第15話 幼馴染贔屓の教師は事件を隠蔽したい模様

草鹿さんや朝倉と出かけてしばらくしたした平日、放課後の校舎を歩いていると学年主任のおっさん先生から声をかけられた。今日はしゅーこちゃんが出張かなにかでお休みで物足りない日だったっていうのに、特務機関の司令してそうな風貌のこの学年主任にはなしかけられるのダルすぎる。

 学年主任がわざわざ俺に何の用だろう?思ったけど、指導室に来てくれと言われたのでついていく。

 そんな風に学年主任に呼ばれて面談室に向かう際中、俺を視かけたタテヨコが走ってきた。かくかくしかじか、と事情を話して学年主任に呼ばれたところと説明をした。その間に学年主任は指導室に先に行っていた。


「……ヤングメーン、突然だけど友情の抱擁がしたくなったでゴザルよ」


「me too」


そういってタテヨコからわしっと抱き着かれる。なんだなんだ?


「……フッ、安心して行ってくるでござるよ」


 タテとヨコの行動はなんだかよくわからんが、なんかそういう気分だったんだろう。


 ノックをしてから、失礼します、と声をかける。一応、草鹿さんや朝倉たちに言われたこともあったのでスマホの録音ボタンは推して手に持っておくのも忘れない。

 学年主任が座っていた。部屋の中央にテーブルをはさんで、対面する形でいすがおいてあるだけの殺風景な部屋だ。椅子に座るように促される


「来てもらって早速だが、E組の浦桐さんが学校を休んでいるのは君も知っているね?」


「はい」


 慇懃無礼を隠さない、いやらしい大人の笑み。この学年主任あんまり好きじゃないんだよなぁ。

 ……姫子の事か。名前を出されると正直嫌な気分になるが、真ぁそれはそれで仕方がない。


「彼女は成績優秀者で、学校としても大いに期待していたのだ。残念だよ……ご家族のトラブルで学校を休んでいるというのは、やはり、心苦しいものがある」


「そうですか」


 学校の事情がどうであれ俺には1ミリも関係がないので適当に空返事だけしておく。そんな俺の態度にピクピクと目尻をヒクつかせる学年主任のオッサン。いや、だって被害者の視点からだと加害者がどうなろうと関係ないよねー。


「私も、関係者として警察に事情聴取に呼ばれて詳しい話を聞いたのだけれどもね。今の状況は、彼女の、浦桐さんのためにも良くないと、そう思うんだ。それでだね――――君の方から、お父さんに被害届を取り下げるようにいってはくれないかね?」


――――はぁ?!?!?!何言ってるんだこのオッサン


「いや、言っている意味が解りません。なんで被害者が加害者を慮らないといけないんですか」


 このオッサン頭おかしいのか?と睨み返すが、オッサンはやれやれ、と言った様子で首をする。いちいち態度と動作が人を馬鹿にしてるみたいでムカつくんだよなこの人。


「考えてもみたまえ。今、この学校は大変苦しい状況にある。不祥事で学園関係者や生徒が逮捕されたのは知っていると思うが、そこにきてさらに生徒の親間での暴力行為など―――これではまたマスコミの恰好の的だ」


「はぁ?そんなの学校の都合じゃないですか。俺や父さんが配慮するような事ではないです。事実なんだからマスゴミに騒がれるのもしょうがないのでは?」


「おいおいおい、君は他の全生徒に迷惑をかけているという自覚はないのかね?

 今の3年生の進路や進学にも、影響するかもしれないだろう?

 それに加害者の立場にはなってしまったが、浦桐さんにも浦桐さんの未来があるのだよ」


「いや知りませんよ。あと姫子の親の自業自得でしょ」


「ふぅ……強情だね。だが、いいのかな?君はまだ1年生、こんなトラブルを起こして、これからの学校生活で何か起こった時に教師の救けが必要になるだろう?問題行動を起こした生徒と教師にめをつけられるのはよろしくないのではないかね?

