02.実家に帰省した
盆休みに実家に帰省した。
父も母も喜んでくれた。
母の作るご飯は相変わらず美味しかった。
母は何度か「大阪に帰ってきてもいいのに」
といったニュアンスの言葉を僕に投げかけ、
僕はその度に適当な返事を返した。
僕は実家に帰ってはいけないと思う。
今、仕事をしている理由は「生活費を稼がないといけないから」
実家に住んでしまうと、
これをしなくても衣食住の全てにセーフティーネットができてしまう。
親に迷惑はかけたくないからこそ、親から離れて自立する必要があった。
ある日、父と母と大阪府の熊取町の山奥まで墓参りにいった。
そこには父方の祖母が眠っている。
父の隣で手を合わす。
僕は「熱中症とか気をつけて。倒れないようにね。」と小ボケを呟いた。
いつもの父なら「もう死んでるねん」とか返ってくるはずだったが
いまいち反応が悪く、さすがに不要で無礼なジョークだったことに気づいた。
次の日、母と2人で泉南まで母方の祖父の墓参りにいった。
僕は最近、本当に情けない話だが自殺願望が少しずつ膨らんでしまっている。
苦しまない死に方はないだろうか。
親ができるだけ悲しまない死に方はないだろうか。
兄は僕に「お前は自殺しない」と笑って言っていたが、
果たして本当にそうだろうか。
墓に手を合わしている間、
「事故に巻き込まれ、苦しむことなく一瞬で死ねますように」という
最低のお願いをご先祖様にしてしまった。
何も知らない母と近くのイオンに行って昼食を買う。
母方の祖母の家で食べる昼食はどれにしようか。
母の楽しそうな声を聞いて、とても悲しい気持ちになってしまった。
もし死んだら、この人をひどく悲しませてしまうことになるのか。
それは嫌だな。
祖母の家で1時間くらい話した。
帰り際、僕の好きなお菓子と言いながら、
小学生の頃に僕が食べていたお菓子を渡してくれた。
祖母の中で、僕は小学生で止まっているのだ。
祖母の中で?
本当に祖母の中だけだろうか。
僕は?
僕は僕をどう見ているのだろうか。
ついこないだもDSでイナズマイレブンをはじめからして、クリアした。
トモコレで白石麻衣を作って「似てないな」とかほざいてた。
23歳の僕は、小学生の僕を追いかけてはいないだろうか。
というか、僕だけなのか?
皆あの頃に戻りたくて仕方がないのでは?
ここで僕は衝撃的なことに気づく。
子供の頃に戻りたくてたまらない人は、
現状が楽しくない人だ。
今が楽しかったら戻りたいなんて思わない。単純な話だが、
この酷い現実は僕の心にしっかりと傷を残した。
祖母に「ありがとう」と言うのにとても時間がかかった。
懐かしいお菓子を持ち、車に乗り込む。
母は「これ好きだっけ?」と聞いてくる。
僕は首を少しだけ縦に振った。
「小学生の頃にね。」
結局僕はこのお菓子を食べないまま
東京の牢屋のような部屋に帰ってきた。
母が別れ際に「いつでも電話していいから」と優しく言っていたのは
僕の心に何かを見たからだろうか。
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