第7話 魔法じかけの夜空
高校生の時に見た、忘れられない夜空がある。
当時、私は自宅の最寄り駅近くの塾に自転車で通っていた。その塾の帰り、夜の20時頃だっただろうか。
駅近くのゆるい坂道を自転車で登りながら見た濃紺色の夜空に、精緻なレース細工のような丸い薄雲が幾重にも広がり、その雲の隙間の空から、とびきり上等の大粒の真珠を思わせる満月が輝いていた。
塾帰りの見慣れた夜空が、まるで極上の宝石箱の中身に変身したようで、見惚れるしかなかった。
大好きなファンタジー作家のめるへんめーかーさんは、ご自分の漫画の中で、こんな夜を「魔法じかけのレーシィムーンナイト」と呼んでいたのを思い出した。
帰宅が遅くなって、家族に心配をかけるのでなければ、突っ立っていつまでも眺めていたいと願うほど、とびきり綺麗で不思議な、自然が生み出した魔法のような夜空だった。
魔法が解けないように、何度も振り返りながら、ゆっくりと家路を辿ったのに、帰宅した自宅の玄関から見上げた空は、雲ひとつないいつもの夜空で、満月だけが浮かんでいた。
もう一度、あの夜空を見たいと、30年以上経った今も、何度も夜空を見上げるけれど、あんな夜空は一度見たきり。
当時は携帯も持っていなくて、写真に撮ることもできなかった。
あれは本当に魔法にかかっていたのかもしれないとすら思うことがある。
レース模様の雲の隙間から輝く満月。実物でも写真でも見たことがあるという人は、ぜひ教えてください。
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