1-7 新しい生活
「夕食の時間だな」
都寄が言い、重友に向かって一緒に行くかと訊ねてくる。食堂に、ということだろう。三学年合同で食事をするのだと足柄が説明していたことを思いだす。
重友は頷くと、プリントの束を机の上に置いて貴重品を鍵つきの抽斗にしまった。鍵は先ほど職員室で足柄から渡されたものだ。大切なものは個々で責任をもって管理せよということだろう。つまり紛失があっても学校側はいっさいの責任を負わない。
抽斗の鍵を制服の懐にしまう。落とさないように気をつけなければならない。
それから部屋を出ると都寄と連れ立って食堂へと向かった。
荷ほどきは食事のあとでになりそうだ。足柄から渡されたプリントの内容も明日までによく確認しておきたい。
もっとも送った荷物はそう多くないから、検めるのにさほど時間はかからないだろう。ほかのことに費やす時間も取れるはずだ。
廊下を歩いているとほかの部屋からも次々と生徒が顔を出してきた。さっきまで静かだった寄宿舎内が急に騒がしくなる。みな食堂に向かうのだろう。
見慣れない顔の重友に訝しげな視線を投げてくる同級生たちに、都寄は今日やってきた自分の同室だと逐一律儀に説明をした。重友はそのたびによろしく、と頭を下げた。相手からも気のよい反応が返ってきて、重友の緊張はしだいにほぐれていった。
一年の寄宿舎から渡り廊下を歩いて生活棟へと向かう。食堂へ向かいながら、一年生が使う風呂の場所などを都寄が説明してくれた。
食堂はすでに多くの生徒で賑わっていた。都寄と一緒に空いている席に着く。おかずは献立も一人あたりの量も定められていたが、白飯と味噌汁はおかわりができた。重友は白飯を一杯おかわりした。
「終了間際に行くと、余ってればおかずも好きなだけ食べられるんだ。まあ余ってないことも多いし、あんまり遅いとそもそもごはんにありつけないかもしれないから、賭けだけどね」
都寄も白飯をおかわりしながら、重友にそう説明した。食いっぱぐれるくらいならば、時間どおりきっかり行くほうがいい。
食事を済ませて部屋に戻り、荷ほどきを済ませた。足柄から渡されたプリントを確認していると、すぐに就寝時間が迫ってきた。慌てて風呂を浴び、見回りに来た舎監に急かされるようにして床に就いた。
都寄は寝つきがよいらしく、おやすみと声をかけてからすぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。重友も布団を被り、目を閉じた。病院の冷たいベッドではない、新鮮な感覚だった。取り立てて布団が上等なわけでもなく、病院のベッドと寝心地が大きく変わるわけではない。それでも落ち着いた。
これから本格的にこの異世第一高等学校での生活がはじまることを実感した。
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