第31話 大襲撃 ーamoeba(4)ー

「私たち、一線超えたみたいな感じだね」

「言うなよ...つかこいつらに酒飲ませたのお前だろ、二日酔いしてたらどうしてくれんだ」

「知らなーい☆」

「あのなぁ...」

 2人の話し声が聞こえる中で、森の奥では不穏な動きがあった。

 目を凝らしてじっと見るとほら...

 あなたは喰われてしまった。





「うーん...」

 ゼンが起きる。

「おっおはよう。調子はどうだい?」

「...最悪じゃ」

 ゼンはそう答えると、森の奥に入っていく。何をするのやら...

 その次に、女性陣が起きる。

 彼女たちは自分の服のはだけ具合に大変驚愕していた。

 女性の叫び声ってほんとに甲高いんだなぁって改めて知った。

 最後に起きたのは、テリアたちだった。

 彼らはいつの間にか起きて、いつの間にか身支度を済ませていた。

 そしてアルラ。彼女は、

「めーしーよーこーせー!!」

 と急造の机代わりの切り株を急造の串であるえだをだんだんしながら、ご飯をよこせと全身で訴えていた。いつの間にか馴染んでいるのはなぜだろうか。

 獲物をとっ捕まえて、火で焼いて準備完了。

 みんなにとれたてほやほやの野生の焼肉をくばり、言う。

「それでは、アルラとテリア、ジークのパーティー加入を祝って...いただきます!」

『??』

 全員の頭にハテナが浮かんだ。自分でも何を言っているのかよくわからない。

「何でこいつらがわしらのパーティーに入るんじゃ?!」

 一番槍を挙げたのはゼン。その理由は最もだ。

「まず、テリアたちは俺の人質だ。これはネプラスのギルドマスターにも、首長にも了承をいただいている」

 私がやりました、と言う顔で通しているが、実はやったのはアルラである。どうやらそうした方がいいと本能的に感じ取ったらしい。何だそれ、羨ましい。

「んでアルラだが...昨日の未明に、俺たちのパーティーに入ることに決まった」

『はぁ??』

 アルラ以外の全員から息が合わさったはぁがでた。

「何でわしらを起こさなかったんか!!」

 ごもっともな文句をゼンがぶつける。

「だってお前ら...酒飲んで潰れてたろうが」

「っ...」

 痛いところをつかれたのか、おとなしくなった。

「他に異論のある奴は?」

 いない。

「というわけで、新たな仲間が3人増えたんだ、よろしくしてくれよ?」

「よろしくする前に一つ確認したいことがある」

「なんだい?」

 ゼンがいう。

「われ...人間か?」

 シハル、レーゼ以外に動揺が走る。そりゃ教えてないからな、しょうがない。

「...覚えてるか」

「もちろんじゃ。もしわれが人間言うのなら...ここで消す」

「それはちょっと許さないなー」

 アルラがゼンの前に立ちはだかる。

「だって惚れちゃったもん、お互いにお互いを守るって約束もしたし☆」

「してないがな...」

 そう言いかけたが、その文句も実に都合がいいので、利用させてもらうことにした。

「そういうわけだ、ゼン。俺は彼女との約束を最優先に守る意思がある。君がどちらかを攻撃すれば、どちらも敵に回る。それでも、君は敵対するのかい?」

 よくある序盤に出てくる敵の脅し文句を投げつける。だが、ゼンの判断は意外にも冷静だった。

「そうか...」

 出かけていた刃を鞘にしまった。一安心と思って、俺とアルラも戦闘体制を解く。瞬間、彼の刃は俺の首元にやってきた。

「全員動くな!!」

 よくあるテンプレ系か、と俺はため息をつく。

 だがしかし、俺以外の奴らには効果抜群のようだ。

「特にそこの女、お前はそこから動いたら躊躇いなくこいつを殺す」

「それで脅した気になってるのー?」

 アルラはもうすでにこいつをいつでも無力化できるようだが、情報を引き摺り出したいらしいのか、挑発に言葉を返す。

「そうだろう、現にお前は動けていない」

