第12話 奇襲
ネプラス郊外。
ナギのパーティーとアルラのパーティーは、打ち合わせをしていた。
とはいっても...
「ナギくん!次はどこ行く?」
「ナギくん!私、ナギくんと一緒がいい♡」
このように、俺の膝の上に居座ったアルラが好き放題俺を自分の探索チームに引き抜こうと尽力していた。もちろんエスターにしばかれたが。
ちなみに、調査チームは2つに分ける。4人4人で、バランスよく戦力を分ける。そうとなると、必然的に俺とアルラは同じチームになってはいけないのだが...
「やだやだ!ナギくんと一緒がいいもん!」
と、アルラが駄々を捏ねまくってたので、打ち合わせが長引いてしまった。結局、エスターの鉄拳がアルラの頭にクリティカルヒットするまで、アルラの駄々っ子は続いたのだった。
ー第一調査隊ー
「それでは、基本的には俺の指示に従ってもらうということで。異論がなければ...」
「大丈夫ですよ」
「...」
「妹も大丈夫らしいので...」
俺は西周りの調査隊に属することになった。
メンバーは、シハル、アヌ、ジレインと俺。
アヌがあの時からずっと冷たいので、なんとか関係修復に努めているのだが...無視されるだけで、相手にもされない。俺泣きそう。そしてジレインの苦労も相当なものになりそう。
「とりあえず、異変があれば精霊を通して俺に知らせてください。シハルが伝達用として、俺たちにも見えるように精霊と話をつけてくれたらしいので」
「シハルさん、ありがとうございます」
「いえいえ...同族ですから、その...敬語をやめていただけないかと...」
「...わかった。じゃあ、タメ口で話すよ」
うんうん。友情が芽生えることはとてもいいことだ。シハルにはこれを機に、人脈をたくさん作っていってほしいな...
一方アヌはというと...
シハルに話しかけていた。
「...あなた、精霊王の友人...?」
「え?」
「おい、アヌ!いきなりそれを聞くのは失礼だろう!」
「だって...普通、精霊と話せはしない」
「だからって単刀直入に聞くものじゃないぞ!...すみません。これからも妹が迷惑をかけるとは思いますが...」
「ああ、いえ大丈夫ですよ。シハルや俺が明らかに話したくないようなことを聞かれなければ...と言いたいのですが」
「なんとかしてみます...」
ジレイン...
苦労といえば、王女...
レーゼ王女は大丈夫か...?
バーサーカーモードに入ってなければいいんだけど...
「入ってるよなぁ...」
俺はアルラたちの無事と、王女様の凶化に至っていないことを祈っていた。
ー第二調査隊ー
「むー、ナギくんと一緒が良かった...」
「いつまでもわがまま言わないでください...これ以上おいたがすぎると、あの人が飛んできますよ?」
「わかりましたっ、このアルラ、全力で任務にあたらせていただきますッ!!」
軍隊並みの宣言をアルラがしている中、オトセラスは背中に人を抱えていた。
そう、今絶賛泡を吹いて痙攣中の気絶している王女様である。
凪が懸念していた凶化は起きなかったが、代わりに戦力外になった。とはいえ、元から王女様は戦力外と言えるものだと言われていたが。
なぜついてきたのかというと...
「私を魔物だらけのところに置いていかないでくださいぃぃぃ!!!」
と泣きながら凪に抱きついてきたからである。
どっちにしろ、魔物だらけだぞと言っても、
「私はナギさんと一緒がいいですぅぅぅぅぅ!!!!!!」
と懇願してきたので連れてきたが...
なんと気を許しているシハルでさえも別チーム。
意識を飛ばしたわけだ。
凪から聞いてはいたのだが、王女の凶化には注意しろと言われ、飛んだ爆弾を抱えたなと笑い合ったアルラたちの慌てようはそれはもう想像もできる。が。王女は凶化しなかった。なので、刺激しないようにオトセラスが慎重に王女を運んでいたのである。
しかし、刺激しないようにするためには、戦闘は避けなければならない。つまり、アルラとエスターだけで360°警戒しなければならない。意外と、対立しているこの2人は相性がいいようで...
オトセラスたちに近づく魔物たちを一匹残さず灰にしていた。
彼女たちはお互いを見もせずに、まるでお互いが負けるなんてありえない!!と言わんばかりのオーラを纏って魔物たちを駆逐していた。
そこで、アルラについていた精霊に一報がきた。
「あれ...ナギくんから?まさか、もう見つけた...?」
しかし、その一報を聞いて、アルラは明らかに動揺した。
それをエスターが気になり、尋ねる。
「アルラ様、何かあったのですか?」
「...」
アルラは信じられないという表情で、エスターたちに精霊が伝えてきた情報を話す。
「ナギくん、攫われたって...」
ー第一調査隊ー
「ナギ...さん...?」
予想外の奇襲を受けてしまった。
そのせいで、一瞬だけ、身動きができなかった。
その隙をつかれた。
俺は、何者かに連れ去られた。
「お前は我らが主の元まで来てもらおう」
その言葉が意識が落ちる前の最後の記憶だった。
「目標は?」
「この中に捕らえている」
そういうと、男と女はその場から立ち去ろうと...
できなかった。
「
シハルが男と女の足を止めた。
「
そこをアヌが攻撃する。
とても昨日が初対面とは思えない連携である。
「チッ」
賊は護璧で魔法を防ぐ。
「ねぇ...あいつら、逃がしてくれるかな」
「いや...そのような気は毛頭ないようだ」
賊はシハルたちに直る。
「シハル姉ちゃん、あいつら...」
「うん、相当な実力者だよ。ジレインさん、油断は禁物だよ」
「大丈夫だ...油断をするつもりはない」
シハルたちは再び戦闘体制を取り、賊への戦意を高める。すべては、奪われた自分たちのリーダーを取り戻すために。
「一応聞くが、今俺たちの前から消えるなら、命だけは見逃してやると約束してやろう。どうだ?」
「「「ほざけ!」」」
「...そうか、やはり、魔族どもだな」
「そうだね。なんで、君は...」
女は凪に対して憐れむ視線を向けるが、すぐにシハルたちに殺意を込めた視線を向ける。
「いくよ、アヌ、ジレイン。作戦通りに」
「ん」
「了解した!」
凪奪還をかけた戦いが、始まった。
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