第6話 5分前の女

 その小説では、彼女は、もう一人の自分に対して嫉妬しているのか、それとも憎んでいるのか分からない。何と言っても相手を見ることも遭うこともできないからだ。

 彼女のことを知っているのは、付き合っている男だけで、

「5分前の私って、どんな私なの?」

 と聞いても、最初は何も答えてくれなかったが、次第に苛立ちを感じるようになってから再度聞くと、

「お前そのものさ」

 というではないか。

「私そのものって……」

 とそこまで言ってから言葉が続かなくなってしまった。

「その言葉の通りさ。今のお前のように、俺に聞いてきたさ。5分後の女って、どんな女なのかってな」

 というではないか。

「えっ? その女も今日初めて聞いてきたというの?」

「ああ、そういうことさ、だから、俺はお前からも聞かれることを分かっていたので、ちゃんと答えてやったのさ」

 という。

「じゃあ、5分前の女には、何て答えたの?」

 というので、

「何も答えないさ。いつもの通りさ。今は後悔しているけどね」

 というのを聞いて、一気に嫉妬心がこみあげてきた。

「いいわ、今日はあなたに抱かれたいとは思わない。今日はこのまま帰るわ」

 というと、

「5分前の女もそういって、帰っていったさ」

 というのを聞いて、

「あなたはそれでどんな気分になったの?」

「ホッとしたって感じかな?」

 というのを聞いて、その女への意地から、何が何でも、今日はこの男に抱かれたいと頭の中では思うのだが、身体が受け付ける気がしなかった。

 それどころか、

「今日、この男に抱かれてしまうと、もう二度と、この男に抱かれることはないだろう」

 と感じるのだ。

 それは、抱かれたいと思うことがないと感じるからなのか、男が抱こうという気が失せるからなのかのどちらなのかと考えたが、頭の中では、

「抱かれたいとは思わない」

 という方が強いと思った。

 しかも、同じように、相手も抱きたいとは思わないだろうなとも思ったのだ。完全に終わりではないかと感じた。

「それもこれも、もう一人のあの女が悪いんだ」

 これまでいなかったはずのあの女が現れてから、自分の人生はメチャクチャになったと思っていた。

 それを救ってくれたのが、彼だったはずなのに、その彼からも愛想を尽かされ、こっちも、それまでの愛情が一気に冷めてしまい、自分が何のために生きているのか分からないと思うくらいになったのだ。

 その女が考えたのは、

「5分前の女を殺すしかない」

 と考えるようになった。

「5分後の自分が生きているのだから、殺人犯として捕まることはないだろう」

 という、リアルなところでの発想があったのも事実だが、少なくとも、

「5分前の女が生きている限り、自分に幸せは絶対に訪れない」

 という思いであった。

 その時に頭の中にあった危惧としては、

「5分前の女を殺してしまうと、今の自分も、この世から消えてなくなるのではないか?」

 という思いであった。

 この思いの根拠には2つある。

 一つは。

「ドッペルゲンガーを見ると、自分が死んでしまう」

 という発想と、

「生きている時間が違うといっても、同じ次元に存在しているもう一人の自分を抹殺するということは、まるで鏡の中の自分を抹殺するのと同じで、それは、元の自分を抹殺するということに変わりない」

