第10話 私の苦手なこと
理詰めで考えるのが、苦手なんです。
三段論法なんて、ハナから出来ない。
「鳥は空を飛ぶ」
「ペンギンは鳥である」
「ゆえにペンギンは空を飛ぶ」
そんなのウソでしょ、と思います。三段論法なんて、まやかしに決まってます。
80年代に、わたしが金融会社に派遣SEとして勤めていたころ、この三段論法をもとにしたAIで銀行のシステムを作ろうってことになりました。
三段論法の弱点を、大量の補助プログラムで補佐しようっていうんです。
プログラムに必要なのは、数学的センス。
命令の手順を図に書いて(これをフローチャートと呼びます)、そのとおりにコンピュータへの命令言語を端末にパンチする。
AIでシステムを動かそう、という日本初の試みでした。
そうしてはじまったシステム移行。
夜中の12時を越えても、仕事が終わらなかった。
クタクタになって家に帰り、恋人だった夫にごはんを作ってもらっていました。
「キミは業界用語を覚えた方がいい」
先輩から、助言されました。
銀行のSEさんも派遣社員も、一団になって最新鋭のシステム移行に専念します。
諸届、融資など、おおまかな用語を覚えることになりました。
しかし、派遣社員なので、覚えたことが次につながらなかった。しかも業界用語のほとんどは、忘れてしまいました。
それに、どんなにきちんとした論理的なフローチャートを作っても、コンピュータは動いてくれませんでした。
AIが機能しなかったのです。
のちに、雑誌に「動かないコンピュータ」として取り上げられることになるこの移行作業。
今でも銀行がつぶれたとかトラブルを起こしたという話を聞くと、当時のほろ苦い思い出が胸をよぎります。
SEには、数学的センスと先を読む力が必要。
そして、プログラムに苦手意識があるのは、このせいなのかと思っています。
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