第27話 大襲撃 ー魔津波撃退(fin)ー

 ナギ一行は謎の建造物の最奥まできた。

 カプセルや研究資料などがあることからここは研究所のようだったが...

「ナギ、何か探してるの...?」

「ああ。いや...なんでもない」

 ナギが先ほどから挙動不審だった。

「...」

 2人はこの奥でなにをしているのかというと、死体処理と、魔津波の根源コアを探しているのだった。そして、未だに遭遇しないアルラたちも一緒に探していた。

「...?!ナギ、こっち...!」

「本当か?!」

 シハルが反応を示したので、ナギが真っ先に向かうと...

「...?!」

 ナギは絶句した。

「あった...?!」

 シハルは遠くから走りながらそう言うが...

「...なんにもない。この先だろう。いくぞ」

 そう言った。

 そこから先、魔津波の根源に着くまで、ナギは一言も喋ることはなかった。



 研究所、とある廊下。

 歩いていると、レーゼを抱えて歩くゼンの姿があった。

「...お疲れさん」

「ああ、ぶち疲れたわ...休ませてくれ」

「根源を見つけた後にな」

「ああ、わかっとる...」

 探すこと数時間。

 同じ階層の廊下の隅の部屋に、根源があった。

「さて、この根源を割るぞ」

「...ん」

 ナギが一太刀入れると、根源は真っ二つに割れた。

「これで...魔津波は止まったのか...?」

「ああ。上で暴れ回っとる魔物は消えはせんが、今後湧くこたぁ無うなるはずじゃ」

「そうか...」

 一息つき、ナギは感情を押し殺す。

「それじゃ...人間軍クズを潰そうか...」

「主...?」

「ナギ...どうしたの...?」

 ゼンとシハルがナギに問いかけるが、その声は届かない。

「それじゃ、先に行くよ。2人とも、早くきてね」

「ちょ、主!なに言うてるんや!」

「ナギ...!戻って...!」

 ナギはその声は届いたのか、止まって、一言放った。

「何を言ってるんだ?これから脅威を排除しにいく。そう言ってるんだが...」

『え...?』

 2人はその言葉に戸惑いを見せる。

 続けてナギはいう。

「もし君らが人間軍やつらを皆殺しにするのはやめろっていうつもりなら...それは無駄だから。あとそういう言葉、嫌いなんだよ...」

 その言葉に、ゼンが怒る。

「救える命があるかもしれんってゆうのに、なんで皆殺しにせにゃあいけんのじゃ!!」

 思いっきり、ナギを殴る。

 だが、彼はそれを身動き一つせずに受け止め、こう言った。

「救いようのない連中に救いの手を差し伸べて、何になるんだ...」

 ゼンは後ずさる。

 シハルはいつもとは違うナギに怯えていた。

 そんな中、ナギに殴りかかるものが1人。

「ぅぁああ...」

 全員が驚き、思考を停止していた。

 誰かもわからない、皮膚がただれた人だった。

 しかし、ナギの進路を立ち塞いでいた。

 まるで、ナギを諌めるかのように...

「...」

 ナギはその拳を優しく握り、体を抱き上げる。そして、部屋の隅に安置した。

 ナギは合掌し、深く祈りを捧げている。

 そして...


「安らかに眠れ、名も知らぬ者よ...」


 そう呟き、その場を後にした。


 残されたのは、ゼンとシハル、そして未だ目が覚めないレーゼだけだった。
















 ...

 救えるかもしれない命、か...

「久しぶりに聞いたな、その言葉...」

 それは、では、無意味な言葉だった。

 だが、それを頑なに救おうとする1人の兵は見たことがあるな...

「覚えてないけどな、もうそんな奴の名前は」

 ゆっくり歩みを続ける。

 数分くらいすると、もうと思うが...

「これも、あの里で鍛え上げたんだっけか...」

 妹を守り抜くため、少しだけ忍の里といわれる、甲賀・伊賀の里に身を寄せたことがある。どう入ったかは...

「忘れてしまったな」

 あのときは、妹を守り抜くことにめいいっぱいだったから、周囲の人間のことなんて構ってやれるほどの余裕は、俺にはなかった。それに、旅の道中で記憶を鮮明に覚えれるほど安心した時はなかった。だが...

「もしかすると、まだ俺は中途なのかもな...」

 過去の思いに耽っていると、かすかに人の談笑が聞こえ出してきた。

 俺は神経を研ぎ澄ますー


 ーそれはまるで、空気と一体化したようなー





「でよぉ、そのときあいつがよぉ...」

「わり、ちょいと小便たしてくるわ」

「今かよ!」

「早く戻ってこいよ〜」

「ああ、わかってるって」

 1人の兵士は、陣を出て、森に少し入ったところで用を足した。

 そして...

 2度と戻ってくることはなかった。


「あいつ、おそくねぇか?」

「わかんねぇわ」

 小便をしにいった兵士が森の中に入ってから一時間が経つ。

 すでに終えているはずなのだが、一向に戻ってこなかった。

「おい、探しにいくぞ」

 隊長格の人物が、行方不明の兵士の捜索を指示する。

 その隊長に付き従う兵は森の中へと入っていった。

 そして、彼らはその森から出てくることはなかった。







「...」

 俺は数多の屍の上に立っている。

 これまでも、そしてこの先も。

 妹を守りきれなかった俺に、誰かを守る資格などないと思うが...

 は、何がなんでも守り抜く。

「...須藤凪...」

 たとえ、俺の命が消え失せても。

「抜刀」






 それは、一瞬の出来事だった。

 陣中の兵のほとんどは死に絶えて、生き残ったものは恐怖に包まれている。

 なにせ、突然のような何かが飛んできたのだから。

 それにあたったものは、真っ二つになった。

 総大将とその近侍を暗殺し、成り代わった者も、また恐怖に支配されていた。

「なぜだ...なぜこんなことに...?!」

 全てが万全だった。

 ずっとここで構えて何もしない能無も排除し、これから進行しようというこの時に...

「...」

 その哀れな姿を、凪は眺める。

 席を掠め取り、あたかも自分の力で勝ち取った席だと主張するなり損ないを。

 そして同時に、その席にかつて座っていた者に同情していた。

 凪はそれを不思議に思っていた。

「もう同情なぞすまいなと思っていたが...まだ残っていたとはな」

 もし、間に合っていたなら...

「仮定の話は無しだ」

 首を振り、屑に目を向ける。

 その屑は、人を盾にし、自分だけ安全に撤退しようとしていた。

 無駄な足掻きなのだが、人を物として扱っているその所業に凪はキレた。

「...ゴミが」

 凪は人のバリケードを見向きもせず、斬撃を飛ばす。

 だが、それは人バリケードを素通りした。

 バリケードとなった人はなぜ切られていないのか不思議に思っていた。

 しかしその後ろにいた屑は...





 声にならない断末魔をその場に轟かせ、頭だけが転がっていった。

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