 ということであった。

 どちらが、本当の自分であっても、影が消えれば、元々も消えてしまうという発想であり、同じ次元であるかぎり、片方が消えれば、もう片方も消えるという発想なのだ。

 ただ、問題としては、

「絶対に遭うことのない相手を、どうやって殺すか?」

 ということである。

 二人を同時に知っているのは、彼しかいない。彼を使わない限り、

「5分前の自分」

 を抹殺することはできないのだ。

 彼がそんなことをしてくれるはずもない。

「彼を騙して、毒を飲ませるように仕込もうか?」

 とも思ったが、頭のいい彼を騙すなど、そんなことができるはずもない。

 いくら、彼に対して冷めてしまったとはいえ、一度でも、愛してやまない人だったはずだ。そんな人に、人殺しの片棒を担がせるわけにはいかないだろう。

 そんなことを考えると、とてもではないか、できることではなかった。

 すると、そんな気持ちを見透かしたかのように、男がいうのだ。

「今君が何を考えているか、手に取るようにわかるよ。たぶん、5分前の女も同じことを考えていたんだからね」

 というではないか。

 それを聞いて、彼女はゾッとした。

「あの女は、同じように、私の抹殺を考えていたということ?」

 と思うと、顔が真っ青になるのを感じた。

 それを見て、彼も、自分が感じていたことに確信が持てたのだろう。だが、言葉を続けた。

「あの女は、すぐに気を取り戻したっけね。冷静に考えたら、君も同じことを考えるということが分かったんだろうね」

 というではないか。

「それであなたはなんと言ったの?」

 と聞かれた男は、

「何も言わないさ。この問題は君たち二人の問題なのさ。俺には関係ない」

 というのだ。

 それを聞いて愕然とした。

「その程度にしか私のことを思ってくれていなかったの?」

 と聞くと、

「ああ、君たちは2人で1人なんだ。俺は、一人の女を二度抱いていたわけではなく、半分の女を2度抱いていたということさ。これがどういうことか分かるかい?」

 と男は言った。そしてさらに続ける。

「一粒で2度おいしい代わりに、飽きはすぐには来ないのさ。だが、一度飽きてしまうと、もうどうしようもないんだ。それは他の女を抱くよりもひどいことなのさ」

 とぬけぬけと言ってきた。

「そんな……、そこまで感じていたなんて」

 というと、

「そんなものだよ。俺は君のことが絶対的に好きではないのさ。逆に君たち2人が、俺にそのことを気づかせてくれた。きっと、俺はこれからもずっと、一人の女を愛し続けることはできなくなってしまったんだと覚悟しているよ」

 というではないか。

「この男も、私たち以上に苦しんでいたのかも知れない」

 と主人公は思った。

 しかし、自分では、もうどうすることもできない。かといって、あの女が存在している以上、自分が自分でいられる気がしてこないのだ。

 相手もきっと同じことを思っているかも知れない。何を考えているのか、実際に聞いてみたいものだとも思ったのだ。

 そんなことを考えていると、

「肉体は2つなのかも知れないが、頭の中は一つなのかも知れない」

 とも感じた。

 一つの頭を二つの身体が支配しているのか、一つの脳が、二つの身体を支配しているのか、同じことのように感じるが、

「脳の中でもまったく同じ部分を共有しているのか、お互いに交わることのない部分を共有しているのか?」

 ということを考えると、実は同じ人間であっても、別々の存在なのかも知れないと、思うのだった。

 本を読みながら、何を考えていたのかということを思い出していたマサトだったが、まったく違ったことを考えていたのを思い出した気がした。

 それは、小説を読みながら、不可思議な状態の中で、普段から疑問に感じていたことの一つを、ふと思い出したという感覚だった。

 それが何かというと、

「鏡の中に映し出された光景」

 だったのだ。

 その光景というのは、何も自分のことである必要はない。人間である必要もなく、正直何であってもよかったのだ。

 鏡というものの性質を考えてみて、

「なぜ、そうなっているんだろう?」

 と誰もが感じるはずのものなのに、あまり意識する人は少ない。

「一度は、誰でも感じたことがある」

 と感じるかどうか、実に微妙は発想であった。

 というのも、

「鏡を見た時、左右は対称になっているのに、なぜ、上下は対称になっていないのだろう? 上下が逆さになっているという見え方はしていないではないか?」

 というものだ。

 実際に、中央が奥に突出したような鏡であれば、上下が逆さに見える鏡もあるだろうが、普通の鏡は上下が逆さまに見えることはない。

 このことに関しては、科学的にハッキリとした回答があるわけではない。心理学的に考察することで、

「納得できることはあるかも知れない」

 と思えるような理屈もないわけではないが、諸説あるので、それぞれに説得力もあることなので、一概に、

「これが正しい」

 とは言えないのではないだろうか。

 ただ、一つ言えることは、

「左右対称になって見えるというのは、誰もが知っていることなので、こちらに関しては、その証明がなされている」

 という考えそのものが間違っているのだ。

 目の前に見えている事実が、誰もが納得のいく事実だからと言って、科学的に証明されているものだと、誰が言えるのだろう? そういう意味で、

「ハッキリと納得しながら見えていることに対してすら、証明されているわけでもないのに、その理屈のさらに先を求めようとしても、できるはずもない」

 というのが、

「証明できないことの証明」

 だと言えるのではないだろうか?

