第7話

最近、西にそびえたつ岩山の向こうが気になり

「父上ー」

「なんだ、カール騒がしぞ」

「すみません、父上」

「何か用か?」

「西にそびえる岩山の向こうに何があるか気になり聞きに来ました」

「岩山の向こう側か、誰も行ったことがないからわからないな、行ったことのある奴もいるかもしれないが聞いたことはない」

「聞いたことも行ったことがない・・、父上、岩山に遊びに行ってきてもいいですか?」

「遊びに行きたいんじゃなく、向こう側が気になって行きたいだけだろう」

「とりあえず、近くに行ってみてこようかと」

「まあ、魔物もいないし、安全だとは思うが、岩山は険しくて登れないぞ」

「見てから、魔法で掘ろうかと思っています」

「私も向こう側が気になるから、安全だと思うし、カールだから大丈夫だと思うが気をつけて行ってこい」

「では、行ってきます」


町を出て広がる田畑

田畑で作業している人たちが手を振りながら


「カール坊ちゃん、どこかお出かけですか?」

「西の岩山までお散歩ですよ」

「岩山ですか、何もないと思いますが気を付けていってくださいね」

「はーい、行ってきます」


田畑の先は道なんてものはなく草原が広がりその先には壁のようにたつ岩山が


「おおー、近くに来るとより一層すごいな」


上を見上げても右を見ても左を見てもどこまでも続く岩の壁


「この壁の向こうって何があるんだろうな」


壁に手をつき魔力を流してみる


「うーん、爆破は簡単だけど崩れるし、結構固いから、色々使えそうだし、切っていくか」


一つのブロックを1メル四方にして、縦横2メルほどの広さに切っていく


「これは、思ってたより時間がかかるな、切るの慣れていないせいか意外と魔力を食うし、切った後に壁を硬化していかないと崩れた時に困るし、切った後はアイテムボックスに入れるだけでいいのが救いかな」


