幕間【神鳴、人智にて解明せし事】・ショウタイの変

 皇紀一五六一年のこと

 

 時の左大臣・藤原ふじわらの時平ときひらは、右大臣・菅原すがわらの道真みちざね讒言ざんげんを帝の耳へと吹き込んだ。

 

 菅原道真並びにその仲間が、天皇の周りの役職を固めるのを良しとしなかったためだ。あることないことを並べ立て、彼を宮中の外に追い出す。

 それが藤原時平の望みであった。

 だが、帝は首を横に振る。


「嘘をついているな」

「何をおっしゃいます」


 隣にいた従者が、そっと耳打ちをする。


「しっかりといるのだ。藤原家の地位を盤石とすべく、お前が右大臣を追い出したいという強い野心を持っておることに……この件には、きちんとした処分を申し付ける」


 その後、藤原時平は大宰府へと左遷される。

 九州という都から遠く離れた僻地にて、失意のまま病没した。

 対して菅原家は、多種多様な学問に秀で、帝が何代にも渡って重要な職を与えて寵愛した。

 

 現在でも、菅原家は宮中の重要な職務に就く者、都の大学にて教授となる者もなど、優秀な家柄は健在である。

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