 そう、誰もが納得していることすべてが、科学で証明されているということ自体が迷信のようなものであり、そう考えると、世の中の摩訶不思議なことは増えてくることに違いはないが、

「まったく解明できないと思っていたことも、順を追って考えれば、証明されることになる」

 と言えなくもないだろう。

 他のことを考えてしまったからなのか、その本のラストがどんな内容だったのかというのがおぼろげであった。

 もう一度読み直してみようかと思ったのだが、作者は誰だったのかというのは憶えているが、タイトルを忘れてしまった。

 しかも、この作家は短編から中編が多く、どの本だったたかも正直覚えていない。さらに、この作家のタイトルのつけ方は独特で、タイトルから、内容を思い出すのも難しい。

 となると、一冊一冊、その本に収録されている話を、ある程度途中くらいまで見ないと内容が分からないのだった。

「余計なこと、考えなければよかった」

 と思ったが、考えたものは仕方がないし、さっきの鏡の話も、新たな小説のネタになるかも知れないと思って、いつも持ち歩いているメモ帳に書いた。

 いずれは、小説を書くようなことがあったら、ネタ帳にでもしようと思い、書き残しているものが、数冊あった。

 ストーリーっぽいのも、中にはあるが、ほとんどは思いついたことをただ書き残しただけの、単語だけのことが多い。

 逆に後で見た時、まったく関係の内容に見える単語でも、強引につなぎ合わせようとすると、それなりに、何かが出来上がってくるのではないかと思うのだった。

 そんなことを思い出していると、さっきの話も、

「覚えていないのであれば、ラストがどんな内容だったのか?」

 ということを意識するのではなく、

「自分なら、どう書く?」

 ということを考えるのも、面白いのではないかと感じた。

 できるできないは別にして、いろいろな発想が思い浮かんできた。

「この男に催眠術を掛けて、殺させる」

 あるいは、

「毒を入れた飲み物を冷蔵庫に忍ばせておいて、毒殺する」

 というのが、すぐ浮かんできたが、

「催眠術を掛けるとしても、誰にかけてもらうのか? 殺す催眠を誰に頼むというのか?」

 ということだけで、催眠術はありえない。

 また、後者の方であるが、

「毒殺と言っても、毒はどこから手に入れるというのか? 冷蔵庫に忍ばせておくというが、間違って、男が飲むかも知れないし、下手をすれば、自分に当たるかも知れない」

 などと、

「一つのことを考えてから、そのことに何か問題はないか?」

 と考えただけで、一つの可能性に対して、いくつもの問題がたくさん出てくるではないか?

 そんな状態で、スカスカの殺人計画がうまくいくわけがない。

 もっとも、人をそんなに簡単に殺せるのであれば、もっとたくさんの計画犯罪が起きていることだろう。捜査する警察が優秀だからとまでは言わないが、計画がザルであれば、日本の警察でも、事件の解決くらいはできるということであろう。

 だが、よく考えてみれば、このお話は、

「奇妙なお話」

 と言ってもいい。

 そもそも、同じ次元に、

「もう一人の自分」

 が存在しているということが、考えられないことではないか?

