第21話 大襲撃
「...ほんとに俺のパーティーに入るの?」
「当たり前じゃろ。わしが仕えるに相応しい主が見つかったんじゃけぇな」
帰り。
俺とゼンは、ネプラスへと帰っていった。
ちなみに決闘場所は、そのまま放置したら生態系が崩壊するとのことで、彼が持っていた魔具で修復した。
一瞬で更地が森林に戻る様相には俺も驚きを隠せなかった...
「ゼン、一応聞くけど...君、出身は?」
「アーガスのヒノ地区や」
...
普通の場所...なのか?
まあ、よくわからんからいいか。
「何の問題もないただの住宅区で生まれたんじゃぞ?ただこまい時に路地裏に捨てられただけじゃ」
相当重かった。
「あー...なんか、ごめん...」
「今じゃどうどいうこたぁないただの笑い話じゃ。気にするこたぁないわ」
「そういうなら...とりあえず、お前を俺の仲間に紹介する。喧嘩売り出すんじゃないぞ?」
「わかっとるわ。さすがのわしもそこまで好戦的じゃないからのぅ」
...初対面で喧嘩売られた相手にそれをいうのか...
墓の準備でもしておくか?
「という経緯で俺たちの仲間になった、ゼンだ。実力は俺が保証するから、仲良くしてやってくれ」
「ゼンや。足引っ張る雑魚は嫌いじゃよ。よろしゅうな」
『...誰?!』
女子の買い物を終えて、宿に帰ってきたら、知らない男がパーティーリーダーと一緒にいる。
というかそもそも知らん奴が自分たちの部屋にいたらそうなるか。
「え、まさかナギさん、そういうこと...」
「何言ってんだ斬り殺すぞ」
レーゼの認識改善についてはともかく。
「経緯についてはさっき話した通り。腕っぷしが気になるなら戦場くらいは用意してやるからそこで戦ってきたらいいさ」
「,,,」
シハルがゼンをじっと眺める。
俺はその沈黙の間にレーゼの
しばらくたち、シハルが口を開いた。
「うん、この人、強い。戦力になる」
「わしゃ強いって言うたじゃろうが。少のうとも足を引っ張るこたぁ絶対ないけぇ安心してわしに背中を任せな」
シハルはシハルなりに戦力分析をしていたらしい。どうやって強さを視たのかは知りたいが...
「まあ、とりあえず探索者証明出してよ。パーティーメンバーに加えるためにギルドに持っていくからさ」
「?わし探索者じゃないが?」
静寂が走った。
もちろん、それを破ったのはゼンである。
「ま、金は色々工面して生活費分は稼いどったけどのぉ!ははは!」
とんだブラックジョークである。
場はまた静寂に包まれた。
ゼンは高笑いし続けている。
凪とシハル墓おおから血の気が引いていた。
レーゼは「ナギさんは健全...男は女を愛するのみ...」とうわ言のように繰り返していた。
「あ?なんかおかしいこと言うたか?」
ゼンのその言葉で、ナギたちは全てを理解した。
「はい、わかりました。それでは、彼の探索者証明を作成いたします。明日の朝にはもうできていると思いますので、朝一番に取りにきてくださいねー」
「わかりました。ありがとうございます」
ギルドに、彼の探索者証明を作りに来た。
受付嬢と話をしていると、奥からギルドマスターがやってきた。
「お、もう新しい仲間を引っ提げてきたのか?」
「?そうですが...」
「手紙を読んだ当日にもう仲間として迎え入れるとか、流石だな」
「え、手紙?なんのことです?」
「え?まさか読んでない?」
「そもそも手紙すら受け取ってないのですが...」
ギギギと音が鳴りそうな首の回し方をしながらシハルたちを見やるギルドマスター。しかし、そこにはあさっての方向を向いて下手な口笛を吹くレーゼしかいなかった。どうやらシハルは面倒ごとに対する勘が鋭いようだ。
「レーゼ君。ちょっと君に命令があるんだが...」
「あ、私ちょっと用事があったのを思い出して...」
「嫌だなぁレーゼ君。俺は君に対して『命令』があるんだと言ってるんだ、わかるかい?」
にっこり笑いながら怒るギルドマスターに、レーゼはどんどん涙目になっていく。
最終的に、彼女はギルドマスターに屈服し、奥へと連れて行かれた。
助けて!!と涙目で訴えられたが、報酬をたんまり搾り取ってこい!!と笑顔のグッドで応援してやった。レーゼの活躍に期待しよう。
虚響の森、深部...
「はぁ...ここまで来るのに毎回苦労するわ...」
「まあまあ。今回は楽だからな。なんせ...」
「ああ、さっさと終わらせてずらかるか。ええと...どこにあったっけ...あ、あった、ここだここ」
男が指し示す場所には、何やら不自然にポツンとある石がある。
「ああ、この石をどうしたらいいんだっけ?」
「ばーか。忘れるなよ、壊すんだよ」
「ああ、そうか」
男は魔法を放つ。
「あっばかやろう!魔法じゃなくて物理でって言ってただろ!なんのために思いツルハシを持ってきたって思ってるんだ!」
「あ、ああ...悪い」
男のツルハシの一振りによって、石は粉々に砕けた。
「ふぅ...これで任務完了だ。連合軍に戻るぞ」
「ああ、他の7カ所も終えてるはずだ」
男たちは西方へと歩んで行った。
かつて凪たちがネプラスへと向かう時とは逆方向である。
「つまり、その手紙は俺にこいつを仲間として引き入れてやれと...」
「ああ、なんたる偶然かと目を疑ったが...」
俺は、用事が終わったらしいギルドマスターと話していた。
「ちなみに送り主は誰なんだ?」
「それが...匿名なんだよ...」
「...そうか」
いったい、匿名で誰が...
俺をどこで見ているんだ?
疑問は増すばかりだが、仕方がない。
「で、レーゼにはなんの面倒ごとを押し付けたよ?」
「ああ、罰として、ちょいともうそろそろ来るであろう
南無三...
「ちなみに君らは左翼配属だ。そこのゼンのランクがまだ最低ランクだから本来は受けれないんだが...俺が偶然確認してなかったからな。しょうがないしょうがない」
「...ああ、偶然確認してないなら、仕方がないよなぁ」
2人して、不気味な笑い声を出していた。
そんな矢先。
ギルド支部の入り口の扉を激しく開けてきたものがいた。
「ギ、ギルドマスター!魔津波です!魔津波がやってきました!!」
「...きたか。それで、発生方角は?」
「...西です」
「そうか。ん?どうした、そんな腑抜けた顔して。まだ心配事でもあるのか?」
「い、いえ...それが...」
「ん?言ってみろ」
「こちらへお願いできますか...」
「?ああ、了解した」
2人は、奥へと入っていった。
そしてすぐに、戻ってきたが...
ギルドマスターの顔は、焦燥に溢れていた。
「魔鳥は飛ばしたか?」
「は、はい...」
「よし、わかった」
ギルドマスターは、2階のベランダに上がった。
「聞け」
ギルドマスターが言う。
「今回の魔津波は、いつものように単純ではなくなった。なぜなら...」
ギルドマスターのその次の発言に、誰もが驚きを隠せなかった。
「人類連合が、われわれに宣戦布告をした。今、虚響の森西方に陣取っている」
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