第6話 親の仇


 あの場所から離れ、歩き続けてはいるが一向に吹雪は止む行為は一切ない。むしろ歩き続けると共に手に寒さを感じられる。


「本当に一切止む気配がないな」


 春樹は思わず呟いた。


「俺らの他に雪の怪物たちが色々いるんだ。おまけにあいつらが集まっている所だけ雪を降らし続ける体質なんだ。ここら辺はまだ明るいのに、あそこに入れば夜と化す。


 ウィルはニヤつきながら言うため、すぐに首にマフラーを巻き、キキを服の中に入れた。


 ドンドン近づいて行くと寒いのがもっと増えてきた。おまけに顔には雪の結晶が付いてくる。冷たいのが顔に張り付くため、痛みが走る。


 雪の中に入ると、そこはまるで南極みたいな町の中に入り込んでいった。


 息は白くなり、手は冷たくてあまり動かなくなってしまうほどの寒さだった。


「寒いなぁ本当に、ここにも人が住んでるのか」


 春樹は手に息を吹きかけながらウィルに言った。


「あぁ、きっとな。けれど、ここに色んな奴がいるんだ。お前の知りたいことを教えてくれる怪物が居るんだが、会ってみるか?」


 ウィルは春樹に顔を向けながら言うと、春樹は「何でも教えてくれる」と言う言葉に、その怪物に会いたくなってきた。


 何せ、自分の母を殺した怪物のことも教えてくれるならなあって聞こうと思ったからだ。


「あぁ、会うよ。けれど、どうやって会うんだ。そもそも雪の中にいることを分かったけど、何処に居んのかわかるのか?」


 春樹はそう言うと、ウィルは「心配するな」と言い、足を速めた。


 建物を見てみれば、雪の積もりが多い所が沢山ある。凍って建物内が見えな君会っている。だけど、少しだけある人影を見えた。

 高いビルの上で誰かが泣き喚いている。吹雪のせいであまり見えないが、ウィルもその人影に気付いたようだ。


「ん? 雪女か」

「えっ、何で分かんの?」


 この吹雪の中でよく見えるな、と思いながらで言った。


「あの子は、さっき言った怪物を案内してくれる使用人なんだ。ちょっと待ってろ」


 ウィルは春樹を降ろすと、軽々とそのマンションを上った。ウィルが上ったところは綺麗な水色の氷と化していた。


 マンションの最上階に付くと、ウィルは目の前にいる雪女を呼んだ。


「雪女」


 ウィルは吹雪の中で呼ぶと、雪女は泣き叫ぶのをやめ、振り返った。


「ウィル、か」


 雪女はウィルの名前を呼ぶと、白髪の長い髪を耳に掛けた。


「久しぶりだな。どうだ、最近この街で何か起こったか?」


 ウィルは久々の同類にそう言うと、雪女は再び街を見下ろした。


「あぁ、最近厄介もんがこの街に出歩いていることだけがわかったが、なんかあったのか?」


 雪女も久々の同類にここに来た意味を聞こうとした。


「実は俺のパートナーにあの方に会いたいって言う。そいつは選ばれし者なんだ。だから、案内をしてくれるか?」


 ウィルは言うと、雪女は「わかった」と一言言った。


 ウィルは先に下に降り、春樹の近くに行った。ウィルの後に、雪女はゆっくりと降りた。


 雪女は春樹の顔を見ると、顔を近づけた。冷たい息と青い目と白い顔、そして長い白髪の髪、春樹は少しだけ身体が寒くなるのを感じた。


「この子は特別な者か? ウィル」


 雪女は春樹の顔を見つめながら言うと、ウィルは「そうだ」と一言言った。


 春樹は挨拶をした。


「あのこんにちわ。俺の名前は春樹です。こっちにいるのがキキと申します。」


 元気よく言うと、雪女は少し笑みをした。


「元気な子だな。まぁいい。付いてきて。案内をしてあげる」


 雪女はそう言うと、ゆっくりと歩き出した。雪女の後に続いた。


 吹雪が激しさを舞う中、春樹は片手でキキを抱きながらポケットの中に手を入れていいる。マフラーあるだけでも安心がする。もし、マフラーが無かったらここには入らないと思った。顔や髪に雪が付くのを払いながら空を見上げた。