数十メルほど掘り進み


「今日はこれくらいで、遅くなる前に帰るかな、入口は塞いでおこう」


父上の執務室に行き報告を


「父上、岩山ですが掘ってみたところ、固くいい素材なので町を囲む壁を作ろうかと思うのですけどどうでしょうか?」

「今までは必要なかったが、ないよりはあったほうがいいか、どれくらいを予定している?」

「えーっと、町は全部囲うとして、畑の一部を囲いましょうか」

「壁の高さは?」

「町を高さ3メル、幅2メルほど、畑は高さ2メル、幅1メルでしょうか」

「十分だな、人はいるか?」

「アイテムボックスがあるので一人のほうが楽です」

「無理はするなよ」


次の日の朝、町を囲っている柵まで行き


「これから町が大きくなると思うので、広めに柵の大きく外側に壁を作るとして、まずは最初にとりあえず土台だけ作っていこう」


地面を深さ1メルほど魔法で掘り、平らにしていく、そこに切り出した1メル四方の石材を敷き詰めていく

昼からは岩山へ行き、100メルほど掘り進め帰ろうとすると


「ぐふっ、な、なんだ」


背後から突然強い衝撃を受ける

後ろを振り返ってみると、白い塊が


「なんだこれ?モグラ?」


白いモグラが飛びかかってくる


「クッ、こいつ魔物か」


避ける隙間があまりない狭い洞窟の中、魔法は使えない武器も振り回せない、仕方ないので硬化して殴る


「こいつ、爪は固いけど本体は弱いな、とりあえず持って帰ってみよう」


倒したモグラをアイテムボックスに収納して家に帰る


「父上、採掘していたら、このモグラが出てきました」


取り出して、見せてみる


「こいつは、岩モグラだな、鉱山の奥地なんかで出てくるらしい、攻撃は体当たりで爪は採掘用だとか」

「爪で攻撃すれば手痛い攻撃になると思うんですけど」

「道具は大事に職人魂ってやつだろ」

「職人ですね」


次の日、壁を作りに現場へ土台を作りに行く

試しに2メル、3メル、4メルの壁を作ってみる


「2メルは低いな、3メルはそれなりに鍛えた人なら登れそうだ、予定変更で4メルの壁にするかな」


遠くから見ていた人がやってきて


「カール様、何をやってるんですか?」

「町を囲う壁を作ろうと思ってね」

「壁ですか」

「魔物とかから守るためにね、そうだ、この壁試しに登ってみて」


2メルの壁を登らせる

壁の縁に手をかけ登っていく


「登りましたけど?」

「ちょっと加工するから降りてもらえる」


降りてもらったので、壁の外側の縁を丸く加工する


「もう一回登ってもらえる?」

「いいですけど」


丸くなった縁に手をかけるが滑って登れない


「あれ?、手が滑って登れません」

「手をかける場所を丸くしたからね、これであの高さにしたらどう思う?」


4メルを指さしながら


「これで登れないから、あれは無理ですね」

「ありがとうね、いい意見を聞けたよ」


去っていく住民


「4メルの壁に縁を内と外丸く加工に変更だな」


まだ残っている材料で土台作りを再開していく

昼前になり、家に戻って昼食を食べ、次は岩山の洞窟掘りだ


「カー君、最近何やってるの?、お家で見かけないし」

「岩山で穴掘り」

「面白そう、私もいく」

「面白くもないよ、ただ穴掘るだけだから」

「それでもいく」

「はぁ、わかりました、父上に許可貰ってきます」


執務室へ行き


「父上、シャントット姉さまが、僕と洞窟掘りへ行きたいと許可ください」

「まあ、危なくはないからいいか」

「ありがとうございます」


シャントット姉さまの部屋へ行き


「シャントット姉さま許可貰えましたよ」


汚れてもいい服に着替えていた姉さま


「カー君、ありがとう、何か必要な物とかある?」

「えーっと、弱いけど魔物が出るので、小回りが利く武器ですね」

「魔法はダメなの?」

「狭いし、魔法だと危ないから」

「わかったわ」


準備ができたので出発する


「意外と遠いわね」

「一刻ほど歩くからね、だから走る」

「そうね、走りましょう」


半刻もかからずに岩山の洞窟前につく


「ここ?、何もないけど」


隠していた場所を魔法で開ける


「誰か来ても困るから隠してるんだよ、町の人たちには秘密だし」

「たしかに、何かされたら困るわね」


洞窟の中の空気を風魔法で入れ替える


「何やってるの?」

「中の空気の入れ替え」

「空気?」

「口と鼻をつまんで息を止めていれば苦しくなるでしょ、目に見えないけど僕たちの周りには空気など沢山あるんだよ、洞窟の中の空気も少なくなってたりするから外の空気を入れてるの、それじゃあ行こう」


中は暗いのでライトの魔法を付ける


「中狭いでしょ、中で火の魔法を使えば、こっちまで蒸し焼きになるし、焼いた獲物の臭いが充満してくるしいよ、風魔法も行き止まりなどで使えば空気が薄くなるから危ないよ、水や土は濡れたりボコボコになってもいいなら使えるけど、ここでは使わないでほしいな」

「わかったわ、だから小回りの利く武器なのね」

「狭いところで一番は体術だよ、武器も抜かずにすぐに攻撃に移れるからね」


一番奥まで着き作業を開始する

しばらくして、あくびをしながら


「ほんとに地味な作業ね、ひますゲフッ」


シャントット姉さまの背中に突撃してきた白い塊、岩モグラ


「何よ、こいつは」

「岩モグラだよ、言ってなかったけど油断したらだめだよ、まあ、僕も最初やられたけどね、弱いからお願いね」

「ああ、もしかして武器ってこいつのため?」

「正解」


戦闘は任せて僕は穴掘りだ


「今日はここまで、帰ろうか」

「あの一匹しか出てこなかったけど」

「数が少ないのかもね」


外に出て洞窟を隠す


「シャントット姉さま、あれの具合はどう?」

「あれ?、ああ、覚醒の練習ね、まだやってないわ」

「一度ここで魔力暴走やってみない?、町からは離れてるし周りは何もないから」

「大丈夫なの?」

「大丈夫、魔力が空になるだけだし、訓練したから動けるでしょ、それに僕もいるし」

「わかったわ、やってみる」


魔力を放出し始める


「何も考えずにもっと放出して」


暴走し吹き荒れる魔力


「シャントット姉さまの魔力量すごいな、よし、姉さまの好きなアルモの実、僕一人で食べました」


魔力暴走中で意識が薄れかけていた、シャントット姉さまの大好きな果物の名前が聞こえ


「アル、モ、の実、一人で、た、べた」


吹き荒れていた魔力が収まり中から、狂戦士になったシャントット姉さまが


「アールーモーヨーコーセー」


僕に襲い掛かってくる


「ありませんよ、食べたって言ったでしょ」


攻撃をよけ続ける

唐突に事切れたように動かなくなり倒れるシャントット姉さま

額の汗をぬぐいつつ


「ふう、いい仕事しました」


背中に背負い帰路につく


「あれ、私なにやってたんだっけ?」

「魔力暴走の練習ですよ」

「自分で歩くから降ろして」

「どうでしたか?」

「何もできなかったし、何にも考えられなかった」

「それを自分で制御できるようになれば覚醒になりますよ」

「洞窟掘りついて行って、帰りに練習してもいい?」

「いいですよ、では、急いで帰りましょう、だいぶ遅くなりましたし」

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