第八章:入院。

07/23日


夏休みが始まった。俺は廃人になってしまった。母が様子がおかしい事に気づき、気晴らしに散歩でもして来たら?と、提案してくれたので、散歩に出掛ける事にした。


何も考えないようにして、のんびりと散歩を楽しんでいた。いつもと変わらぬ景色も良く見てみると多少の違いがあり、見ているだけで楽しかった。


大通りを散歩中、横断歩道を渡っていた。


何かの違和感を感じ取り、横を見ると、猛スピードのトラックがこちらに突っ込んで来ていて、俺は避けられずにそのまま跳ねられ、救急搬送された。


目が覚めたのは一ヶ月後の昼頃だった、夏休みはもう、終わっているだろう。


(ここは何処だろうか…)


近くに居た母が俺を見て驚いた、母は慌てて部屋から出て行った。少しして、母が白い服を着た人を連れてやってきた、そうか、ここは病院…、あの人は医者なのか…。


医者とまた部屋から出て行った。何やら頭を打っただけで済んだことが奇跡だとか、レベル4まで進行していて、長くは持たないだろうだとか、良く解からない話をしていた。


しばらくすると、母が告げた。


母「涼哉、落ち着いて聞いてね。トラックに轢かれた事に関しては頭を打っただけで済んだけれど…色々調べてもらった結果、涼哉の膵臓に癌が見つかって、発見したのが遅くて…恐らく後一年しか…生きられないそうなの…。もう少し早く見つかっていれば…。」


