第9話

「ところでバル…この近くに、ちょうどよさげな村ってない?」

「ちょうどよさげとは?」

「いつでも森に来れて、かつ外にも行きやすいところ…」

「なら、マドレヌンド村がいいのではないでしょうか。」

マドレヌンド村…隣国フィナンシェ―ノ王国の村ね。確か国境を超えるのに手続きは必要なかったはず…。

「じゃあ、マドレヌンド村まで案内してもらえない?」

「精霊姫様の御心のままに。」


しばらくバルについていくと、開けた場所についた。いくつか家もある。あるけど…

「活気なさすぎない?」

驚くほど活気がない。というか、人がいない。

「ねえバル、この村、人いる?」

「いますよ。でも、都市のほうに働きに出てるみたいですね。日没には帰ってくるでしょう。」

ええ…。ここから都市って、2,3時間かかるわよね…。大変…。

「どうにかこの村で仕事ができないのかしら…」

「2年前の水害で、畑が壊滅したようです。復興しようにも、辺境で誰の領でもない自治区なため、お金が足りず…」

うーん…。畑を復興させられれば、都市に行かなくて済むのね。

「…みんな!仕事よ!」

最近は詠唱しなくてもなんでもしてくれるようになったオミ達。こっちのほうが何倍も楽ね!


ポポポポポポポポンッ!


「「「はーーい!!」」」

半分しか出してないんだけど…それでも1000人だものね。そりゃ多いわよね。

「今から、この村の畑を復興させるわよ」

「えー…めんどくさ。」

「オミ!そんなこと言わない!ここで小麦とかつくってもらって、クッキー屋さんひらいてもらお!」

「え、くっきー!!やるやるー!!」

オミがやる気になったなら大丈夫ね。さて…

「日没まであと2時間。それまでに完全に復興させるわよ!!」

「「はーい!!」」

さて、2時間もあるなら、何ができるかしら。この人数なら30分で畑の復興は終わるだろうから…

「エリーシア!終わった!」

「え!?」

想像の倍早いんですけど!?

「ちなみに…なにしたの?」

「んっとねー、土質改善魔法、水はけ良化魔法、養分補充魔法…」

そんなこの瞬間のための魔法みたいなの、いつ身に着けたのよ…

「あのね、みんなで指輪の中で家庭菜園しててね、そのときに魔法いっぱい覚えたの!」

「あのときは赤土を養分豊富な黒土にしたから、大変だったのよね…」

「だからあの時に比べれば、こんなの楽勝!」

…指輪の中で家庭菜園って、そんな精霊がどこにいるっていうのよ。

まあ、早く終わったならいいか。次は…農業設備が必要よね。あと種。

「じゃあ、そっちの200人は畑の周りに聖水の湧く泉を作って。そっちの200人は農業が楽になる魔法を施した農具を。そっちの200人は、それぞれの畑にあった種がいくらでも出てくる入れものを。残りの400人は家を建てて!豪邸じゃなくていい。イメージはサクラの家ね!」

「「はーい!」」

日没まであと2時間半。…余裕ね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る