06.自分の誕生日に無関心なオジサンの気持ちが分かった

誕生日を迎えた。

今日、24歳になった。


23歳は人としての成長が何一つない。

空虚な1年だった。




いや、記憶にないだけで、

掘り返せば色々新しく経験したことがあるのではないか?

昨年の2月17日から振り返ろう。


そう思い、スマホのアルバムを開いた。




-2023年2月-

大阪の実家に帰省したタイミングで

1番の友達と11年ぶりにUSJに行った。


僕はコイツのことを1番の友達と思っているが

相手が僕のことを1番の友達と思ってくれているかは甚だ疑問である。

10番目以内には入っていたいものだ。

そもそも友達に順番なんてつけてる奴じゃないかもしれないが。


-2023年8月-

ラランドのサーヤのトークライブに行った。

面白かった。


-2023年11月-

私服でネクタイをつけるようになる。

セットアップ×ネクタイにするだけで

「ファッションを楽しんでいる人」と見てもらえることに気づいた。




以上だった。


それ以外にも小さなイベントはいろいろあったが

その9割が地元大阪での写真だった。


つまり東京に来てからの新しい楽しい出来事が何一つないのだ。


それなら大阪に帰ればいいじゃないかとも思うのだが、帰ってしまうと働く意味がなくなってしまうのでまずい。


僕が今働いている理由は「生活費を稼ぐため」だけであって、それ以外特にないからだ。

大阪に帰ってしまうと「実家」という最強のセーフティネットがあるせいで仕事を辞めてしまうのは目に見えている。




哀れな1年だ。

新しい出会いも、趣味も求めず

昨日なんてFODでめちゃイケを見て笑っていた。

結局僕はずっと「あの頃」に戻りたいだけなんだろうな。




いかんいかん、うどんが伸びてしまう。


話が変わるが、

僕は子供の頃、自分の誕生日が楽しみで仕方がなかった。


2月になった時点で毎日ワクワクしたし、

誕生日の1週間くらい前から

「既に家のどこかにプレゼント隠されてるんじゃないか」と探していたこともある。

(見つけられたことは1度もない)


間違いなく、親に愛されて育った自信がある。




そんな僕は子供の頃

父さんが自分の誕生日に無関心なことが全く理解できなかった。


大学生の頃にネクタイをプレゼントすると

「お、おぉ」と言いながらカレンダーを見て

「そうか。今日か。ありがとう。」と一言。


母さんだってそうだ。

「明日誕生日だね」なんて言うと、

「え、明日!?そっか…」と


まるで自分の誕生日が近づいていることに気づいていなかったような反応である。




ずっと不思議だった。


なぜ自分の誕生日に興味がないんだろう。


高校生の時にバイト先のオジサンに聞いてみると

「興味なくなるんだよ。」と笑っていたのを思い出した。


なぜ興味がなくなるんだろう?

と、ずっと不思議だったのだが

僕は去年の誕生日に気づいてしまった。





2023年、2月17日。


いつも通り暗い部屋で、1人で在宅勤務。

一言も発さずに仕事を終え、

「まぁ、せっかくだし」と思い

コンビニでケーキを買ってきた。


なんともくだらない、クソみたいな誕生日である。


ここで気づいた。

「そりゃ興味なくなるわ。」と。


祝ってくれる人の数は減り、

誕生日が他の日と全く変わらない一日になる。


「これか。」と思わず口にした。




それから1年が経ち、今日である。


僕は今、部屋で1人

冷凍うどんに白菜とにんじんを入れて啜っている。


特に予定はない。

スマホで漫画を読むか、FODで何かフジテレビの過去のバラエティを見るか、アダルトビデオを見るかの3択だろう。




ここまで書いたところでインターホンが鳴って驚いた。

実家の母から誕生日プレゼントに

僕の欲しがっていたポリエステル素材の白シャツが届いた。

僕はポリエステル素材の服が似合う (と思っている)




なんだ。

ちょっとだけ他の日と違うじゃないか。

ちょっとだけ特別な日になってしまったじゃないか。


本当に気持ち悪い話だが、

僕は頻繁に死にたくなっていることすら

僕のアイデンティティの一部だと捉えていて、

ネガティブな感情の上から明るい色をペンキ塗りされると

その画用紙をビリビリに破りたくなる。


多分、人はこれを「厨二病」と笑うんだろうな。

おれは小学校高学年からずっと「死んでしまいたい気持ち」と戦っているのに。


ポリエステル素材のシャツに腕を通し、

コンビニに向かった。


今、信号待ちである。




母さん、おれずっと死にたいんだよ。

でも、シャツはありがとう。


去年食べた小さいケーキは

まだ売られているのだろうか。

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