 空は雲に覆われ、雪を降らし続けている。


 ウィルは平然としながら歩いている。ビルの下には血痕が残っている。それも人を殺したかのような血の跡と、怪物の死骸。


 どれもが吐き気を込み上げてくる光景だった。


 すると、吹雪が沈んでいき、ただゆっくりと雪を降らして来る。


 歩き続けてること30分、とうとう吹雪はやみ、ただ雪を降らしてくるようになった。


 吹雪が止んだことに春樹は安堵をした。キキは春樹の上着から顔を出した。


 すると雪女は途中で立ち止まった。


「ここからはウィルと春樹だけで行きなさい。私はあそこの守りをしなくてはなりませんので」


 細めの声を出しながらウィルに言った。


「あぁ、ここからは俺も知っている。ありがと雪女、会えてうれしかったよ」


 ウィルは笑顔で言うと、雪女も笑顔で「私もだ」と言った。


「あの、案内をしてくださってありがとうございました」


 春樹は去る雪女に言うと、雪女は笑みを見せながら言った。


「いいんだ。これは私の役目だ。さようなら。撰ばれし者の春樹君」


 雪女はそう言うと、吹雪の中へと消えていった。


「さぁ行こう」


 ウィルは春樹に言うと、春樹は仮面を整えながら歩き出した。


 キキは上着の中から出ていき、春樹は『歩くのか?』とキキに言うと、キキは一声鳴いた。春樹はキキをゆっくりと雪塗れの地面に置いた。


 その瞬間、雪は「にゃぁぁぁぁ」と叫び、ウィルの背中に乗った。


「冷たかったか」


 春樹は少し笑い気味に言った。


 歩き続けると、春樹は少し斜めになっている建物を見つけた。


 何かが少し倒したかと思ったが、すぐに斜めにした怪物がわかった。建物の間に丸い怪物が座っている。それも毛並みが良い動物みたいなやつだった。


 もう少し近づいてみると、ウィルは立ち止まり、頭を下げた。


 春樹は見上げると、目の前には大きい白の毛並みをしたフクロウだった。大きい黄色の眼を見せながらウィルと春樹を見た。


「おぉ、ウィル。久々にどうした」


 そのフクロウは低い男の声を出しながらウィルに言った。ウィルは頭を下げながら話し出した。


「こちらにいるのは選ばれし者の春樹と申します。彼は貴方に教えてほしいことがあると言ったので、リアン様の所に伺いました」


 リオンと言うフクロウはウィルの言葉を聞くと、『そうか』と言った。


「その隣にいる春樹という者よ」

「はっ、はい」

「こちらの近くに参れ」


 リオンは隣にある小さいビルを見た。ウィルは春樹を背中に乗せると、軽々とビルの上に行った。


 屋上に着くと、春樹はウィルの背中か下り、春樹は仮面を取ると、リオンに顔を向けた。


 リオンは春樹の顔を見つめると、小さい大きめの口を開いた。


「確かにそうだな。春樹にはとても勇敢で、優しい心を持っている。とにかく母親思いが強いな」


 リオンは大きい瞳を向けながら言った。春樹は母という言葉に胸が痛んだ。


「けれど、怪物に強い恨みを持っているな。何か大事な人を殺されたのか?」


 リオンはそう言うと、春樹は真剣な眼差しを向けながら言った。


「母を殺されました。白い毛をまとったトナカイの角を生やした怪物に」


 あの姿を頭の中で浮かぶと憎い心が溢れ出してくる。あの時母の命令を無視して、母を担いで逃げていれば母は殺されずに済んだかもしれない。


 あの時のことをずっと自分を責め続けていた。


「これはまた厄介なやつだな」


 リオンの言葉に春樹は疑問を感じた。


「えっ」

「そいつはきっと雪男やトナカイが混ざったもの、いわゆる私達の同類で一番厄介者なんだ。そいつの爪は長かったか?」


 リオンはそう言うと、春樹は必死に頷いた。


「だったらそいつだ。あいつは人を殺しては袋の中に遺体を入れる。それが日課だ。きっとその母親は今のところ袋の中に入っている。そいつのことを殺したいのか?」


 リオンはそう言うと、春樹はしっかりと言った。


「はい、殺して、その袋の中から母親を出したいです」


 春樹はそう言うと、リオンは少しだけ眼を光らせた。


 しばらく春樹を見つめていたリオンはあることを言った。


「良いだろう。あいつが現れやすい所と、そいつを呼び寄せる方法を教えよう」


 リオンは低い声を出しながら言った。


 その言葉に、春樹は懸命に聞いた。



 その後、春樹たちはリオンの話を聞くと、一旦スーパーに行き、ある物を買うとウィルと一緒にその場に行った。