 ……君の今後の学生生活や進路にも最大限便宜を図ると約束するよ」


 サングラスでマジでダンディなお父さんな感じの司令っぽいポーズで俺をみる学年主任のオッサン。


「……脅迫のつもりですか?」


「物騒な物言いは困る。

私は、そう、お互いの為にも被害届を取り下げる方がWin-Winになると、提案しているだけだよ。勿論、君にはその後も配慮をさせてもらうつもりだ。

 そうだ、部室棟に設備完備の空き部屋がある。そこを君に好きに使わせてあげよう。

 君は帰宅部だったと思うが、文芸活動の部活動として部活動実績にしてあげるよ。将来の内申でも有利になるようにしてあげよう。―――部室棟のオフィスは快適だよ?」


 そういいながら学年主任のオッサンが俺の方に回り込んできて、馴れ馴れしく肩に手を置いてくる。

 ……いや脅迫、恫喝だろこれ。あとは口止めの袖の下かな。

 話が見えてきたぞ、成績優秀な姫子を学校としては守りつつ事件を隠ぺいしたいから被害届を取り下げろ、って事か。いやいや、そんなアホな話があってたまるか。

 

「……俺はエアコンってのが苦手なんで」


「―――そうか、それは残念だ、よ!」


 そう言って俺の手に持っていたスマホを取り上げるマダオ……じゃなかった学年主任。


「やはり録音していたか。これは消去させてもらおう。君は素直に私の提案を受け入れるべきだと思うがね」


 クソッ……!!

 ニヤニヤと勝ち誇ったようにいやらしい笑みを浮かべるこの学年主任をどうしてくれようかと思ったところで、バァ~ン!!!と指導室のドアがひらいた。


「いいや……話を聞く必要はないでゴザルよたっくん!」


「タテ!ヨコ!」


 奇妙なアドベンチャーっぽい感じの立ち姿・立ちポーズをビシィッ!と決めて部屋に乱入してきたのはタテとヨコだ。


「な、なんなんだね君たちは?!」


「黙るでござるよマダオメ~ン。お主の企みと謀は拙者たちがバッチリ録音させてもらったでゴザル」


 そういって俺に近づいてきたヨコが俺のポケットに手を突っ込む。あっやっ、らめぇっ!!男子の横ポケットは敏感なにょぉ…!!……うん?何かポケットから小さな機械を取り出した。いつの間に……あっ、さっき抱き着かれたときか!


「―――無線の送信端末。ようは盗聴器でゴザル」


「な、ななななな、何ィ?!」


学年主任が鼻水を垂らしてアホみたいに驚いている。


「それじゃ、タテ。このマジでダメなオッサンのゴミ発言は早速教育委員会にタレコミかけるでござる」


「任された」


そう言って脱兎のごとく駆け出すタテ。呆然としていたが正気に戻り追いかけようとする学年主任だが、入り口のドアをヨコがその豊満なボディで塞ぐ。


「フフフ、伊達にこのボディに金をかけてはないでござる。オッサン一人ぐらいとめるのはわけないでござるよ」


「やめろ、どけぇ!このガキャァ!!」


「保身のために生徒を恫喝するような奴は大人しく観念してクビになればいいのでござるよ、バ~ッドティ~チャ~。あと炎上系インフルエンサーとかがもしかしたらネタにするかもしれぬでござるな」


「うあああああああっ!?」


 そのムッチムチのダイナマイト♂ボディで学年主任の行く手を遮るヨコと、情けなく懇願する学年主任。う~ん、一瞬どうなる事かと思ったけど瞬殺されてて笑っちゃう。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!そんなことされたら俺はおしまいだぁぁぁぁ、やめろ、やめてくれえええええええええええええええ!」


 学年主任が瞬時に爆殺されてしまったけどこの人はマジでダメなおっさんじゃったか……。うーん、女運はなかったかもしれないけど頼りになる友達をもって俺は友情に恵まれてるなぁ。


「んふっ。たっくんはまだまだ拙者たちがついてないとダメでござるなぁ。あと、警戒するにしてもツメが甘すぎですぞ」


 なんとか部屋から出てタテを追いかけようともがき、命乞いをするマダオをものともせずにヨコが俺にダメだしをしてきた。そこは素直に反省してます。


「ゴメンネ、ヨコ」


「ええやで」


 素直に謝るとにっこり笑顔を返してくれるヨコ。あとでタテとヨコにはサブロー系ラーメンを奢っちゃおうね~。

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