支配者の風格(レジーナ視点)
「よろしくお願いします。殿下のお力になれる事、光栄に存じます」
ノーザンバラ帝国の手先である事をおくびにも出さず,ジョンとマルファは恭しく頭を下げた。
「テストの結果次第だよ。隣室にテストを用意してあるから受けてきて」
リアムが冷淡にそう言って、二人を追い払うように指先を振った。
その仕草には自分の地位を知っている者だけが持つ圧があった。
それは今まで彼が持っていなかったものだ。
「ソフィアについていって。ライモンド先生、ソフィア、ディオン、監督を頼む。で、レジーナはこっちで仕事」
「えっ!? ジーナちゃんはテスト一緒に受けないんですか?」
「レジーナは元々学生会にいた。能力を知っているから必要ない」
「え? でも……彼女も一緒じゃダメですか? 私、不安で」
「あ、そう。なら、この話はなしだ。一人でテストも受けられないような人間は学生会に不要。ユルゲン、二人にお帰りいただいて」
「えっ?! ちょっと待って!! そんなつもりじゃなかったんです! 受けます!」
慌てるマルファにわざとらしくため息をついたリアムが肩をすくめた。
「これきりにしてくれ。じゃあ先生、ソフィア、頼む。ディオンも」
「こちらですわ」
「私、頑張ってくるね! 応援して! ジーナちゃん!」
ソフィアの横をすり抜けたマルファが、害意のない草食動物のような顔でレジーナを抱きしめて、耳元で『私達がいない間の事、ちゃんと報告しなさいよ』と囁き、ついでのように爪先をにじって離れた。
「ごめんなさい! ジーナちゃんから元気をもらいました!」
「時間を取らせるな。ほらこっちだ」
ライモンドによって威圧的に二人は学生会室から出され、レジーナはリアムと向かい合った。
「レジーナ。あの二人は本当に友達?」
唐突にたずねられて、レジーナは凍りつく。
リアムにすべてぶちまけて助けを求めたいが、自分はリアム達を裏切った。あんなに止められたのにテオドールと付き合い続けたのは自分だ。
助けてほしいなんておこがましいにもほどがある。
それにまだテオドールの優しい部分や二人で過ごした想い出と決別することができない。
自分がテオドールから離れたら、すでにノーザンバラ帝国とメルシア連合王国との暗闘に深く巻き込まれている彼はどうなるのだろう。
黙り込んで視線を伏せたレジーナに、リアムの口元がほんの少し困ったような笑みを作る。
それは先ほどまでの支配者然とした態度と違って、自分の知るリアムの癖で肩から力が抜けた。
「少し意地が悪かったね。レジーナ、君への仕事だけどあいつらがテストを受けている間に、ジョヴァンニと一緒にオクシデンス商会と交渉してきてくれる? もう一割ほどコストを下げたいんだけどハーヴィーはなかなか手強くて。君が一緒ならもう少し交渉の余地があると思うから」
あの時の仲違いなどなかったかのようにそう言ったリアムにレジーナは頷いた。
「では行きましょう」
書類を作る手を止めて立ち上がったジョヴァンニが横からスマートに手を差し出した。
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