へと足を踏み入れるのだった。
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あとがき
遅くなりました。
徐々に更新ペースを戻します。新年度でお疲れかと思いますが、着いてきてくれると嬉しいです。
このドリームメンバーだと全然苦戦しないですね。
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