第89話 大爆発
王との会話の次の日。
俺はレオンと共に学園内にある研究棟に訪れていた。
卒業後も研究を続ける学生や先生たちが活動している建物だ。
「ねぇリュクス~。こんなところに何の用なの?」
「ここに凄い発明家が居るんだよ」
そう。
この研究棟にはブレイズファンタジー4人目のヒロイン、イブリス・ロワールが居る。
キャラ属性としては所謂「発明家」枠。
様々な魔道具を発明してはそれが原因で話が始まるトラブルメイカー。
学園長から直々に「授業及び学校行事への参加が免除」されている超天才の特別特待生。
ヒロインとしてはイロモノ枠ではあるのだが、作劇の便利さからか他のヒロインのルートに突入してもちょいちょい出番のあるキャラである。
二次創作でも引っ張りだこ。
俺は読んだことないけど、エッチな同人誌でもよく彼女の発明品が登場する。
俺は一回も読んだことないけどね。
これはマジ。
ちなみに俺は公式で出てきた「性別が反転する薬」を飲んだレオンがイケメンたちに迫らせる話が一番好きだった。
「発明家?」
「そう。キメラをなんとかしようと思ってさ」
「あ~アイツか」
レオンをして「ちょっと勝てない」と言わしめるキメラ。
当初はキメラをダンジョンに閉じ込めてしまおうと考えていたのだが、問題が発生した。
キメラがダンジョンに入らないのだ。
正確に言うと、ダンジョンへ入るための入口を通れない。
ダンジョンへ入るときの入口は精々5メートル程度。
15メートルを超えるキメラの巨体では通れない。
「キメラを殺す薬とか?」
「いや、そんなんじゃ死なないよアイツ」
ってかそんなものが作れるならとっくに世界は平和だろう。
「じゃあどうするのさ?」
「体を小さくする魔道具。それを作ってもらうのさ」
「そんなことできるの?」
わからない。
だが、相談する価値はあると思い、俺は今日ここにやってきたのだ。
ゲームでも、イブリスとの出会いイベントが解禁されるのは模擬戦イベント後。
だから条件は満たしているはずだ。
「なるほどね。まったく、ロデロンたちも厄介ごとを残していったもんだよ。それにしても」
レオンはふわっとあくびをすると、続けた。
「どうしてボクも呼んだの?」
「それはな。イブリスとレオンが仲良くなれたらなって思ったんだよ」
俺は出会わなかったが、当時から天才発明家とされていたイブリスも十年祭のパーティーに来ていたハズだ。
この反応を見るにレオンはイブリスと絡まなかったのだろうが、それでも俺はレオンとヒロインのルートを諦めていない。
リィラ、エリザ、クレアとの進展は絶望的となったけれど、まだ関係性が0のイブリスとならワンチャン! あるのではないかと思っている。
可能性は薄いけど……それでも僅かな希望を捨てきれない。
諦めない限り、試合は続くからさ。
「そいつ女?」
「ああ!」
「はぁ……」(クソデカため息)
うん。
なんかいける気がする。
研究棟の12階、最上階に到着する。
今更だけどエレベーターとかないのキツいな。
鍛えたお陰か体力面は大丈夫なんだけど、単純に時間がかかる。
「ねぇリュクス……ここ、モンスターでも飼っているの?」
12階へと上がった途端、レオンが言った。
若干顔が引き攣っている。
それもそのはず。
廊下には数々の爆発痕が残っており、使えなくなっている部屋が多い。
そして、どこか焦げ臭い。
普通の人ならレオンのように考えるのが普通だろう。
「いや、これは多分、イブリスの実験の失敗跡だから大丈夫だよ」
「何も大丈夫じゃなくない!?」
「ははは。失敗は成功の元だぜレオン。大いなる発明のためには、多少の失敗はつきものさ」
「失敗ねぇ……」
爆発の焦げ跡が多数残る12階フロアは一見廃墟のようにも見えるが、立派に稼働している。
ゲーム通りだ。
「えっと。今使っているのはこの部屋かな?」
いくつか残っている無事な部屋の中から、扉が閉じている部屋を見つける。
ここが今のイブリスの研究室だろう。
ドアノブに手をかける。
すると……。
『あ、ヤバいっす』
扉の奥からそんな声が聞こえた。
そして……。
「むっ!?」
何かとてつもない力を扉の向こうから感じた。
この感じ、ゲームで何度も見た……あれだ。
「ふぁわ。ん? どうしたのリュクス?」
完全に油断してあくびをしているレオンを守るため、レオンの体を押し倒し盾になる。
「うわぁ大胆……って、うわあああ!?」
「やっぱりか」
眩い閃光と共に、俺たちは爆発に巻き込まれる。
「リュクスー!?」
レオンの悲鳴のような声を聞きながら、俺の意識は途絶えた。
***
***
***
「あ……いてて」
確か、ドアノブを握ったら爆発が起こって……。
辛うじて目を開ければ、周囲にはまだ煙が満ちている。
「そっか、爆発に巻き込まれて……」
なんだか耳が痛い。
爆発の音のせいで、キーンとなっている。
「そうだ、レオンは……ほっ。無事か」
意識を失ったせいで、レオンに覆いかぶさる感じになってしまった。
レオンの顔がすぐそばにある。
鼻と鼻がぶつかるような距離だ。
「むっ……んん」
「おっと、レオンが目覚めそうだ……あれ。体に力が入らない」
ケガはないようだが、身体に力が入らない。
さっきの爆発の影響か?
よし、せーの……ふぅ。
なんとか上半身を起こせたぞ。
「重いよリュクス~。って、誰だよお前?」
「お、目が覚めたみたいだな」
「っ!? な、なんだよお前! 馴れ馴れしいよ」
どうしたんだレオン。顔真っ赤じゃん。
「は、はやくどけよー! くっつくな!」
あらら。
なんかレオン機嫌悪いな。
まぁ乗り気じゃないのに無理やり連れてきた挙句にこの騒ぎだからな。
さっさとどいて謝ろう……。
「ってうわ」
「むぎゅ!?」
体の力が抜けて……再びレオンに向かって倒れてしまった。
胸でレオンの顔を押しつぶしてしまう。
俺の胸の中でレオンが暴れる。
ごめんなレオン。体に力が入らなくて……上手く動けない。
「おま……はなせ……むぎゅぎゅ……がはっ」(気絶)
「レオンんんんん!? ん? なんかおかしいぞ」
レオンに倒れたとき、なんかむぎゅってなったぞ。
というか、なんか胸部が異常に重い……あれ、なんかついてない?
俺はなんとか立ち上がり、自分の胸部を見てみると……なんと巨大なおっぱいがついていた。
「んんんんんん!?」
そういえば爆発音で耳鳴りがしていて気づかなかったが、声が女の声になっている。
心なしか、身体が軽くなったような感じもする。
「えっと、確かこっちに鏡が……」
階段の方まで行って、姿見を確認する。
「ええ……なんか女になってるんですけど……」
鏡には長身、金髪、巨乳の美女が立っていた。
元が悪役キャラのリュクスだからか、妙に悪女ぽい。
なんというか、お色気幹部的な?
「ヤベェな、俺メッチャ可愛いじゃん! って言ってる場合じゃない。こうなった原因は……」
爆発した扉の向こうに居る人物が知っているはずだ。
イブリス・ロワール。
彼女に聞くしかないようだ。
***
***
***
あとがき
※制服は男のままです
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