第16話 ギルド対抗戦へのお誘い
「ギルド対抗戦だぁ!?」
夕方のファミレス。
怯える宇垣が口にした言葉に驚くあまり、俺は立ち上がってしまっていた。
「――っ」
周囲の訝しむ視線を感じ、急いで座り直す。
いかんいかん。
宇垣は「うん」と申し訳なさそうに頷いてから、続ける。
「最近知ったんだけどEUの醍醐味なんでしょ? ギルド対抗戦……GvGって言うんだっけ? あれに参加してみたいなぁって思って……」
「グループ対グループ」で、GvG。
格闘ゲームとかでよくある「1対1」ではなく「集団対集団」の対戦形式。大人数でのマルチプレイを前提とするMMORPGでは比較的人気コンテンツになりやすい。
それはEUも例に漏れず、プレイヤーが自由に設立できるグループ「ギルド」単位で行われる戦闘が「ギルド対抗戦」と呼ばれるコンテンツとして人気を博している。
特典が用意される公式大会をはじめ、重要拠点を奪い合う争奪戦、交流や力試しを主とするフリー大会など開催形式は様々だ。勿論対戦形式も千差万別。
まあ簡単に言えば、EU内における小さな戦争みたいなものである。
そんな恐ろしいコンテンツに手を出そうとしている宇垣。
だめ、そこから先は地獄よ。
「間違ってはねえけど……どうしてそこからあの奇天烈な二人が出てくるんだよ……」
脳内をピンク色で汚染された黒髪美人と裏垢持ちメンヘラギャル。
いずれも宇垣の友達なのだろうか。
「汐音ちゃんと京香ちゃんのこと? 部活友達なんだけど、声かけたら乗り気になってくれて私と同じ初心者だから丁度良いかなぁって。で、その流れで湊くんの話題を……」
「俺がEUやってることを広めるのは止めてほしいが、それより気になってるのはあの二人のその、なんていうか……ぶっ飛び具合というか……」
「ん~そんなぶっ飛んでるかなぁ……——あん、こぼしちゃった♡」
言って、宇垣は頼んでいたバニラアイスを食べようとして胸元にこぼす。なぜか彼女の制服は第二ボタンまで開けられており、その魅惑の峡谷に白い希望が沈み込んでいく。
……こういうとこなんだよなぁ~。
「……類は友を呼ぶってことか……」
「へ? なんて?」
「なんでもない、話を戻そう。経緯はある程度分かったが、なんだって急にギルド対抗戦に参加することになったんだ? 公式大会でもあるまいし……」
EUの公式大会は基本的にクリスマスから大晦日にかけての年末に集中的に行われる。重要拠点を奪い合う「争奪戦」には初心者の宇垣が参戦できる訳もなく……となると宇垣の言葉が指すのは、特別恩恵のないフリー大会ということになる。
俺の推測に宇垣は頷く。
「でも、ただのフリー大会じゃないんだよ? ウチの学校のゲーム部が主催らしくて優勝ギルドには豪華景品が出るんだって~中身は確かなんだったかなぁ……うーん、竜のアギト……じゃなくて……あっ! 思い出した! " 竜の眼 "!」
「竜の眼……」
脳裏に刻まれたそのレジェンダリーアイテムの名を、俺は知っている。
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