第14話 どうやら幼馴染はまだやらかすらしい
下着屋のお姉さんの誤解をとき、2人分の買い物袋を持ちながら陽キャ御用達なカフェのテナントへと移動することになった。注文を済ませて席に腰をおろすと、どっと疲れが噴き出た。
「はぁ……全く、まさお扱いはやめてくれよまさおは」
ドキッとする冗談だったので苦笑しながらラテを呑む。
「あはは。……今、まさおってネットミームでみんなのおもちゃじゃん?
まさおなんてしょ~もない奴だって思って気にしないようにしてさ。笑い飛ばしてやればいいんだよ。ネタにしてやるくらいでちょうどいいとおもうんだよね~。ということで笑えよ、たっくん」
「つまりさっきのは俺にまさおを笑い飛ばせるようにした……ってコト?」
「YES!YES!YES!YES!YES!」
エェ~ッ?!まぁいいけどね。こまけえことはいいんだよ。
「えっと、それじゃホテルに行く?朝倉も一緒でいいの??」
フラペチーノのカップを両手でもちながら上目遣いに俺を視る草鹿さん、そのしぐさは可愛いと思うけどちょっとバグってしまっていた。昔ばあちゃんちにあったTVみたいにチョップしたら治るかな?
「……ミヤがなんかバグってるのはさておいて、たっくんちょっと話をしてもいいかな?」
ミヤ?あぁ、草鹿さんの事か。そういえば草鹿さんの名前って雅美(みやび)っていうんだっけな雅美……雅……うーん、何か……大事な事を見落としているような……まぁいいか、そのうち思い出すだろう。
そんな事を考えていると、いつもダウナーでやる気のない朝倉がスッと目を細める。ちなみにごく自然な動きで胸の上にフラペチーノのカップを置くのも忘れない。
「―――浦桐さんの事なんだけねー。ちょっと気を付けた方がいいと思うなぁ」
「姫子の事?いや、でも絶縁したし父親が逮捕されたしもう関わってくることないでしょ」
そんな俺の言葉に、ゆっくりと首を振る朝倉。
「甘い、甘い。あれで反省してると思わない方がいいよぉ~。わたしぃ、こういう野生の勘みたいなのはよくあたるんだよねぇ」
朝倉が言うとなぜか説得力がある、最後の1人になるまで殺し合えってなっても野生の勘とセンスだけで終盤まで生き残りそうなんだよな、朝倉って。
「あ、それは私も思ってた」
バグから帰ってきた草鹿さんが頷きながら同意をしている。
「今の浦桐さんは―――無自覚に満たされていなかったから表面化してこなかった本性が発露してると思う。もし選択肢を間違えなければ一生表に出てくることのなかった心の奥底の本質みたいなものかな」
そう言ってチュー、と音を立てながらフラペチーノをすする草鹿さん。話が難しい。もっとわかりやすく説明プリーズ!と目で訴えると、了解と頷いてくれる。草鹿さん俺の心中察するの上手すぎじゃない?
「今までは本当に欲しいものを手にしている状態だったのを自覚してなかったんじゃないかな?で、今はそれを失ったからなりふり構わなくなってる。本性むき出しの無敵の人、ってコト。だからこのまま黙って引っ込む事は無いと思う……まだ何か、やらかすんじゃないかな」
なるほど無敵の人。そう言われるとなんとなくだけど危険な感じがする。
「それに学校の方も多分何か口出してくるかもしれないしね」
学校への容赦ない朝倉の言葉。この学校って生徒会長と教師が逮捕されてたもんね、マスコミが来てニュースにもなっててこの学校やべーなって思ったし来年は受験者減ると思う。
「この学校の立場を考えるとこれ以上トラブルを表沙汰にしたくないだろうし、浦桐さんは学年トップクラス……というか全国統一テストでも上位成績だったから学校からしたら有名大学に進学して株を上げてくれる“傭兵”みたいなものだったと思うのよ~。だからそういったところであれこれ介入してくるんじゃないかなって思うワケ。普通なら一発退学は無くても停学なり指導を挟みそうだけど……うちの学校だしどうでてくるかなぁ」
「……そうか、そう言う可能性もあるのか。おっぱいに栄養全部いってるという割には鋭いのな、朝倉って」
「褒めてもおっぱいタッチぐらいしかさせてあげないよ」
「マジで?!?!?!あ、じゃなかった、ゴホン」
そういって胸を張る朝倉に思わず咄嗟に反応してしまったが恥ずかしくなり押し黙る。朝倉が胸を張ると胸部のテントがパツンパツンになって色々とやばいな……おっとそういえば草鹿さんが静かだ。……あっ。
「もうダメだぁ……おしまいだぁ……」
草鹿さんは伝説の超おっぱい人を目にしたかのごとく、ガタガタ震えていた。恐ろしさと絶望に涙目になっていて、すでに戦意を失っているようだ……うーん、どこぞの野菜王子かな??
「ところで今更だけど、たっくんって浦桐さんのどこがよかったの?」
朝倉に聞かれて、そうだなぁ……と省みてみる。
「一緒にいた時間が長いっていうのもあるけど、一番になりたい!とかVで有名になりたい!とかもそうだけどやりたい事や目標をはっきり主張する子だったから、かなぁ」
「ふーん?」
朝倉がいつものダウナー気味な表情ながらも興味深そうに言っている。
「俺が子供の頃に事故にあったってのは話したと思うけど、それ以来人間はあっけなく死ぬんだって思って目標とかが見つからなくなっちゃったんだよ。そんな俺からしたら姫子は眩しく見えた。だから俺は姫子の手伝いをするのが……楽しかったんだ、と思う」
「たっくん…………悲しいね」
なんか朝倉が悲痛な表情をしながら、蟹みたいな巨大メカにのって一般市民虐殺した後の女パイロットみたいな事言ってる。いや、純粋に悲しんでくれてるんだろうけどネ。うーん、そうだなぁ、悲しい、かもしれないけど俺なりの考えを主張しておこうかな。
「俺には夢がない。でもな、夢を手伝う事は出来る」
「ねぇたっくん、もしかして狼の怪人に変身できたりしない??」
俺の言葉にすかさず朝倉が反応してきたけど……どうだろう。試したことないからわからん。
「……たっくんのそういったところがいいように利用されてたんだね。
心の傷、っていうのは仕方ないけれども、自分の空虚さを他人で埋めようとしたその相手が良くなかったのかもね。……浮気と暴力許容はまた別の問題だとしても」
話を聞いていた草鹿さんが復活してる、良かった。
「たっくんが笑顔になれるように、それにたっくんの夢が見つかるように……これからは、一緒にいるからねっ♡」
「それは……どうも?」
そういえば草鹿さんがなんで俺に構ってくれてるのかもよくわからんのだよなぁ。なんだかなし崩し的に草鹿さんと一緒にいるようになってて……それが嫌な訳ではないし、気がまぎれるから感謝してるんだけど。こういうのって理由を聞いてもいいのかな?
「あ、まだソシャゲのデイリーまだだったわ」
俺が草鹿さんに話を振ろうとしていたところで、朝倉がそういいながら空になったプラコップをどけて、胸の上にスマホを横置きしている。ちなみに疲れたのかその状態のお山をテーブルにのっけている。あまりにも高校生男子には刺激的な光景である!!
「あはは!大きい!彗星かなぁ?違うよね~。彗星はもっとバァ~って動くもんね」
おっと甦ったばかりの草鹿さんが哀しみの果てにまた精神崩壊してしまった。美人さんなんだし気にしなくてもいいと思うけどなぁ~。
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