 言われた場所の近くまで来ると、春樹はウィルに歩くのを止めるように言った。


「ウィル、止まってくれ」

「ん? どうした。なんかあったか?」


 ウィルは春樹の止めることに疑問を持ちながら止まると、春樹は背中から降り、ウィルに真剣な顔で言った。


「ここからは俺だけで行かしてくれ。俺だけであいつを倒す」


 春樹は真剣なことを言うと、ウィルは反対をした。


「何を言ってるんだ春樹、お前だけを怪物に殺させるなんてそうはさせないぞ。お前は一回殺されかけたんだからな」


 ウィルは昨日の怪物に殺されかけたことを伝えたが、春樹は何度も反対されても一人で殺す覚悟をしていた。


「お前が何回反対をしても俺は一人で殺す。俺は、母さんを一人残して逃げたんだ。だったら俺が一人でその怪物を殺す。だか

ら、お願いだウィル。分かってくれ」


 春樹はウィルに真剣な眼差しを送ると、ウィルは諦めたかのように大きいため息を付いた。


「分かった。けれど、死ぬのはやめてくれ。そしたら俺は許さない。わかったな」

「あぁ、分かっている。ウィルたちは出来れば眺めてくれ。眺めてくれるだけでいいんだ。わかった?」


 春樹は仮面を付けながら言うと、ウィルは頷き、キキが頭を春樹の足にこすりつけた。


「それから、武器を創造しながらも、己が負けることを考えるな。そう考えているうちにどんどんあいつにやられるだけだからな」


 ウィルの言葉に春樹は返事をすると、2匹を優しく抱きしめた。


「じゃあ、行ってくるね」


 春樹はそう言うと、早々とウィルたちから離れて行った。


 少しだけ雪が積もる中、春樹はようやくリオンに言われた場所に着いた。


 場所は近くの姫路の高速道路だった。


 周りは木がいくつか生えている中、春樹はリュックからあるものを取り出した。


 春樹はリュック中から取り出しながらリオンに言われたことを思い出した。


「あいつは何か、煙が出るものがあれば近寄ってくるだろう。あいつは木の中に住んでいる奴だから、ここの近くにある両端に植物が枯れている高速道路に現れるだろうそして、吹雪を出してくるだろう。けれどこれだけは言っておく。けして奴の前では弱気な態度を見せるな」


 リオンは強気の口調で春樹に言った。


 春樹は弱気な態度は見せずに戦うことを思いながら花火の中身を空けた。剣を横に置き、強めの花火を三本取り出し、火に付けた。熱いのに耐えながらも、剣を握り、スノーメンが来るのを待った。


 風が前の方になり、煙が一気に前の方に流れていった。


 けれど花火はすぐに終わり、消えてしまった。春樹は今度は四本に火を付けてみた。予想に煙は多くなり、前の方に流れていった。


 煙の匂いをあまり嗅がないようにしながらでいると、前の方から何かが来ることがわかる。そして、吹雪が出てきた。


 剣を強く握りながら待っていると、奥から大きい袋を持った怪物が来ていた。大きい体をしながらも、爪と口元には人間の血の跡見たいに見える。


 花火が切れるまでかざしていると、怪物は袋を降ろすと走り出した。


 春樹は花火を投げ捨て、剣を構えた。大きい爪が襲い掛かってくる間に春樹は転がりながら左に避け、足を切ろうとしたが直ぐに雪男は大きい手で春樹を吹っ飛ばした。


 吹っ飛ばされたが直ぐに立ち上がり、怪物が走りながら近づき、大きい角を切った。角を押さえている間に切ろうとすると、雪男は片手で春樹を思いっきり吹っ飛ばした。


「ガハッ」


 春樹横にある壁に激突をし、その場に倒れてしまった。


 撃たれた体に痛みを感じながらも、剣を握り、ゆっくりと立ち上がった。


 息を荒くしながらも、春樹は剣を怪物に向け、走り出した。


 怪物はは叫び声を上げながらはも、必死に爪で抵抗をした。


 爪を剣で避けながらも、一本の爪の先が春樹の頬をかする。痛みに耐えながらも必死に春樹は奴の顔に向けて剣を振った。


 剣と怪物の爪が当たる音が聞こえてくる。春樹は剣を振っている間に、スノーメンの顔に近づくと一発殴った。固い頬のため手は痛

めたが、そんなことはどうでもいい。ただ早くこの怪物を倒したいだけで。


 だけど少し隙を見せた春樹は、怪物に捕まってしまった。


 力強い握り方に肺に空気が入らなくて苦しくなっていく。


「うっ」


 春樹は左手で剣を握ってはいたが、怪物が大きい手で掴まれているため動けなかった。


 この剣なら簡単に殺せるはずが今はただ相手が難しかった。


 怪物は大きい爪を春樹の喉元に当てようとした。


(このままだとこいつに殺される)