 それを、探偵小説のような物語のように、警察の捜査や、探偵の捜査などが絡んでくるというのは、ジャンルを超越したもので、プロが書くとしても、難しいものとなるに違いない。

「奇妙な物語を強調すれば、ミステリー要素が陳腐になるし、リアルなミステリー要素を強調するのであれば、奇妙な物語の部分が陳腐になってしまう」

 ということだ。

 だから、ジャンルが重複するような小説は、基本的にはタブーな要素が大きいといえるだろう。

 ということは、この話の結末としては、

「あまりリアルであってはいけない」

 ということになるであろう。

 それを思うと、

「今の俺に、こんな小説が書けるのだろうか?」

 としか思えなかった。

 この話を、皆にすると、つかさが口を開いた。

「そのお話は、私は読んだことはないんですけど、自分が書くなら? ということで考えれば、何となく想像がつきますね」

 というのだった。

「というと?」

「まず、小説を書く時に考えることは、いろいろなパターンを考えて、そのパターンを網羅できる考えを用意しておく。それをつなぎ合わせて、一つの小説にするんだけど、そう考えて、組み立ててみましょうか?」

 という。

「最初に考えるのは、二人が次元が違っていて、どちらかが、たぶん、5分前の女でしょうが、彼女が、こちらに飛び込んだのだとすると、相手を殺すことは危険です。なぜかというと、タイムパラドックスのようなものが働いて、彼女の世界の未来が変わってしまう可能性があるということですね。そしてそこまで考えると、彼女の方は、こっちの次元も、向こうの次元も自由に行き来することができ、自分の次元に歪みが生じようとしているのを防ごうとして、あえて飛び込んできたという考え。まずは、そのあたりから考えられるのではないでしょうか?」

 と言った。

 ちょっと聞いただけで、ここまでの発想ができるというのはすごいものだ。

「いや、逆に、今聞いたことだから、客観的に見ることができるということで、発想が柔軟なのだろうか?」

 と思うのだった。

 つかさは、さらに続けた。

「この話は次元というのが一つのキーワードのようになっているでしょう? 1人の女性が2つの次元、考え方によっては時空という考えになるのかも知れないけど、それぞれに存在しているのであればいいが、同じ次元に存在してると考えると、二人が会うということは、ありえないということですよね? そうなると、未来が変わってしまう。つまり、5分後の主人公が、追いついてしまうと、今起こっていることがもう一人の未来になるわけで、逆にいえば、5分前も5分後もまったく同じ世界になってしまう。それは未来を変えることであり、歴史が変わってしまうという発想になる。そう考えると、逆に、5分前と5分後にそれぞれ、二人だけの次元が別に存在していると考えれば、そっちにワープしたという内容にすることもできる。こうなると、ジャンルは、異世界ファンタジーの世界観になるんじゃないかしら? それも一つの小説としての発想よね? そして、この小説が本当に奇妙な話として終わらせようとするなら、本当の主人公は向こうで、自分が、架空だったのではないか? という発想をするかも知れないわ。結論としては、浅いかも知れないけど、何度か読み直すうちに頭の中で辻褄が合ってきたり、あるいは、この小説の醍醐味は、最期の数行の大どんでん返しにあるというような、いかにも奇妙な小説を感じさせる話に仕上げようと考えるでしょうね」

 というのであった。

「ほう」

 と、先輩はその話を聞いて、理解できたのか、感動しているようだった。

 さすがに、自分ではまだ小説を書いてみたことがないマサトには、この発想はすぐにピンとくるものではなかった。

 しかし、冷静になって考えていくうちに、いろいろ出てきた話が、それぞれに接点があり、繋がりを見せているのを感じると、

「つかささんの話には、一定の信憑性があるに違いない」

 と感じるのだった。

 そんなことを考えていると、徐々につかさという女性が、神秘的に思えてきて、さらに、最初のように、顔を下に向けていた態度が、今は完全に前を向いているのだが、

「たぶん、さっきの下を向いていて気づかなかった顔や雰囲気とは、今はまったく違う人物になっているんだろうな?」

 と感じるのだった。

 そう思って、今のつかさを見ていると、

「どこかで見たことがあるような気がするんだよな?」

 と感じた。

 そう思えば思うほど、遠い過去ではなく、

「実につい最近のことではないだろうか?」

 という思いがこみ上げてくる。

 その思いが次第に募ってくるのだが、簡単に思い出せない気持ちは、まるでさっきの昔読んだ小説が思い出せない感覚に似ているから不思議だった。

 最近、女の子と急に話をするようになったなどということがあったわけではなかった。ただ、思い出そうとすると、懐かしさのようなものがこみあげてきて、癒されているという感覚がったのだ。

