第9話 幕間

「あ、湊くんのアバターレベル100超えてるじゃん、すごーい」


「まあやればレベルは上がるからな、大したことじゃない」


「えー? ほんと? 前フレンドに聞いたけどアバターレベル100超えは猛者しかいないって――」


「敵来るぞー、集中してくれ」


「――む、なんか怪しいなぁ。まあいっか。――えいっ」


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『ワカノの詠唱魔法、シューティングスター!

 オークに557のダメージ!

  オークを撃破

 食人植物に820のダメージ!

  食人植物を撃破』

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「――やるじゃん。ナイス」


「ううん、私下手くそなんだぁ。今のももう一体敵をターゲットに入れないと最大ダメージ出ないんだってフレンドがよく――」


「――良いの良いの。効率やプレイングも時には大事だが、何よりもまず楽しもうぜ。ほら、俺が挑発しとくからもう一丁ぶちかませ」


「あ、ありがとう……じゃあお言葉に甘えて……おりゃっ」


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『ワカノの詠唱魔法、コメットバースト!

 詠唱チェインが発動。魔法力が上昇する

 ゴブリン兵長に1209のダメージ!

  ゴブリン兵長を撃破

 ゴブリン指揮官1に1145のダメージ!

  ゴブリン指揮官1を撃破

 ゴブリン指揮官2に1112のダメージ!

  ゴブリン指揮官2を撃破』

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「良いね、3体同時撃破で実績解除だ。詠唱チェインの上限が解放されるからさらに使いやすくなるはず」


「わ、ホントだ……もしかしてこれを狙って?」


「狙ってって訳じゃない。……宇垣の使ってる詠唱魔導士は魔法を出せば出すほど、チェインが発動して精度が上がってくようになってるんだ。だから失敗を恐れず数撃つのが大事って訳。なんか、慎重に動きすぎてるような気がしてな。味方への誤射なんて恐れずガンガン魔法振ってくれていいぞ」


「慎重……」


「ん? どした」


「ううん、湊くんの言う通り慎重、てか縮こまっちゃってたかもなぁって……パーティ組んでも、結構ミスを指摘されること多くて……えへへ……やっぱ私向いてないのかな詠唱魔導士」


「それは違うぞ、宇垣」


「え?」


「ゲームに向いてる/向いてない、なんてないから安心していい。大事なのはことだ。向いているってのはそういったポジティブな感情の極致にあるものだと思っていい。最大限に楽しめるプレイスタイル、それが宇垣にとっての" 向いている "になるはずさ」


「自分なりに……楽しむ……」


「あぁ。それが一番大事だ……その、なんだ、サポートはするから、うん。あ、もちろん俺と一緒にやってくれてるときはだけど……」


「…………」


「わ、わるいっ、変なこと言ったな。忘れてくれ今の。とにかく宇垣なりに楽しんでくれれば良いんだって言いたくて……——って、宇垣?」


「……やばい優しい……」


「……んんん? なんて?」


「い、いやなんでもない、あ、敵来た!! 助けてM様!」


「――またはぐらかしやがって――ってマジで敵一杯来てるぅぅぅぅぅっぅぅぅぅっぅぅ!!! ヒール! ヒールくれ宇垣! 連戦は予想外だ!」


「え、ええとヒールヒール……あれ、どれだっけ」


「死んじゃうウうううう俺のよわよわジョブスキルじゃ死んじゃうううううう」


「あわわわわ、ええっ、もう、きのぼう+9999使ってよ、焦っちゃヒールもできないよ」


「いやハメられれてる身動き取れないいいいい!!!」


「も、もー! 頼れる感じだったのに急に情けなくなってるじゃんかぁ! あ、ヒール、これかな! えいっ!」


「――あ。宇垣それ――」

「――え?」


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『ワカノの詠唱魔法、フルチャージバースト!

 詠唱チェイン∞が発動。魔法力が大きく上昇する

 ウッドデビルに2309のダメージ!

  ウッドデビルを撃破

 ゴブリン隊長に2345のダメージ!

  ゴブリン隊長を撃破

 M1212!』

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「あぎゃあぁああああああああああああああああああ!!!!! 燃えてるうううううう!!!」


「ご、ごめん湊くん! 今度こそヒールを――あれ?」


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『ワカノの詠唱魔法、トライデントフレイム!

 コウモリ男に1102のダメージ!

  コウモリ男を撃破

 Mに誤射。809のダメージ!』

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「ナイス……トライ……だ……」


「湊くうううううううううううううううううううううん!!!!!!!!」



『以下の実績を解除しました

 

 " 苦渋の決断が導く勝利 " 』


 

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