第50話

第50話


【夢術管理協会/ 竹花楽都side】


長い夢から覚めた時、俺の目の前には赤い血が広がっていた。


「はぁ〜〜〜〜、後輩くんの大馬鹿」


先輩の声が降ってきて、俺は地面に転がされる。


——俺は今、どこにいた?


多分獏の中だろう。


獏の夢術に一瞬取り込まれたのだろう。

千恵里とのやりとりをちゃんと覚えている。


先輩はトントン、と銃の背で自分の肩を叩く。


「めちゃくちゃ痛かったんだけど」


彼女の肩はザックリと裂けていた。

鮮血が滴り落ちている。


俺を獏から引き剥がした時についた傷だろう。


彼女は俺に銃の持ち手を向けた。


「……頭冷やして、決心はついた?」


銃弾をいくつも撃ち込まれたのだろう。

獏の動きは先程よりも鈍かった。


……今なら、殺せる。


「——ええ」


俺はその銃を掴んだ。


ごめんよ、千恵里。


俺はお前を殺すよ。


沙夜子も、藤先生も、お前も忘れない。

全部抱えて、呪われたままで。


——俺の夢術は無い。


俺が間違えて夢の中で協力者盛春に使った夢術だ。

あの時は、盛春が夢術で俺の夢に入っていたのを解除してしまった。


……そう、これは夢術を解く夢術。


お前の呪いを解いて、お前を殺す。

お前の夢を殺す。


それが唯一の「俺だけにできること」だ。




——夢術:ない





「さよなら、一高」






銃を放った。




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