第11話 それでは
受付嬢にこっぴどく絞られ、依頼を押し付けられた。それも条件付きで。肝心の依頼内容はと言うと...
『ネプラス近辺で起こっている異変の調査及び原因の排除』
である。
異変というと、先日俺にわさわさ来た犬とゴブリンたちの大量発生の件と関連している。他にも色々な異変が起こっているらしい。それで、条件というのが...
「よろしくお願いしますね!ナギくん!!」
「ち、近い...」
「ちょ、リーダー!近すぎるから離れて!!」
「...」
「こんなリーダーですみません」
「いえ、気にしなければいいだけなので...」
「〜〜♪〜〜〜♪」
「なあ、アヌ、精霊と話すのはいいんだけど、あの人の悪口を言うのはやめろよ...?」
そう、アルラのパーティーと合同で依頼にあたれという条件だった。
アルラと合同は流石に精神的に死んでしまうと感じ、反論したが...
「何か、文句でも?」
という受付嬢の鉄壁の笑顔に制された。
そして、両パーティーの対面という訳だ。
ちなみに、アルラに近いと注意しているのが、エルフのエスター。女性。俺に対して謝罪しているのが、またもやエルフのオトセラス。男性。そして、後ろで鼻歌みたいな行動をしているのが、エルフ、アヌ。女性。アヌに注意しているのが、エルフのジレイン。男性。つまり、アルラのパーティーは全員エルフなのである。ちなみに、アヌとジレインは兄妹なのだそう。
「アルラ...これから合同で任務にあたるんだから、公私は分けてくれ...」
「わかったわ!これからは任務が終わった後にあなたの宿に突撃するわね!!」
「それもやめてくれ!!!」
一応お互いに顔合わせは済んだのだが...
顔合わせが終わった瞬間、アルラの猛烈なアタックが続き、エスターが引き剥がそうと頑張っていた。
ちなみに、シハルは他の同族と初めて会えて嬉しいのか、他のアルラのパーティーメンバーと楽しそうに話している。
王女はいつも通り泡を吹いている。
王女の魔物嫌いは先の暴走で痛く理解したのだが、このままじゃこの先やってけないぞ...
王女の魔物嫌いの克服方法を絞り出そうと奮闘していると、アヌがいつの間にか俺の顔を眺めていた。
「な、なに...?」
「...あなた、何者?」
「だから、俺はナギだって...」
「違う。あなた、どこから来たの?」
...
やばい。
もしかして、この子には見破られてる...?
「おい、アヌ!初対面の人にそれは失礼だろう!」
アヌを叱る兄、ジレインが俺に頭を下げる。
「すみません、妹が失礼なことを...おい、アヌも頭下げろ!」
「ご、ごめんなさい...」
「ああ、気にしてないですから。頭を上げてください」
「本当にすまない...妹は、誰にでも遠慮なしに話すからな...」
「あはは...」
どうやら兄は苦労性のようだ。そのうち、胃薬でも作ってプレゼントしてあげようかな...
お互いのメンバーの顔合わせが済み、宿に戻ったら...
「ギルドからの通達で、こちらの宿に移ってくださいとのことです」
...え?
嫌な予感しかしない。
そう思って、紹介された宿に向かうと...
「あ!ナギくん!」
アルラ達がいた。
ギルマス曰くパーティー同士親睦を深めろというお達しなのだが...
「ナギくーん!いつになったら返事くれるの?」
「返事も何もあるかぁ!!」
アルラに関しては、俺への猛アプローチという目的しか見えない...
誰か助けてくれ...
「あ、ナギさん、もう部屋で休みませんか?もう遅いですし...」
「ああ、そうしようか。それじゃあ、アルラたちもまた明日」
「ちぇっ...また明日だねナギくん!」
「リーダー!少しは自重してください!!」
エスターにも胃薬送っておこうかな...
俺はなんとか部屋に生還したのだった。
ちなみに空気と化していた王女はずっと泡を吹いていたので、シハルが魔法ですでに部屋に運び込んでいたらしい。
不憫...
翌日。
朝起きて最初に目に入ったのが...
「おはよう!ナギくん!」
アルラだった。
「?????」
「ふふふナギくん、昨日は激しかった「何してんのあんたぁ!!」ぶへぁ?!」
理解ができなかった。
昨日?激しかった?
そんなことで俺の脳がフルスピードで演算を行なっている間に、アルラはシハルが連れ込んだであろうエスターに殴り飛ばされていた。
「なんで他パーティーの人と添い寝なんてしてるんですか!!あなたは...」
「いーじゃん!私も恋の一つや二つしたいの!ナギくんだって、私のどタイプなの!息ぴったりだからいいじゃん!」
「よくありません!ナギさんをみてください!あなたの非常識な行動のせいで思考停止していらっしゃることがわからないの?!」
「いいえ!きっと私の魅力に見惚れているんです!だってほら、顔が赤く...」
「違います!あれはあなたが勝手に布団の中に入ってたからです!男は気付かぬうちに見知りもせぬ女に布団に入られてたらとても恥ずかしくなるのですよ?!」
「なーにが見知りもせぬよ!私たちはもう知り合い...いや、もう恋人と言っても...」
「だ・か・ら!他パーティーに迷惑かけるんじゃありません!!」
エスターとアルラが言い争っている横で、俺は思考停止しながら脳内演算を行なっていた。それも、ありえない早さで。
(俺は...)
演算を終えた後、俺は目の前で起きている修羅場でまた思考停止に陥った。その間、0.001秒。
シハルはアワアワしている。王女は寝ぼけながらこちらを見ると、幸せそうな顔で昇天している。
俺が取るべき行動は...
「私がナギくんに迷惑かけて何が悪いんですか?!」
「大変悪いです!!なんで...」
2人の論争は、背後からくる殺気に強制的に終了させられた。その殺気の発生源は...
「お前ら...」
凪だった。
「お前らは、揃いも揃って、人が泊まってる部屋でピーピーギャーギャー騒いで喚いて、挙句の果てには俺のパーティーのうち1人を仮死状態にさせるか...」
「な、ナギくん?」
「すすす、すみません!責任は私が...」
「いやいや、エスターさんが謝ることじゃありません。むしろ、感謝してるぐらいですよ。こちらもアルラにいろいろ迷惑被っているので」
「ナギさん...」
「え?ナギくん?私、迷惑なんて...」
「さあ、アルラ、ちょっとこっちでお話しようか」
「え、まって!ナギくん、怖い!その目で近づかないで!」
「いやいや。俺は君を歓迎しているんだ。だから、こっちの部屋で2人でお話でもしようとね...」
「いやー!!こないでーーーー!!」
そんなアルラの悲痛の叫びも虚しく。
凪とのお話によって、しばらくアルラは大人しくなった。
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