第9話 最近気になること

義母のことが気になります。

 百貨店の中で、迷子になりました。

 ちょっと目を離したとたん、行方不明になって。

 待ち合せのグルメタウンまで行って、待つこと30分。


 来ない。


 降りて行きつつひとつひとつ階をチェック。

 どこにもいない。


神隠しにあったのか、それとも宇宙人にさらわれたのか。

 ボケるには早すぎる82歳。足元はおぼつかなくとも、まだまだ元気な高齢者なのに、どこへ行ったのか。


 もしかして、廊下でたおれている?

 衆人環視のなか横たわる義母の姿を想像して、ひとり青ざめるわたし。


 総合案内所へ急いで駆け込み、受付に

「呼び出しをお願いします」

 二度も呼びだしてもらったのに、反応ナシ。


 受付が顔をくもらせて、「おかあさまの特徴はどうでしょう。もしかしたら、警察に届けた方がいいかもしれませんね」


 警察! 痛くもない腹をさぐられる!



 とりあえず、義母の特徴を説明してから、わたしのスマホ番号を教え、帰宅することにしました。先に義母が帰っているかもしれないからです。


 バスに乗って帰っていく途中でスマホが鳴りました。

 電話の向こうで受付の声。

「おかあさま、見つかりましたよ! 良かったですね、いま代わります」



 よくよく聞いてみると、わたしが先にエスカレーターに乗ったので続いて乗ろうとしたときに、杖がじゃまで足がもつれ、怖くなったらしい。1階をウロウロしていたそうです。



 安心したとたん、脱力してしまいました。

 数週間後、銀行へ行った夫もおなじように義母とはぐれてしまって、町中を探し歩いたといいます。


「二度あることは三度ある。ケータイを持たせても、返答してくれないから意味がない。GPSを持たせることにした!」


 夫は、子ども用の小さなGPS装置を義母に持たせ、わたしと自分にアプリをDL。


 5日はそれを持って、お墓参りと灯籠予約に参りました。

 義母はこれから老いていく一方です。未来に何が待つのか今から不安です。 

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