第16話 裏では
「....命中...」
俺は、虚な目をして武装を解いた。
...
なんであいつらがこの世界にいるんだ?
なんで俺の仲間を襲う?
おかしいとは思わないのか?
俺は簡単なことに気づけないくらいには思考できない状態に陥っていた。それだけに、あそこにいる2人の存在は凪にとってはとても信じ難く、とても許容し難い事実だった。
「くそ...誰だよ打ってきやがったのは...!!」
「...」
ユイは痛みに悶え、男は冷静に状況を分析している。
そして、方向を割り出したのか、男は打たれた方向に向けて魔法を放った。
その魔法は、森の中に消えて少し経った後に離れたところで大爆発を起こしたが...
その少し後に、藪から音がした。
「...お前はそんなに乱暴な言葉を使う奴じゃなかったはずだ...」
凪が出てきた。だが、様子が尋常じゃない。
この世に絶望した目をしている。
それだけじゃなく、いつものような覇気も失せていた。
「それに、川西...なんでお前はその状態で生きているんだ...?」
「...俺たちはお前を知らないが...一体誰だ?」
「...そうか、お前ら、記憶も...」
男、川西と結依の豹変ぶりに、凪は全てを諦めているような表情をした。
シハルたちは静かに、しかしナギのあまりの覇気のなさに驚きながらも、状況を見守っていた。
「しかし...我々もこうも深手を負ってしまった。ここは一旦退かせてもらおう」
「...待て」
「くっそ!!!いい?!かわい子ちゃん!次は必ずわたしと一緒にきてもらうからね!!!」
「...待てよ、川西...結依...」
凪は、到底聞こえない小さな声で彼らを留めようとしたが、当然聞こえるはずもなく、2人は空の彼方へ消えていった。
凪は、もはや誰の声も聞こえなくなり、ただただ絶望し続けた。
一方。ここは人間領、アルテス連合国。
首都アルテスの政府施設にて、1人走る者がいた。
その者は廊下を走り続け、とある部屋の扉を忙しく開けた。
「盟主様!ルビウス王国から緊急の要請が...!」
「...今更なんですか?」
「わかりません...とにかく読めと王国から言われておりまして...」
「内容は?」
「盟主様以外に内容は見せるなと...」
「...わかりました。拝見します」
盟主様はその忙しく走ってきたものから受け取った書状を読むと...
「...そうですか」
ただその一言だけ呟いた。
「下がりなさい」
「はっ」
家臣はそう言い、部屋から出た。
その後、盟主は時間を忘れたように考え込み...
二時間後。
執務室についているベランダに出て、物思いにふけたように呟いた。
「お兄ちゃん...」
魔族領、魔都サンマス。
魔王城ロゼスヴォンチの廊下もまた1人、走る者がいた。
その者は走り続け、とある部屋の扉を忙しく開けた。
「魔王様!ネプラスからこのような報告が...!」
「ほう?いってみろ」
「それが...魔王様以外には伝えるなと...」
「...ははは!!そうか、わかった。それでは人払いをして、主は下がるが良い」
「わ、わかりました...」
男は若干怯えながら下がった。
そして魔王は報告書を読むと...
「...はははははは!!!この時代にまだ面白い奴がいたか!」
そう叫ぶと、執務室にいながら魔力を全開にした。
部屋中に資料が飛び交う。
「ナギ=スドー...お前をここで待つぞ...高みまで登り、わたしと殺し合うその日まで...!!」
ジョジ○立ちをしながら彼女はそう宣言した。
なお、その後鬼のように資料作業に悩殺されたのはいうまでもない。
ネプラス、ギルド支部。
ギルドマスターの部屋で、1人ソファに座る者がいた。
「...」
それは、映像が映る水晶を静かに眺め続ける。やがて、水晶は元の半透明に戻った。
そして、ソファから立ち、ギルドマスターは窓から叫ぶ。
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
ギルドマスターが抱き抱えているぬいぐるみも飛んで驚いていた。
その後、街から騒音被害の処理に悩殺され、受付嬢が鬼の形相でギルドマスターに後処理させられたのはいうまでもなかった。
ネプラスに帰還中の凪たちはというと...
「...」
「あっナギくんっちょっ近づけないっじゃないですかっ」
「アルラ様!!今ナギさんに近づくのはいけないことだと分かっているのですか?!」
「何をいうんですか!?夫が立ち直れないほどの傷を負っているときにそばに立つのが妻の責務ではないですか?!」
「何を口走ってるんですか!!あなたはまだ結婚すらしてないでしょう!?」
「わたしの中ではもう結婚してます!だからナギくんは夫なのです!!」
「何を言ってますの!?」
『なにこれ』
察して勝手に妻として寄り添おうとするアルラとそれを剥がそうとするエスターと
その声は森中に響き、その日の森での討伐以来の達成率は過去最低を更新したのだとか。
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