第94話 この始末
性別反転事件の次の日。
「ふんふーん♪」
学校ではいつも不機嫌そうなレオンが、今日は朝からご機嫌だった。
「ねぇリュクス。今日も研究棟に行くんだろう?」
「いや、今日は行く予定ないけど……どうした?」
「ふふ。ちょっとね~。あの子に興味が湧いてさ」
「あの子って……イブリスのことか?」
「うん!」
へぇ。
一体どういう心境の変化だろう。
昨日はイブリスと遭遇することなく意識を失ったレオンだったが、今日はイブリスに興味津々だ。
だが俺としては嬉しい状況だ。
何せ、レオンとヒロインが仲良くなるのを5年夢見ていたのだから。
「それでさ。ちょっと髪とかいじりたいから手伝ってよ」
「ああ、任せろ!」
放課後、教室に残ってレオンの髪を整髪料で整える。
「おやおや。相変わらず仲が良いですな~」
教室の後ろの方でレオンの髪をセットしていると、ニコニコ笑いながらエル・オルファがやってきた。
「どうしたのオシャレなんてしちゃって。この後、二人で遊びにでも行くのかな~?」
「いや、ちょっと研究棟の方にな」
「研究棟?」
存在そのものを知らなかったという顔でエルが目をぱちくりさせた。
「そこにメッチャ綺麗な女の子が居るんだよ。今からそこに会いに行くのさ!」
「れ、レオンくんが……メッチャ綺麗と評する女の子!? だ、誰なのその子?」
「お前には秘密だよ」
「えええええええええ!?」
「ふふん。もしかしたらこの学年で一番最初に彼女持ちになるのは、ボクかもしれないね」
「そ、そっかぁ、そうなんだ……頑張ってね」
気になるならエルも一緒にと誘おうと思ったが、肩を落として去っていった。
「なんだったんだアイツ」
「さぁ?」
俺とレオンは同時に首を傾げるのだった。
***
***
***
髪の毛をセットし軽くメイクも施したレオン。
キラキラとしたエフェクトさえ幻視するほどに仕上がったレオンと共に研究棟へと向かう。
学園の人たちがやってくれたのか、多少綺麗なった研究棟12階に上がる。
「リュクス……泣いてるの?」
「ああ。俺は、お前がヒロインに興味を持ってくれたことが嬉しくて……嬉しくて」
「大げさだよ、泣かないでリュクス。ボク、女が出来ても一番はリュクスだからさ~」
「いやそこは彼女を一番大事にしてもろて……」
涙を拭きながら、俺は研究室の扉をノックした。
「え? えぇぇ!? 突然イケメンと美少年が!?」
「あ、ごめんごめん驚かせて。俺だよ俺。リュクスだよ。ちゃんと元に戻れたよ」
「あ、リュクスさんでしたか……今日も来てくれたっすね。嬉しいす」
「ああ。それと、今日は紹介したいヤツがいるんだ……とは言っても昨日も見てると思うけど」
「えええ!? き、緊張するぅ……い、今開けるっす」
扉の向こうのイブリスと、横のレオンが緊張するのがわかった。
「わっ……わわわ。メッチャ綺麗な人っす……」
レオンを見て慌てるイブリス。
そしてレオンは……。
「………………………………は?」
なんか感情を失ったような顔をするレオン。
「ねぇリュクス。コイツ誰?」
「この子がイブリス・ロワール。あの学園長に認められた、特別特待生だぞ」
「ちょっと待って。ええと……あの金髪の美人がイブリスじゃないの?」
金髪の美人? コイツは一体何を言って……あ。
あああ。
おいおいマジか。
「ええと……金髪の美人? 爆発の影響で幻でも見たんじゃないかな?」
「そ、そんなぁ……」
露骨にガッカリするレオン。
可哀想だが、真実を知ったらもっと可哀想になってしまう。
ゴメンな。
「ええと。こ、こちらの美少年さんは自分に会いに来てくれた訳じゃない感じっすか?」
「当たり前だろこのブ……んんん!?」
酷いことを言いかけたレオンの口を塞ぐ。
レオン、それはマジで言っちゃ駄目!
「はぁまったく。気合い入れて損したよ! バカバカしい。やっぱ女と関わると碌なことにならないよ」
その後、レオンはプンプン怒って帰ってしまった。
その背を手を振って見送る。
「ええと、リュクスさん?」
「何かなイブリス」
「慰めてあげなくていいんすか?」
「いいんだ。今回は時が解決してくれるのを待つしかない」
「でもレオンさん、女体化した貴方のことを――」
「言わないで。それ以上は言わないで!!」
その件に関しては受け入れられる自信がない。
「は、ははは。しばらくしたら忘れるさ」
「だといいですね。あ、性別反転は薬にできていないだけで、やろうと思えばやれますんでいつもでおっしゃって下さい」
「やらないよ!?」
レオンには本当に申し訳ないことをしたなぁと思いつつ、その日は研究室の片付けを手伝った。
***
***
***
あとがき
オリエンテーション前にイブリスの顔出しをしつつ学園生活をちょっと書きたいなーと思って書いてたら結構長くなりました。
次からようやく本題です。
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