第4話 俺は歌い手☆鉢山紫苑(前)~人生勝ち組宣言【まさお視点】

 俺は今ノリにノッてる歌い手、鉢山紫苑。……本名は岩井まさお、名前は漢字ではなく平仮名でまさおだ。そのせいで子供の頃は散々イジられた思い出があり、どいつもこいつもまさお、まさおと小馬鹿にしながら気安く呼びやがるのが気に入らなかった。だから俺は―――俺の名前が嫌いだ。

 俺は親につけられた名前は気に入ってなかったが、背の高さと歌のうまさを与えてくれた事には感謝していた。

 これは親父がそれなりの規模の会社を経営していて裕福だったことで、玉の輿狙いの母親が美人だったこともあるんだろう。なので、人よりリッチな家で育った俺は、ママにお願いして早いうちからゲーミングパソコンを買ってもらって充実したゲーム環境が整えられていた。

 そんな中で中学ではクラスの奴らにいじられたりしまくるのが嫌になって不登校のまま卒業した。そして寄付金パワーで進学した私立高校も学校に馴染めず中退をしてクソ親父は怒っていたが、ママがかばってくれて通信制高校に通うということで事なきを得た。

 そうして大手を振って家に引きこもれるようになったので美容室に行ったりしてイメチェンし、ママに頼んで防音室を作ってもらって、顔だしのゲーム配信をしたり、生放送をしてファンを増やしていくのに没頭した。人にチヤホヤされると最高に自己肯定感が満たされて最高の気分だったからだ。


  そして歌い手活動をはじめると、SNSでもファンの女子がキャーキャー言って知名度が上がり、有名になり、フォロワーやファンが増えるほど簡単にファンをつまみ食いできた。あっさりと童貞を卒業したし、あとはパクパクですわ!まさに永久機関を開発しちまったぜええええええ!!ってワケ。


 というわけで俺はヤリまくりセフレコレクションを形成し、毎日違う女を抱けるくらいになり、ついには個人Vの中でも古参で最大手の“結弦レン”の中の人を口説くのに性交……じゃなかった成功した。レンは結構可愛かったしいい身体をしていたのもあるが、相手も有名人で、何万人ものファンがいる女を抱いてるという事はオスとしての優越感と満足感がハンパなくてヤバかった。ちなみに俺が初めての男じゃなかったが、Vやってるっていっても成人してるしそりゃそうか。だがレンは金も持ってたし、適当にいい感じの場所でいい感じにコクって彼女にしてやったら泣いて喜んでた。


 ……だが、それでも足りなかった。俺、イケてるし。もっとイケるんじゃね?おれの股間の団長も、止まるんじゃねぇぞって俺に語り掛けてきている気がする。

 だから俺は個人Vのつまみ食いを続けた。狙うのはまだ世間に擦れてない若い年頃のVだ。プロフに俺のファンとか書いてあったら要チェックや!顔出ししている子は容姿をチェックして、口の軽さや性格もよく吟味して合格ラインなら確定演出!裏垢を使って誘い出して俺のコレクション入りよ、くぅ~、たまんねぇ。   

 どの女にも、君だけだよとか内緒だよとか適当にいっておきつつ、念のために色々と“撮影”しておけば口を滑らせられることもない。PCには順調に女との動画ファイルが溜まっていったが、俺マジで賢すぎる、天才だわ〜、学歴なんかやっぱり飾りじゃね?


 その間も歌い手としてのネームは大きくなっていきメディアへの露出も増えてきたが、その間に、また個人V大手の女“夜野キララ”と知り合う事が出来た。もちろん即抱いてやったぜ!シコシコとスパチャを送ってる養分たちごめんねwwwwwwお前らがひもじい思いして生活費削って必死にスパチャ送って、コメント読み上げてもらうの喜んでる間に俺は生で抱いてるからwww!!とはいえ避妊薬飲ませてアフターフォローは忘れない完璧なのが、しおたん様だぜ。ちなみにキララも初めてではなかった。Vtuberも人間なんだよ裏では普通に彼氏とかいるよなぁ。

 ファンなんてのは金吸い上げる養分しかねーんだよな、有名人と付き合うには自分も同じフィールドに勃つ……じゃなかった、立つしかねぇんだと学んだ。俺は弱者男性とは違う、おれは強者でありつづけようと心の中でマウントをとるのであった。


 幸い、レンもキララも俺の言う事には従順だったので、二股するのも簡単だった。

 適当に歌い手活動してるとか実家で収録してるとかいっておけば疑わないから便利な奴らだ。ママにもらえるお小遣いや、配信の収入をつかわなくてもレンやキララに言えばお金なんてすぐでてくるようになった、もう完全に我が世の春が来たなこれ??

 俺は動画の収録は家でするがそれ以外はレンとキララの家に転がり込むようになった。あとは日替わりセフレライフ。モテまくりハーレムとか俺、ラノベとか漫画の主人公じゃね???


 最大手のVを続けて落としたので一種の達成感のようなものがあり、文字通りヤリ切った満足感もあった。ただ、だからといって俺の性欲は止まらねぇ。まだみぬいい女への冒険心、そう、憧れは止められネぇんだ!!というわけで趣向を変えて中堅個人V、それもSNSをよく観察して男の影がありそうな個人Vをハメるのを始めたらこれが中々面白くてハマった。


 歌ってみたならぬ奪ってみた、歌い手ならぬ奪い手ってねwwwwww!


 趣味で個人Vをやってるような女の中には男の気配がする奴もいるんだけど、そういう女を口説くのってマジで最高だった。スる時に彼氏の名前を言わせて謝らせながらハメたり、彼氏と俺どっちがいいか言わせながら抱くのって人の女を奪ったっていう征服感で脳内麻薬ドパドパ。人の女を寝取るのって最高に面白いんッすけどwwwww絶頂が止まらねンだわwwww


 ―――とかやってたら、なんか蝶野アシェルとかいう俺のコレクションのセフレの一人の幼馴染が俺に絡んできた。うぜーので適当に脅しをかけてからアシェルとヤリまくってから家に帰る途中の夜、俺に暴力振るわれたとかいってさっきの俺の動画がネットに拡散されてた。

 しかもインフルエンサーが絡んでるので一時間もたたずに日本トレンドいりとか完全に犯罪だろこれ。折角俺がわかりやすく教えてやったってだけなのに、盗撮とか犯罪だしこんなの警察に通報して訴えるしかねえじゃんバカガキがよ。そもそも女を寝取られるマヌケが悪いし、彼氏がいるのにホイホイ抱かれて処女捧げちまうような女が原因だ。俺は悪くねえ!


 明日は一度実家に帰ってママにあのクソガキを訴えてもらわなきゃいけねえ、めんどうくせえ。そう思いつつ今日はもう遅いしレンの家にヤリに泊まりにいくと、もぬけの殻だった。

 どういう事かと思ったが、まぁ他にもセフレはたくさんいるし他にも金持ってる女はキララがいるし問題ないなとキララの所に行ったらレンとキララと、もう一人、知らない女が俺が来るのを待ちうけていた。


「来ると思っていたわよ女の敵」


 知らない女が俺を睨みながらそう言ってくる。レンとキララは涙目になっているけど、あれ?あれれ?


 ―――――えっ、どういう事なの?なんで、レンとキララが一緒にいるの?えっ?えっ?もしかして、二股バレてる?????

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