 心の中で呟きながらももがいていると、春樹はウィルの言葉を思い出した。


「負けると言う言葉を考えるな。勝って仇を取る事を考えろ」


 ウィルの言葉を思いだすと、春樹はすぐに武器を思い浮かんだ。


 大きく、この大きな腕を一瞬で切り裂くものを眼を瞑りながら浮かんだ。


 怪物は空いた片方の爪を春し樹に向けて刺そうとした。


 その瞬間、雪男の腕は地面に落ちた。何が起こったか分からない怪物は自分の腕を見てみると、自分の腕はすっぱりと切られている。


 怪物は自分の腕が切られたことに実感がないのか、叫ぶこともなく、春樹を見つめた。


 春樹が持っていた剣がいつの間にか先ほどよりも数倍大きい剣と化していた。かして


 怪物はすぐに春樹を壁に向かって投げた。

 

 春樹は投げられると、先に足を壁に置き、身体をぶつけないようにしながら壁から離れた。重い鎌を持ちながらも、春樹は鋭い目を怪物に向けた。


 怪物はもう片方の手で春樹を切り裂くために突進した。


 けれど春樹は怪物にの片方の爪を避け、もう片方の腕を切り落とし、頭に目掛けて振りかざした。


「うぉぉぉぉぉぉぉ!」


 叫び声と共に、切れる音が聞こえた。


 血が飛び散り、怪物の体は真っ二つになりながら、崩されていった。真っ白な雪を怪物の血で広く赤く染まっている。


 春樹はその光景を見ながら息を荒くしていた。


(やっと、やっと死んだ)