「君、有利がとれた瞬間に威張るんだぁ...」

 アルラから殺気が放たれる。

「ちょっと調子に乗りすぎかな」

 真正面で殺気を受けているゼンだが、びくともしていない。

「お前もその程度で脅した気になっているとは、調子に乗っているのではないか?」

「いってくれるね、若僧」

 2人の衝突がデットヒートする中、怯える仕草でゼンに尋ねる。

「ななななんで俺のパーティーに入ろうと...?」

「臭い嘘をつくな。お前はその程度で怯えはしないはずだ。もっとマシな演技をするんだったな」

「そうか...俺は一体どこで間違えたんだろうか...」

 しめたと思ったんだろう。ペラペラ饒舌になり出した。

「最初からだ。お前が俺の出自を詳細に聞かずに、俺をパーティーに入れたところでお前の敗北は決まっていた。最初から素直になっていれば、お前がこうなる羽目にはならなかったのだ。俺が主張と繋がっていることも疑わずになぁ!!」

「へー。そうなんだ。じゃあね」

 その言葉と共に、アルラの拳がゼンに向けられる。

 瞬間、俺の首は斬りり落とされ、その拳も避けられる。

「ふっ、動いたら殺すと言っただろう。お前のせいでお前が一番好きな人が死んだぞ。その感想を教えてもらいたいところだ」

「じゃあ、何でお前は俺を殺した気になっているのか教えてもらいたいなぁ...」

「なっ?!」

 俺はアルラの隣にいた。ゼンは慌てて斬った俺を探しているが、斬ったはずの俺はどこにもいない。

「幻か...!」

「幻じゃないさ。ただ、俺がゼンの拘束から逃れおおせただけのこと」

 俺はゼンを煽るように言う。

 まるでお前なんぞ相手にすらならんと言う余裕を見せる。

 それに対してゼンは...

「今すぐ磔にしちゃらぁ!!!」

 まんまと乗ってきた。

 忠義を重んじる武人と脳筋は扱いやすいと昔から言われているしね。

 これくらい朝飯前ですよと。

 無策で突っ込んでくるゼンの身動きを止めようとアルラが動く。

「そんなんで仕留められると思える頭はかわいそうだねぇ...」

「くそが...」

 峰打ちされたゼンは意識が朦朧としながらも、何とか体制を維持している状態だった。いつとどめを刺されようが反撃できる暇もない。

「いつから...繋がっていた...?」

「つながるも何もそもそも知り合ったばっかだよー。口裏合わせなんてできるわけないじゃん」

 事実、このゼンの殴り込みは想定していたが、その対策は練ってはいない。お互いに好き放題に動いた結果がこれ。何とも息が合うものだ、と自分でも思ってしまう。

「殺せ...」

「ダサいぞそのセリフは」

 ゼンの殺せに俺は思ったことをそのまま伝えた。

「なら...自身で命を断つまで!!」

「無理だ」

 ゼンは自分の首に刀をあてがうが、首を斬れない。

「お前のその行動を想定して、すでに対策しておいた」

「何をした?!」

「教えるわけないだろ。お前は相手がわからない技をペラペラ喋っているのか?」

 俺は彼が忠義を重んじることを知っている。

 だからこそ、魔法で彼の動きを止めた。

 止めたと言うか、彼の首の周りに不可視の鎧を生成したのだ。

 魔力を圧縮すると、このような芸当もできるらしい。

 本当に、異世界様様である。

「俺に何をするつもりだ」

「何もしない。ただ、お前の主人に伝えておいて欲しい言葉があってな。一言一句間違いなく伝えることだ」

 俺は、ゼンの耳元で伝言を言う。

 すると、みるみるゼンの顔は青ざめていった。

「正気か...?」

「正気さ」

「ねねナギくん、私にも教えてよ」

 俺はアルラにも耳打ちした。

 すると、彼女は笑みを浮かべる。 

「面白そうだね...私も混ぜてよ」

「もちろんさ」

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