 それが、えりなのことであるということに気づくまで、かなり時間が掛かったのだ。

「そういえば、最初に指名した、たしか、あいりという女の子だったと思ったが、本当にどうしたんだろう?」

 と思った。

「えりなさんで癒されたんだから、忘れてしまえばいいのに」

 と思ったが、なぜか忘れられない。

 いや、忘れようと思えば忘れられたはずなのに、急に忘れられなくなっていたのだ。それが、つかさを見た時だと思った時、

「まさか、つかさがあいりなんじゃないだろうか?」

 と思ったのだ。

「いや、まさか、そんなことがあるはずない」

 と思い、打ち消そうとすればするほど、つかさだったと思えて仕方がない。

「だったら、なぜ、俺の相手をわざわざ拒否したのだろう?」

 と思った。

 体調が悪かったというのであれば、今日もまだ調子が悪くても仕方がないというものだが、だったら、誘われたからと言って、ノコノコ出てくることはないだろう。

「ごめんなさい。体調が悪くて」

 と言えば済むことのはずだ。それなのに、わざわざ来るということは、どういうことだというのだろう?

 もう、ここまでくれば、あいりがつかさだったということを否定できなくなってきた。どうして拒否されたのかを解明しないと納得がいかない。もし、それが事実でなかったとしても、自分が納得いくように感じられるかどうかが問題だったのだ。

 その時思ったのは、

「あいりが待合室で勘違いした?」

 と感じたことだった。

 最初、待合室にいたのは、先輩だったので、あいりが待合室で一人でいる先輩を見て、

「あっ、まずい」

 と思ったのかも知れない。

 もし、相手がマサトだったとしても、知り合いの連れてきた人だということになれば、まずいと思うのは当たり前のことである。

「だけど、先輩はここも常連だったと言っていたので、いくらパネマジの写真を見たとしても、先輩ならすぐに分かりそうなものだ」

 と思った。

 実際につかさとは小説のことでいろいろと話をすることもあるので、面識は完全にある。気づいていたのかも知れないと思うと、今回、マサトにつかさを紹介しようというのは、どういうことなのだろうか?

 マサトは先輩が何を考えているのか分からなかった。

 ただ、先輩ほどの人であれば、もし、つかさが風俗で働いていたとしても、それをわざわざ公表したり、問い詰めたりすることはないだろう。

 そんなことをするのであれば、もっと早くからしていることだろうし、話をしていれば、何となく分かることのように思えた。

 だが、今日のつかさを見ている限り、とても風俗嬢には見えない。

「まさか、誰か男に騙されたか何かして、働かされているのではないか?」

 ということまで考えた。

 最近は、学生が多かったりするということなので、なぜ風俗で働かなければいけないのかということは詳しくは知らないが、前に先輩が教えてくれたこととして、

「風俗嬢が堕ちていくパターンとして、ホストクラブが絡んでいることが多いからな。Vシネマなんかでも、風俗嬢の話の中に、ホストが出てくることも結構あってな。ホスト業界というのも、ものすごく生々しいもので、ナンバー1になりたいと思っているホストは、女にどんどん貢がせて、借金まみれにさせて、それを返済させるために、ソープを紹介するという流れがあるらしい。だから、男がソープでお金を払って、癒されたとしても、嬢の中には、ホストのせいで、さらに、そのお金がそのまま、ホストクラブに流れるという仕掛けなんだよ。女も、ホストに溺れるというところだよ。それは、風俗に金を払う男とは、違った生々しさがあるらしい。今度、そんなVシネマ、見せてやるよ」

 と言って、先輩から、見せてもらったが、想像以上の生々しさだった。

 ドラマだと分かっていても、見ているとムカついてくる。そんな映像だった。

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