 倒せたことに達成をすると、力が抜けて膝から崩れ落ちた。


「春樹!」


 向こうからウィルの呼ぶ声が聞こえてきた。春樹は声がした所に顔を向けると、ウィルはキキを自分の背中に乗せながら近づいてきた。


 キキはすぐにウィルの上から春樹の方に飛んだ。


「キキ、ウィル」


 春樹は息を荒くしながらも、駆け寄ってきたキキを優しく抱きしめた。


 ウィルは変わり果てた雪男の姿を見下ろした。


「倒したか」


 一言ウィルは言うと、春樹は「あぁ」と言うしかなかった。


 吹雪が舞う中、春樹は後ろにある袋に気が付いた。


「母さん」


 春樹は小さく呟くと、キキを抱き抱えたまま大きい袋の方に鎌を持って走った。


 袋に近づくと、キキをウィルの背中に乗せ、鎌を元の剣の大きさに戻し、袋を剣で破った。


 破ると、沢山の死体が出てきた。男女と老人の男女と未成年の男女の何人かが入っていた。


 春樹はそれぞれの遺体をどかしながら必死に探した。血生臭い匂いが鼻を突きながらも必死に探し続けた。


 遺体をどかし、探し続けると、高校生の隅の方から思い当たる生地が見えている。


 白のカーディガンの袖が見えている。それも、あの時着ていた母と同じものが目の前にある。


「まさか」


 春樹はすぐにその女子高生をどかした。退かすと、予想通り胸が穴を開いている無残な母の姿があった。


 見つかった喜びに満ちながら母を引きずり出した。


 母の体はすでに冷たくなり、静かに目を瞑っている。着ていた服は血で真っ赤に染まりながらも胸には大きめの穴が空いていた。


 春樹はそっと抱き寄せながら母の冷たい頬を撫で、話しかけた。


「母さん……遅くなってごめんね。痛かったよね。寒かったよね。俺のせいで痛みとかを感じさせちゃってごめんね」


 春樹は少し声を詰まらせながら話し続ける。


「あの時、俺だけ逃げて、ごめんね」


 涙を母の頬に一滴落とした。母の頬に落ちた涙は次々と流れてくる。


「本当に、ごめんなさい」


 春樹は母を強く抱きしめながら、謝り続けた。遂には、泣き叫んだ。今まで我慢していたこと辛いことが一気に涙で流れていった。


 そんな春樹の姿に、ウィルはただ眺めるしかなかった。


 しばらく泣いた春樹は、カバンの中に入れていたフカフカの上着を母に着させ、剣とリュックを背負い、母を抱き上げ、ウィルの背中に母親を乗せた。


 雪が母の髪に付くと、春樹は雪をはらい続けた。


 春樹はウィルに森の中に入って行くように命じた。ウィルは早速隣にあった木の茂みの中に入っていった。


 少しだけ奥に進み、母を安全な所に埋める場所を決めた。母を横に置き、リュックから小さいスコップを取り出し、掘り出した。


 ウィルも足で一緒に掘り出した。


 数十分掘り続け、大きな穴を作り出した。春樹は大きな穴にそっと母の遺体を入れ、再び土を入れた。


 土を入れると、大きな石に母の名前を刻み、石を建てた。


 手を合わせ、ウィルの背中に乗り、早々とその場を離れた。


 春樹はキキを抱きながら涙をこらえていた。ウィルは春樹の堪えている姿に無視をしながら、走り続けた。


 高速道路の近くにあるレストランで泊ることにした。


 レストランに着くと、建物内に入っていった。


 春樹はウィルの背中から降り、側にある椅子に座りながらリュックをテーブルの上に置いた。


 リュックから濡れシートを取り出し、土が付いた手を拭いた。シートが茶色に汚れるのを見ると、母を埋めている光景がフラッシュバックしてきた。


 春樹は手を拭きながら、吹雪が出ている外を眺めているウィルに話しかけた。


「なぁウィル、何で世の中はこうなっちまったんだ。神様はどうして俺達の日常を壊したんだ」


 春樹は息を荒くしながら言うと、ウィルはただ吹雪が舞い続ける外を見つめていた。


「俺だってわからない」


 ウィルは一言言うと、口を開いた。


「いつものように家族と日常を過ごしているうち、ある怪物が俺の妻や他の仲間を殺して行った。せめて子供達だけでも思ったが、そいつらは容赦無く子供も殺した。絶望のどん底に落とされた。だが、俺は神からこう言われた。お前の家族と同じ被害者を出さないような世界を作るには、この世界で怪物を倒してくれる人物たちを探すのだと言うことを言われた」

「……それが、その人物たちの中で自分が選ばれたってことなのか?」

「あぁ」


 ウィルは低い声を出しながら眼を光らせた。ウィルは春樹に近づき、顔を春樹の足に置いた。


「俺がお前とパートナーになったのは、同じ悲しみ、同じ苦しみを乗り越えられる仲を感じたから、お前と一緒に世界にいる怪物を殺そうと思って付いてきてるんだ」


 ウィルはそう言いながら顔を擦り付けている。


「だから、死んだら許さないって言った意味はこうゆう事なんだ。死んだら、その怪物を俺だけで殺さなければならない。それに、俺はどうしていいかわからない」


 ウィルは泣くのを押し殺しているかのような声をした。


「だから、何があっても一緒だ」


 ウィルのその言葉に、春樹はキキとウィルを強く抱きしめた。


 そしてその晩、春樹はウィルとキキ達と寄り添いながら眠りに着いた。外で聞こえるうるさくなっている吹雪を無視しながら眠った。



 翌朝、一人と二匹はあくびをしながら眼を覚ました。


 朝食を取り、歯磨きと顔洗いをすると、再びウィルの背中に乗り、キキを抱き替え、外に出た。外に出ると、吹雪はすでに止んでおり、雪だけが残っていた。


 ウィルはゆっくりと歩いている間に、春樹は後ろを向いた。


 あそこに母は静かに眠っていることを思うと、春樹は少しだけ安堵をした。


「行ってきます。母さん」


 春樹は少しだけ、あの頃に戻ったかのように眠っている母に向かって挨拶をした。


 ウィルは目の前を見ながらじっと黙っている。


「なぁ、ウィル」

「なんだ」


 ウィルは返事をすると、春樹は前を真っ直ぐ見ながら言った。


「なにがあっても、俺達は決して裏切らないことを誓うか?」


 春樹がそう言うと、ウィルは鼻で笑った。


「何を言ってるんだ春樹、そんな誓い、とっくに誓ってる」


 ウィルは光り輝いている太陽に向かって言った。


「……確かにそうだな」


 春樹は少しだけ笑みを見せながら言った。



▲△最後まで読んでくださりありがとうございました。

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世界崩壊後の戦い 羊丸 @hitsuji29

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