第92話 サブクエスト発生的な?

 修正パッチ 90話のリュクスの台詞


 →こりゃ午後の授業は諦める必要がありそうだ。


 なかったことにします。

 普通に出た方が面白いのでその方向で。



 ***


 ***


 ***


 目覚めないレオンを保健室にぶち込むと、俺は午後の授業に向かう。


 俺がこの時間に履修しているのは【ダンスレッスン】。

 社交パーティーに向けたダンスの練習と基礎体力の向上を目的とした科目である。


 体育館に入ると、先に到着していたクラスメイトたちが驚きの声をあげた。


 俺は適当にそれをあしらうと、担当教諭に事情を説明する。


「一体どういうことかねゼルディアくん!? 何故そんなことに!?」

「ええと……」


 なんと言い訳したものか。


 ここで下手にイブリスのことを話してみんなに怖がられてしまったも可哀想だ。


 ええと……。


『学園長からの依頼で性別を反転させる――』


 言い訳を考えていると、さっきイブリスから聞いた台詞を思い出す。

 これだ!


「学園長の計画の一部らしくて……そこでミスをしてこんな有様に」

「が、学園長か。しかし男を女の子にしてしまうとは……学園長は一体何を考えているのだろうか?」

「いえ。多くを語らない人なので」

「まさか趣味ということもないだろうが。読めない人だからなぁ」


 学園長というワードに苦い顔をするダンスレッスン担当教諭。

 その名前を出されると、文句は言えないといった様子だった。


「君も苦労人だな……まぁ直に元に戻るようなら安心だ。今日は休んでも構わないぞ?」

「いえ。体に異常はないので、参加していきます」

「相変わらず真面目だな。わかった。では授業を始めよう」


 少し遅れて授業が開始される。


 柔軟をしていると、エリザがニヤニヤしながら近づいてきた。


「な、なんだよ」

「いえ別に? ぷぷ。随分……ぷっ。可愛くなっちゃったじゃない」

「くっ……」


 クレアと違い、真っ正面からイジってくるじゃないか。

 そういうのが一番恥ずかしかったりするんだぞ?


「私の可愛いお洋服を貸してあげようかしら?」

「いや、エリザの服じゃサイズが合わないだろ」

「は、はああああ!?」


 柔軟しながら適当に返事をしたら、思いのほかエリザがキレた。


「私の服じゃ、む、むむ、胸がキツいって……そう言いたい訳!?」

「え? いや……。単純に身長差があるって意味だったんだけど……。胸?」

「コホン。なんでもないわ。忘れなさい」


 急に冷静になった。

 情緒がジェットコースターみたいだな。


「それにしても、どうしてそんなドスケベな身体になったのかしら? 内なる欲望かしら?」

「濡れ衣過ぎない?」


 う~んと唸りながら俺の身体を凝視するエリザ。


「胸に関しては……アンタって昔からお姉様のこと好きだったからね。わかるけど」

「待って。エレシア様のことを好きになったこと一度もないんだけど?」


 それこそ濡れ衣だろう。

 間違ってもそんな話、殿下やエレシア様の耳には入れないで欲しい。


「あら? そうなの?」

「寧ろちょっと苦手だったっていうか。ほら、初めて会った時のエレシア様ってエリザにもちょっと意地悪だったじゃん? だから正直どうかと思ってたよ」


 エリザが見てるって知ってて殿下とキスしたりしてたからな。


「じゃあアンタは、あの頃からお姉様より私の方が好きだったんだ?」

「言っただろ。エリザはエレシア様にも全然負けてないって」

「ふ、ふーん。まぁどうでもいいけどね」


 ぶっきらぼうに言いつつ、エリザは背を向けてしまった。


 だが、機嫌が少し良くなったようだ。


 後ろ姿だけど、なんとなくわかる。


 昔話が楽しかったからかな?


「はいはい。それじゃ、二人でペアを組んでくれー。踊りの練習をするぞー」


 柔軟が終わり、そろそろダンスの練習だ。


 この授業も先週から男女ペアでの練習を取り入れるようになった。

 さて誰と組むかな~。


 さっき話したしエリザかな。


「おーいエリz」

「待った」


 エリザを呼ぼうとした声を誰かが遮った。


「君は……」

「ああ。俺だよ……デュフ。デュフ」


 いつになく真剣な顔をしたキモータくんだった。



※闇情報

キモータ・ディーティー(15)


クラスメイトの男子生徒。

様々な文学に精通する。

女の子と話すのが苦手。

彼女持ちの男に激しい憎しみを抱いている。

(第62話魔眼殺しにて一瞬登場)



「どうしたんだキモータくん。真面目な顔をして」

「デュフ。ゼルディアくん。今日の君は女の子。なので、女役として俺と踊ってもらうですぞ。デュフ」

「え……? いや、女側とかできないし。悪いけど他の子と組んでくれないか?」


 このダンスの授業は男女比が1:3くらいで、女子の方が余っている。

 なので、男子が何回かペアを変えて踊りの練習を行う。


「甘い。俺は今まで、お母さん以外の女の子の手を握ったことがないのですぞ。デュフ、デュフ」

「別にいいじゃねーか」


 お母さんの手とか握ったことないわ。

 会う度に握ってやれよ。


「お、お、女の子を前にすると緊張して……手を握ってダンスなんて到底無理でデュフ」

「そいういや先週は端っこで座ってたな」


 怪我したのかと思ったけど、なるほどそういう理由か。


「でも元が男のゼルディアくんの手なら緊張せずに握れると思うのですよ。デュフデュフ」


 そう言って、手を指しだしてきたキモータくん。

 なるほど。

 擬似的な女の子である俺で慣れて、女の子に対する免疫をつけようって訳か。

 そういう理由なら協力してやるぜ!


 キモータくんが差し出した手を握った。


「あっ……や、やわらか……あっ……ああ」


 キモータくんの顔が真っ赤になる。


「さて、それじゃあまずはステップの確認から……」

「デュフ。我が生涯に一片の悔いなし……デュフ」

「キモータくうううううん!?」


 キモータくんはゆっくりと地面に倒れ、気を失った。

 前世の俺も女の子とは縁のない生活を送っていたが、ここまでじゃなかったぞ!?


「くっ……貴重な男子が退場してしまった。ディーティーは私が保健室まで連れて行く。みんなは授業を続けるように」


「「「はーい」」」


 その後、エリザにアズリア、そしてプロテアが俺のダンス練習の相手になってくれた。


 みんな優しい。



 ***


 ***


 ***


 無事授業が終了する。


 タオルで汗を拭きつつ、レオンの見舞いでもしようかと思っていると、一人の男が声を掛けてきた。


「えらいドスケベボデーやな、リュクス」

「お前は……ティラノ・ボーン!?」


 クラス内でも「策士」なのか「ただのアホ」なのかで評価が分かれる男、ティラノだった。

 例のリィラご懐妊誤報以降、身を潜めるように静かに暮らしていたティラノ。


 だがその目が久々にギラギラと輝いている。


「何の用だよ?」

「提案があるんや。お前のその身体を使って、ワイと一儲けしようやないか」


 その手には、超希少な魔道具、カメラが握られていた。


***

***

***

あとがき


リィラはクレアと同じ剣の授業を履修中(苦手克服のため)

アズリアは同じ空間に居たものの、エリザガードのせいでリュクスに話しかけるタイミングが掴めませんでした。


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