最終話 西へ

「風葉、ワシと幸せに暮らそうぞ!」

 山を降りてからセツは風葉の説得を続けていた。

「んー。私は鬼を退治に西へ行きたいです」

「もう鬼はよいではないか! 封子のロウソクだってきっと消えておる!」

「じゃあ、西の鬼を退治してから考えます」

 セツの必死な説得も気にせず、風葉はのんびりと返す。

「鬼がそんなに好きなのか!」

「まさか! ただ、いるのに退治しないのは落ち着かないだけです」

「一緒に行くワシの苦労を考えろ!」

「それなら、私一人で大丈夫ですよ」

「か、風葉一人だと、死んでしまうかもしれぬ! ワシがいないと風葉は死ぬのじゃ!」

 セツの無茶苦茶な理屈に風葉は思わず笑った。

「はは。確かに」

「それに、他の者に風葉を取られてしまうのはイヤじゃ!」

「そんなことありませんよ」

「風葉はワシのじゃ!」

「それなら離さないでくださいよ」

 風葉はセツの手を掴んで西へと歩いて行った。

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鬼退治の女と妖狐の鬼退治旅 シイカ @shiita

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