第18話 チーム結成?

「――やるからには、勝つぞ」


「……へ?」


「GvGはな、無茶苦茶面白い。死ぬほどハマる、間違いない。でもそれには条件がある」


 口をポカンと開いた宇垣に畳みかけるように、俺は続ける。


「楽しむには勝つしかない、敗者には悔しさしか残らない。それがGvGだ」


 EUの楽しさを極限まで絞り尽くした世界。それがギルド対抗戦。


 自分のペースで一人遊ぶのが「楽しいプレイ」だとするのなら、ギルド対抗戦はその対極に位置している。

 ただの一人が戦況を変えることはできない、だからこそ結果に意義が産まれる。


 それが俺の知るギルド対抗戦だ。


「い、いいの? 無理やり誘っちゃったのに」


「……友達フレの頼みだ、仕方ない」


友達フレ……湊くんが私のことフレって言ってくれたぁっ! やったー! これがセフレってやつ!?」


「違うわ!!」


 腕を振って喜ぶ宇垣の脳みそも大概ピンク色のようである。

 本人は言葉の意味もわかってなさそうだが。


「そうと決まれば特訓だ。つっても楽しくない特訓はつまらんからな、少しメニューを考える時間をくれ……あーあと、あの奇天烈な二人とも話つけとかねーとだな。大会はいつだ?」


「えーと、2週間後とかだったかな、確か」


「思ったより短いな。早速スケジュール調整からやるぞ、宇垣」


「らじゃー!」


 二人はしゃぎながら作戦会議をしながら、俺は別の方向に思慮を巡らせていた。


 そもそも、このタイミングでのギルド対抗戦が開催されること自体きな臭い。

 竜の眼なんてアイテムを景品にしてまで参加者を募る必要性がどこにあるのか? そんなもの無くても参加したいEU好きは参加するわけで。


 竜の眼を持っていないプレイヤー――いわゆる俺みたいな古参――をおびき出すための罠だとしたら? その目的は? 首謀者は?


 ……なんて、流石に考えすぎか。


「ねぇねぇ湊くん見てよ~私の配合ステータス、結構頑張ってるんだからねっ」


 不安をよそに楽しそうに笑う宇垣を見て、俺は何処か安心していた。


 ◇


 すっかり暗くなってからの帰り道。

 宇垣は今夜もルンルンだった。 


 ちなみに彼女はバスケ部らしい。ノースリーブのユニフォームを着て走り回る宇垣の姿を想像すると、なぜかよくないことをしている気分になる。


「――あ、そうだ湊くん。昨日聞けなかったことなんだけどさ」


「なんだ?」


「なんであの日湊くんは杏を助けてくれたの? 二人って友達だったっけ?」


「ん、あぁ、まあ色々事情があってな。別に友達じゃねえけどクラスメイトの危機は見過ごせない、的な?」


「え~? 湊くんってそんなこという人だっけ? あっやし~もしかして杏のこと狙ってるの? やらし~エッチだぁ~」


「ったく。そういうんじゃねえよ。大体俺は……」


「……俺は?」


「――……あ、超絶メタルドラゴンレイドやってるぞ、経験値稼ぎチャンスだ」


「――え、ほんと!?」


「練習がてら一緒にいこうぜ、俺経験値ブーストかけるから」


「なんかすごいはぐらかされた気がするけど、有難くお供させていただきますぅ~!」


 俺にはまだ宇垣に話していない秘密がある。

 それはあの日——俺がきのぼうで暴漢を撃退し、倉西杏に接触した日——のこと。

 そう、の話だ。

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