第20話 早乙女汐音Ⅱ
魔法陣の中から、光の粒子と共に現れた彼女。
「ただいま、随分騒がしいようだけど何が起きているのかしら……——って、あれ? お客様……ではないみたいね」
俺はソイツが目当ての人物だと直感的に分かった。
白銀の甲冑を身に纏い、背中に天使の羽を生やした騎士。
「二人とも、大丈夫?」
彼女は二人のメイドを交互に見てから、腰の剣を引き抜いた。
勿論、俺に切っ先を向けて。
残念ながら彼女は俺が誰だか分かっていない。まあそりゃゲームの中の世界なんだから当然だけど。
一刻も早く俺の素性を明かさねば。
「アンタがシオンだよな。オレオレ、みな――」
そんな風に迂闊に話しかけたのが良くなかったのだろう。
彼女の剣が陽射しを反射してキラリと光る。
だが、それは光ではなかった。
――――――――――――――――ッ!
「――い?」
光を遮るために腕をあげたはずなのに、全身が切り刻まれるような痛みに包まれる。
バトルログには俺の体力を削るログが一気に表示されていた。
「――ってぇッ!」
ノーモーションで繰り出される無数の斬撃。
あれはスキルでもなければ必殺技でもない、――ただの武器の一振りだ。
彼女は腰まで伸びた艶やかな黒髪を一度手で梳いてから、俺に告げた。
「……どこの誰か知らないけど――死んでくれる?」
早乙女汐音。あの脳内ピンクまみれ黒髪美人の登場だ。
だというのに、脳内ピンク要素が皆無! 寧ろ真っ赤だ! 容赦なく斬り付けられそうだよ!
「――っ」
ドクン、と心臓が脈打つ感覚。
すぐに素性を明かせば良かったのだが、
久々の痛みが、ダメージが、
俺の矜持を意味もなく引きずり出す。
――倒したい。ぶちのめしたい
――強い奴だ。こいつは強い奴なんだ
湧き上がる拍動が、俺の思考を野性的に変えていく。
「――っしゃ。じゃあやるか。シオン」
「――っ、気安く呼び捨てしないでくれるかしら。虫唾が走るわ」
シオンは剣を強く握りしめ、振りぬく構えを見せた。
まさしく、必殺の構えという奴だ。
「其は、太陽の化身。闇を照らし、光導く宝剣にその力を宿せ! ――
「……へ?」
最上位武具「
生で見るのは初めてだった。
そんな技を、彼女は放とうとしているのだ。
――私と同じ初心者だから丁度良いかなぁって――
宇垣の野郎……これのどこが初心者なんだよッ!!
眩い光と共に、灼熱の斬撃が熱光線が如く無数に繰り出された。
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