第127話 作れ最強チーム
「大体わかりました」
セレナを見送った後、俺は学園長に呼ばれ、合宿所のミーティングルームに移動した。
二日間に渡る新ダンジョン探索によって得られたデータをチェックする。
学園長たちが進んだのは第二層まで。
(はじまりのダンジョンボス部屋の階段を降りた先を新ダンジョン第一層として、そこから中ボスを倒し一階層下に降りた)
そこまでの戦闘やダンジョンギミック、出現モンスターが事細かに記録されている。
これらを総合して、新ダンジョンのランクをAとしたらしい。
「第二層までしか行けなかったということは、実際の深さはわからないってことですよね」
「ふん。ここまで調べれば十分さね。少なくとも普通の冒険者には手も足も出ないダンジョンだよ」
ゲームブレイズファンタジー基準で言えば、Aランクダンジョンの攻略推奨レベルは50。
ちなみにBで推奨レベル30、Cで20、Dで5~10くらいな感じだ。
もちろんプレイヤーレベルである程度覆せる。
学園長や他の先輩方ではエンカウントする通常モンスターとの戦闘すら命がけの死闘だっただろう。
だとすると、一階層でも先に進めたのはセレナが強かったからだろうか。
イブリスも相当だったし、可能性としては十分ありえる。
「しかしAランクとなると、モーメルの町の一般冒険者増加には繋がりそうにありませんね。他国の有名な冒険者は集まってきそうですが」
「それはそれでちと心配だけどね。さて単刀直入に聞くが……」
雑談はここまでだと、学園長は本題を切り出した。
「アンタから見てこのダンジョン、どう思う?」
「俺とレオン……それにリィラとクレア。後はエリザさえ居てくれればクリアまで行けると思います……が」
「なんだい? 何か不安要素があるのかい?」
「俺とレオンはともかく、他の三人は本当のダンジョン探索をしたことがありませんから。そこだけは不安ではありますね」
「確かにそれはあるねぇ」
ダンジョン探索は、一歩間違えれば死ぬかも知れない状況がずっと続くことになる。
そのストレスは半端じゃない。
それにいくらヒロインズが強いとはいっても、常にベストコンディションで戦えるとは限らない。それがダンジョンだ。
「とはいえ、模擬戦のときほど強力な魔物がいる訳でもありませんし」
「あんな魔物がそう何度も出てきては困るよ。まぁ確かに、アタシもあの猿竜を見ていたからかね。強い魔物に出くわしても、冷静に対処できたよ。まさかこの歳で自分の成長を実感できるとはね」
少し誇らしげに言う学園長がなんだか面白かった。
「さて、アタシはアンタに引き続いての調査を頼みたいと思っている。もちろんあの男に許可は取っているし、王家とゼシオンからの協力も取り付けた。報酬も出すよ」
となればこれは、王家と御三家による共同プロジェクトとなる訳か。
それは熱いな。
報酬に興味はないが、どんなモンスターや魔法が見られるのかは単純に気になるところだ。
それにこの話の速さ。
新しいダンジョンの情報やアイテムをいち早く回収しておきたいという意思を感じる。
確かに国側としては、これから情報を聞きつけてやってくる他国の強い冒険者にお宝を持っていかれるのは避けたいだろう。
「期間はアンタが学生であることも考慮して、オリエンテーション期間中の残り二日間。その二日間で、第二層の調査をお願いしたい」
「さらにその先に行ってしまっても構いませんか?」
「まぁアンタが行けると判断したならそれでいいが……無茶はするんじゃないよ?」
「わかっています」
もちろん無茶なんてしない。
リィラたちの調子を見てということになるだろう。
いざとなれば、俺が命に代えても帰還させる。
こう言うとかなりリスキーに思えるかもしれないが、新ダンジョンで何か新しい発見ができれば、単純に彼女たちの功績となる。
「それならいいさね。さて、それじゃあアタシにも事前に聞かせて貰おうか。アンタが考えている探索チームのメンバーを」
まぁ大体予想はついているけどね……そう言いつつ、学園長は俺の言葉を待った。
「メンバーは……」
俺は改めて資料に目を通し、メンバーを告げる。
「メンバーは俺、リュクス・ゼルディア。レオン・ブレイズ。リィラ・スカーレット。クレア・ウィンゲート。エリザ・コーラル。イブリス・ロワール。この6人で」
「理由を聞かせてもらってもいいかい?」
俺は順番に選抜理由を説明していく。
まず総合力最強のレオン。どんな状況にも対応できる能力と経験がある。
対モンスター戦最強のリィラ。
もちろん例外はあるが、聖なる炎さえあれば大抵のモンスターにも負けることはない。
近接最強のクレア。
リィラでは対応できないモンスターが居てもクレアが居れば大丈夫。
万能サポーターエリザ。
上記三名の勝利を確実なものにする戦闘サポーター。
そして困ったときのためのイブリス。
アイテムボックスによる新規素材の完全回収。そしてアイテム作成能力で未知なる状況にも対応が可能となる。
そして、彼女が居ないとキメラの力を取り戻すための素材アイテムがわからないからだ。
逆にメンバーから外した者たち。
まずプロテア。
近接戦闘力は申し分ない。だが、タンパク質不足に陥ると急にバカになるので危険と判断。
そしてアズリア。
彼女の魔法は新しいダンジョン探索には喉から手が出るほど欲しい能力だが、アズリア本人のレベルがこのダンジョンには不向きだ。
俺のワンミスで死なせてしまうような状況にわざわざ連れて行くのは憚られる。
この前も便利だから呼ばれてもと苦言を呈されたしな。
というわけで、図らずもブレイズファンタジー主人公とヒロインズ集結という面白い状態になった。
ゲームでは絶対にできないレオン&ヒロインズのハーレムパーティー完成に、俺は少しワクワクしている。
おっと一人仲間外れがいるって? 正解、俺だよ俺。リュクスだよ。
俺をセレナと交換すれば完璧なパーティーだったよ。
「なるほど。納得の理由さね。まぁひとつ心配ごともあるが……」
「心配事?」
「アンタ……このメンバーをまとめられるのかい?」
「あはは。大丈夫ですよ大丈夫……大丈夫ですよね?」
「アタシに聞かれても困るさね!?」
こうして明日、最強パーティーで新ダンジョンに潜ることが決定した。
レオンたちにはこの後、学園長が直々にこの件を伝えてくれるとのこと。
ならば報告は学園長に任せて、俺は明日の準備のため合宿所を後にした。
***
***
***
あとがき
間が開いてすみません。ちょっとフリ〇レンのアニメを一気見していて投稿が遅れておりました。
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