泣きながら母は、俺にそう告げる。唐突に言われたので、理解が追いつかなかった。しばらくして、やっと話が理解できた。


俺「え?俺死ぬの?マジかー、まあ、人生、何があるか解らんし、しゃーなし、しゃーなし、あぁ〜、楽しい人生だったァ〜。」


母を不安にさせなまいと、俺は明るく振る舞った。しばらくしてから、父、兄、妹がやって来た。


俺「おおー!!見舞いに来てくれたのか!!嬉しい!!ヒャッホーイ!!」


俺だけテンションがおかしかった、暗い空気の中、俺一人だけハイテンション、ただのアホである。


父「何かしたい事があれば、お兄ちゃんでも、妹でも、遠慮なく、言うんだぞ。絶対やってくれるから。」

俺「じゃあ、一つ良い?」

父「何だ?言ってみ。」

俺「学校に行きたい、リモートでもいいから、皆に会いたい。」

父「じゃあ、先生に掛け合って来てやる!。」

俺「マジ!?あざす!!」


学校に行けるようになり、嬉しさが込み上げてくる。翌日、リモートで、登校した。

今日の日直は俺だとの事で、朝の会をやった。


休み時間、皆が集まって、話をしに来てくれた。色々話して、大事な事を思い出し、浦三に聞く。


俺「宝城さん何か言ってたか?」

浦三「特に何も。」

俺「入院してんの知ってる感じ?」

浦三「いや、誰も言ってないから、知らないと思う」。

俺「そっか、良かった。一応黙っといて、心配掛けたくねぇから。わりぃな」

浦三「おう、分かった。任せとき。」


話をしていると、宝城さんが遊びに来た。気まずいので、浦三に頼む。俺「浦三!!!隠せ隠せ!!」間に合わなかった。結局、見つかってしまう。宝城先輩「磯島君…?」

俺「やっほー、宝城さん、元気ー? 」

宝城さん「……」


喧嘩していたのを忘れていた。


俺「あ…その…あの時は、ごめんなさい。本当に、言い過ぎですよね!?本当に、ごめんなさい!!」

宝城さん「…私の方こそ、色々、ごめんね…。」俺「全然!!元々俺が悪いんですから。」「ところで、今日は何でリモートでの登校なの?」

俺「え?あぁ、膵臓癌が見つかって、入院してるんです。」

宝城さん「え!?だ、大丈夫…なの?」

俺「正直、微妙っす。余命宣告もされてて、後一年しか生きられないとの事らしいです。」

一同「え!?」

浦三「おい、聞いてねぇぞ!!」

晶光「どういう事だよ?」

俺「まぁまぁまぁ、落ち着けやw。驚き過ぎだってww、まぁ、でも、無理もないか。」

…………………………………


しばらく沈黙が続いた後、浦三が聞いてきた。


浦三「…てか、一年って事は…先輩の卒業式に出れるのか?」

俺「先ずそこかよw?宝城さん卒業式、出たいの良く解ったなw、勿論出る。何としてでも見に行かせてもらう。」

宝城さん「え?私の卒業式の心配?…そんな事より、自分の心配してよ!!」


一気に場は明るくなったると同時に、皆俺の死を、悲しんでくれた。


俺「そうだ!!先生居る?」

先生二人「居るよー。」

俺「明日の生活単元、俺のお見舞い来るって授業をしましょうよ!!」

先生二人「ブッ…良いね!!じゃあ、校長先生に掛け合ってみるよ!」

俺「え…?本当に良いんですか!?ありがとうございます!!嬉しいです!!」

宝城さん「私も行きたいです!」

緑川先生「じゃあ、よく相談しておくね。」

俺「ありがとうございます!!交通費はこちらで払うので、お気になさらず!」

扇蛾先生「いや、流石にそれは…」

俺「来てもらうんですから、当然です!!」


先生は俺の様子を察して、明るく振る舞ってくれた。


あれから、先生方、親御さんで話し合い、許可か降りた。次の日の生活単元、本当に、皆は来てくれた。


先生や友達、宝城先輩が、お見舞いに来てくれる。


俺「お、来てくれたか。やったぜ。」

母「来てくれたんだから、先ずお礼でしょう?」

俺「おぉ…そうだったそうだったw。ありがとな!!」

浦三「…こうして病院内で見てると…やっぱ…闘病中なのが伝わって来るな…」

晶光「…本当に…死んじゃうの?」

俺「うーんと…どうだろーなw、まぁ、多分、死ぬんじゃねw、医者も手遅れだって言ってたし。」

宝城さん「やっぱり、明るいね…」

俺「✌」


皆、俺の話を聞くなり、泣き出してしまった。


俺「お〜い〜w、泣くなって〜w、しょ〜がないじゃぁ〜ん?都合の良い用に現実は変えられないんだからさぁ〜。」

宝城さん「さすが…磯島君、元気…だね…。」

俺「まぁ…そうですね〜。何があっても、明るく生きていた方が楽しいじゃないですか?」

宝城さん「そうだけどさ…」

俺「それに、こうして、ここに来て下さった皆さんみたいな、友達ができ、楽しい環境ができ、笑って、泣いて、喧嘩もできた。明るく生きていたからこその友達、人生。嬉しいです!!」

宝城さん「…そうだね!!そうだよね!!流石磯島君!」


俺は涙を堪えるので精一杯だった。


母「変わったね…涼哉。」

俺「まぁね〜い。」

宝城さん「…でも…本当に…しょうがないで済ませていいの?」

俺「…!?え?あ、あぁ…事実ですから!短い人生も悪くなかったですし!!」


痛い所を突かれ、俺は焦った。


浦三「…何ヘラヘラしてんだよ!!…涼哉が良くてもなぁ…俺は…俺達は嫌だよ!!絶対、皆もそうだろ!?」

一同「コクッ…」

浦三「答えてくれよ!!本当は、辛いんじゃないのか…?苦しいんじゃないのか…?強がってないで、お前の心の底にある本音を聞かせてくれよ!!」

俺「………お前等の為を思って黙ってたのに…何だよその言い方、…あぁ!!そうだよ!!しょうがないとは思いたくねぇよ!俺だってなぁ俺だってなぁ…、まだ…まだ死にたくねぇよ!!でも、どんなに頑張ったって、無理なものは無理なんだよ!!現実は変えられない。そうだろ、なぁ?…いつもの何気ない日々が、俺は大好きだったんだ!!、幸せだったんだ!、でも…こんな事になった。だからこそ、辛い時にこそ明るく、元気に、前向きに生きているんだよ!!…それにな、友達を作る夢、今、こうしてお前達が叶えてくれたからからこその恩返しで、お前らを悲しませねぇように、いつも通りに接しているんだろうがよ!!。…もっと…もっと…もっともっと…生きたかったよ…。皆ともっと遊びたかったよ!、話したかった、笑い合っていたかった。俺だってよ、本当は死にたくねぇよ!!…本当に、死にたく…ねぇんだよ…。……俺の本音は全部吐いた、これで満足か?なぁ?お前らの為にこの気持ちを隠してやってたのによぉ…、ふざげ…(ベチン!!)」


俺がキレた後、突然大きく、鈍い音が室内に響き渡る。


そして、俺の頬の辺りが激しく痛んだ。


宝城さん「…ふざけないでよ!皆あなたの事を心配してくれてるのよ?なのに何でそんな態度を取るわけ?私も悲しいよ?、皆も悲しいんだよ?ねぇ…。だからさ…自分の辛い気持ちを隠さないで、怒らず、全部…落ち着いて教えてよ、隠されても皆嬉しくないよ、ね?それと…、ぶったりして…ゴメンね…」


その言葉に、俺は涙が止まらなかった。嬉しい。


しばらくして、帰る時間になり、皆は帰って行った。


夜になり、俺はこんな事を考えていた。俺「いつ死ぬか解らない。ちゃんと遺書、書かないとな…」


そこから、生活単元を使って、お見舞に来てくれた。遊んで、話して、笑って、お見舞いに来てくれた数日を思いっきり楽しみ、退院の日を待ちわびた。


第八章(終)

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