第10話
「終わった…」
さっきまで平原の中に質素な木造小屋が3つしかなかった村は、素晴らしい設備を兼ね備えたかわいらしい村に変わった。今はちょうど日没。そろそろ村人が帰ってくる時間ね。
「あれ…ここって、ぼくたちの村だよね。」
「ああ。俺が場所を間違えるはずないだろ?」
「でも、全然違う場所になってるわ。畑も立派だし、農業もしやすそう…」
「あれはおらの家だ!ここはやっぱりマドレヌンド村だ!」
…村人たちが帰ってきたみたい。ちゃんと説明しないと、混乱するわよね。
「みなさん、こんにちは。村を勝手にいじくってごめんなさい。私はエリーシアです。みなさんが都市まで働きに出ているときいて、何か助けになれないかと思い、ひとまず畑を復興させていただきました。」
私が話すと、村人たちはとたんに涙を流し始めた。
「!?えっと、申し訳ありません!やっぱり村に手を加えるのはお嫌でしたよね…。もとに戻したほうが…」
「いえ…ただ、うれしくて…」
「ここでまた農業ができるのか…?」
「おやじの畑が、あんなにきれいに…」
「こんな便利な道具もたくさん…」
えーっと、なんだか喜んでもらえたみたい。すると、さっきまで呆然と村を眺めていた青年が出てきた。
「エリーシア様、本当に、ありがとうございました。村を代表して、お礼を言わせてください。私はマドレヌンド村の村長、マランと申します。この村はあなた様を歓迎いたします。」
「あ、ありがとうございます…。」
「なにか私たちにできることはありますでしょうか?」
「なら、私たちをここに住まわせてもらえませんか?」
この村に定住出来たら、ここを拠点にしていろいろなところに行ける。定住、とは言っても、帰る場所を作るだけ。基本はみんなでのんびり行きたいところに行くスタイルだ。
「喜んで!しかし、もう住居がないのですが…。」
「あ、それなら建ててもらうので大丈夫です。」
(建ててもらう…?)
「ミーラ!家建ててー!好きなのでいいよー!」
ポポポポポポポポポンッ!
「「好きなの!?やったあ!!」」
一斉に出てきたミーラたち。すごい速さであちらこちらから木材やらレンガやら石やらをもってくる。森の精たちが加工して建材にし、積み上げていく。
「え…。あれは…ミーラ?あんなにたくさん…。今までどこにいた…?」
青年改めマランは、驚いた様子で家ができていく様子を見ていた。
「あ―…えーっと…実は私は…」
「エリーはね、精霊姫なんだよ!」
オミが勝手に言った…そういう大事なことは自分で言いたいんだけどな…
「せ、せ、精霊姫様!?で、でも、たしかアルネッタ王国の姫となったのでは…」
「婚約破棄されたわ。妹が本物の聖女らしいの。」
「え…でも、その力は…。」
「ええ、私は精霊姫よ。正真正銘、本物の。」
「じゃあ、あなたは王子に捨てられてしまったのですね…。しかも妹様に奪われて…。おかわいそうに…」
いや、改めて言われると心に来るな…まあそうなんだけど…。
「そういうことならば、この村にぜひお住まいください。家も、この調子なら心配いりませんね。」
「ありがとう。今日はもう暗いわ。あなたもお休みになって。」
「気にかけていただき光栄です。エリーシア様も、どうぞごゆっくりお休みになられてくださいね。」
「ええ。」
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