第9話

「メルー、大きいタライってある?」

「?、洗濯用に使っておりますが」

「使ってないタライはある?」

「予備がありますけど」

「貸してくれる?」

「いいですが、何に使うのでしょうか?」

「ちょっとやってみないとわからないから、見てもらったほうが早いかも」

「わかりました、持ってきますね」


物置から1メルほどのタライを持ってくる


「持ってまいりました」

「そこに置いてもらえる?」


置いてもらい裏の底の部分を見てみると、水抜き穴と浅い窪みがあるのでそのまま使ってみる

タライの中に入り、水抜き穴の栓を抜き、手を底につけ弱めの風の魔法を底の外側の部分に均等に出してみる


「カール坊ちゃま何をしているんですか?」


水抜き穴から大気を吸い込み、タライがわずかに浮き周りに風が舞う


「坊ちゃま、埃が舞うのでやめてください」


メイのメイド服のスカートがめくれてパンツをはいていないのが見れる

僕の後ろにメイはいたので気づかない

メイはスカートがめくれてパンツをはいていないの思い出し慌てて抑える


「メイ、このタライをちょっと押してみて」

「押したらやめてくれますね?」


メイが押してみるとタライがスーッと軽く動いた


「えっ、なんで動くんですか?」


僕は魔法を止める


「風の魔法でタライを浮かせたんだよ、だから簡単に動いたんだ」

「すごいですよ、これは」

「これはね、地面の上ではあまり使えないんだよ」

「どうしてですか?、今こうしてできているのに」

「まず、埃がすごい、今、草の多いここでこれだよ、草もない土の地面だったらものすごいよ、それに平らな所はいいけど、坂道はなかなか登れない」

「確かにそうですね、では、どこで使えるのでしょうか?」

「デコボコしていない浅い川や町の北側に広がる湿地帯だといいかも」

「深いところはいけないのですか?」

「いけなくはないけど、転覆したり、壊れたら危ないよ、想像してみてよ」


浅い川遊んで転んで底に足がつく、深い川で遊んで転んで足がつかずに溺れる自分を想像するメル

ぶるぶる震えながら


「そ、そうですね、危ないですね」

「そうでしょ、危ないでしょ、メルも乗ってみる?」

「え、いいんですか」


カールを前に抱くように座るメル


「いくよ」

「はい」


魔法を発動して浮かばせ、後ろに向かって軽く風を出す


「おー、進みました、すごいです」

「ところでメル」

「はい、どうかしましたか?」

「キリリとした姿と喋り方はどこ行った?」

「あ・・・」


焦りだすメル


「なんで僕の前だけ、そんなことやってたの?」

「え、バレていたんですか?、いつから知ってたんですか?」

「えーっと去年くらいに気づいたよ」

「そんなに早く、今まで頑張っていた私はいったい…」


落ち込むメイ

僕はメイの肩に手を置き


「諦めが大事だよメイ」


タライから降りてアイテムボックスに収納する


「このタライ借りていくね」


領地の北側に広がる湿地帯に来てみた僕

アイテムボックスからタライを出して乗り込む


「よし、近くを乗り回してみよう」


近くを乗っていると、オオトカゲやカエルをチラチラと見かける


「あのトカゲ、意外とおいしかったから、何匹か狩って行こうかな」


オオトカゲを風の魔法で切り裂いていく


「今日はこのあたりで帰ろうかな」


家に帰り、父上のいる執務室へ


「父上、北の湿地帯へ行ってきて、オオトカゲを狩ってきました」

「カールは強いから安心だとは思うが、行く前にはとりあえず報告ぐらいしてくれ、心配はするんだからな」

「はーい、わかりました、では、しばらくの間、湿地帯に行くと思います」

「わかった、オオトカゲは町の肉屋にでも持って行って解体してくれ」

「あと、湿地帯の南側を水をせき止めて水を抜いて乾かそうと思います」

「使える土地が増えるのは嬉しいが無理はするなよ」

「大丈夫でよ、無理はしませんから」


次の日

街から北のほうへ向かい湿地帯との境目へ来た


「とりあえず、北のほうに5キロメルほど歩ける道を作ろう」


土魔法で周りから集めて人が二人歩ける道を作ってみる


「うーん、水でびちゃびちゃで柔らかいな」


作った道の水分を水魔法で除いていき乾いた道にしていく


「岩山で岩削っていた時より楽だな」


数日が経ち

予定の5キロメルほど道ができたので、そこからまずは西の岩山のほうへ作ろうと思う、ここは水を止めるための第一の堤防になるので幅4メルほど、高さは水位が上がることはないから1メル未満で強固に作る、安全のため少し内側に幅1メルほどの堤防も造る、終わったら東のほうにも作り、さらに5キロメル奥にもう一つ第2の堤防を作る、これは片方が壊れてももう片方で水を止めるため、堤防の一部に水門を作り、さらに水深の深いところは小さな池として町に向かって川を作りつないでいき、町の近くにも水源の一つとして小さな池を作る

そんなことやって数か月が経った


「今日は湿地帯の北のほうに行ってみよう」


タライの周りを結界で囲い、100キロを超える速度で一刻ほど走らせてみるけど景色は変わらず、さらに半刻走らせてみると、街道のほうで馬車が止まっているのが見える


「何かあったんだろうか?」


馬車が止まっているほうへ向かってみると、沢山のオオトカゲに襲われていた


「助太刀いたします」


氷の矢を飛ばしてある程度のオオトカゲを倒す、多すぎて防御重視て戦っていた拮抗が崩れたのか馬車の護衛たちが残りを素早く倒していく


「大丈夫ですか?}

「大丈夫だ、助太刀感謝する、おっと、それ以上は近づかないでくれ」

「あ、すみません、僕はヴィクテス家の次男、カール・ヴィクテスです」


馬車から40くらいの金髪の男性が出てくる


「私は、北西の辺境伯のアルギス・ドグラグスだ、助けてくれて感謝するよ、しかし君は強いね、こんなところで何しているんだい?」

「湿地帯の散歩?」

「おかしなことをやってるね」


馬車の中から、僕と同じくらいの水色の髪のかわいい女の子が出てきて


「お父様、何かあったのでしょうか?」

「なんでもないよ、マロン」


僕はその子を見て言葉を失った

辺境伯は僕を見て


「娘はやらないよ」

「お父様、なにを言っているのですか?」


マロンは僕を見つけて、顔少し染め


「辺境伯の娘、三女のマロン・ドグラグスです、助けていただいたようでありがとうございます」


はっ、っと意識が戻り


「はい、僕は、ヴィクテス子爵家の次男、カール・ヴィクテスです、ご無事で何よりです」


辺境伯は娘を見て、僕を見てからつぶやくように


「娘はやらないよ」


護衛の騎士がやってきて


「車軸が折れておりますので、しばらくかかります」

「僕もお手伝いしますよ」


馬車の傍に行き身体強化をして持ち上げる

みんなが僕を見て驚いている


「一人で持ち上げて大丈夫なのか?」

「大丈夫です、問題ありません」

「では、作業に取り掛かろう」


車軸の修理も終わり


「おかげで、早く終わったよ、お屋形様、出発の準備ができました」

「うむ、では行こうか」

「はい、カール様、失礼します」

「はい、気を付けて」


馬車に乗り込み出発する辺境伯たち

僕もタライに乗り帰路につく


「マロン様かわいかったな」


馬車の窓からのぞいていたマロンが


「あれは何でしょうか?、すごく早いです」


辺境伯も外を見て


「何だあれは、タライ?、なぜあんなので行けるんだ?」


辺境伯一行はみんな頭を捻らせていた

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