第5話

「…ふぃ〜…」

私は今、すっごく丁度いい湯加減の、とろけそうなお湯に、なんだか見たことない可愛い花びらが浮いてる、もはや天国ですかレベルの温泉に、ひとりゆっくり浸かってます!

「つかれがとれる〜…」

聖力が含まれていることも関係するのか、しぼみきっていた私の気力が、ぐんぐん回復していくのが分かる。

「ねーねー、エリーシア!みんなも温泉入りたいって!」

「えー、たまには、ひとりでゆっくり…」

「「温泉入りたいです!疲れました!」」

…あー、もう!私だって疲れてるし…

でも、確かにみんなも頑張ってくれてたなぁ。私の聖力、回復してくれたし、なにげに空間移動魔法もみんながしてくれてたし。

「…しょうがないなぁ。10人ずつね!」

「「やったー!!」」

言った瞬間、50人くらいが一斉に指輪から出てきた。小さいままで出てきたのは、少しの優しさのつもりなのかも…

「ちょっとミネ!水かけないでよー!」

「わー!みんな、ここ水出てるよー!!」

前言撤回。うるさいのなんの。

はぁぁぁぁぁぁ…

ほんとなんなの…

「あの…」

だいたい、ちょっと浮かれ過ぎなのよあの子達は…

「すみません…」

あとでしっかり、もっと精霊らしくしなさいって言わないとね。

「精霊姫さまー!!」

「わっ!…えっ、えっと、なにかしら?」

考え事に没頭していて、想像以上にびっくりしてしまったわ…。

でも、人に急に声をかけるなんて…どこの子なのかしら。

…って、精霊姫?ん?ということは…

「こんにちは!この森に住んでいる精霊です!」

…やっぱりかあぁぁぁ

精霊姫だとか、聖獣だとか分かるのは、基本聖力を持った者のみ。そしてより強い聖力を持つ者が、より細かいところまで聖力を持った人のことが分かる。私の持っている聖力は多めだから、精霊、しかもわりと強めの、水か森辺の精だということはなんとなーく感じていたけど…。

「えっと…私に何か用かしら?」

こんな強い精霊が、聖女に助けを求めるわけもなく、自分から進んで使役をしてもらいに来る物好きも、きっと誰も…あ、一人いたわ…まあ、珍しいはずだから…。ホントに何の用かしら?

「あの…その…」

話しかけたときはあんなに威勢がよかったのに、いきなり消極的ね。ちゃんと言ってもらわないと、こちらも困ってしまうわ。

「何かしら?(ニコッ)」

「あ、あの、その、えっと」

「「温泉に入らせてくれませんか!!!」」

あら、いきなり二人になった。後ろにいたのかしら?ちょっとびっくりしたわ。でも、精霊が入っちゃいけないなんて、バルは言っていたかしら?

「えっと、許可がないと入れないの?私は全然入ってもらっていいのだけど。」

「あの、いつもは聖獣がたくさんいて、少し怖くて…」

「あら、聖獣が怖いの?」

精霊は基本、聖獣よりも格上だ。だから、聖獣が精霊を畏怖することはあっても、逆は無いはずなのですが…。

「あ、いえ、その、私、人見知りで…。」

あ、そういうこと。そっちの怖いね。

「そうよ!人見知りすぎるの!」

「ねえさまはもう少し警戒心と思いやりを持ったほうが…」

「私が優しくないっていうの!?」

「あ、そういうことじゃなくて、えっと、その…」

「もー!そういうとこ!ちゃんと意見は言わなきゃ!」

「…はーい…」

なんか喧嘩始まって終わった。ねえさま…つまり姉妹か。

「えっと…不思議なことはいろいろあるんだけど…人見知りなのに、私には話しかけられたのね。」

「あ、はい。同じ人見知りには楽に話しかけられます。」

うっ…心にダメージが…

確かに私は人見知りよ!?でも、でもさぁ…言い方ってあるじゃん…。人見知りには話しかけられるのは、人見知りの特徴だけど…。

「そ、そうなのね…。それで、この森には二人しかいないの?」

「はい、ある朝起きたら二人しかいなくて…前は十人くらいいたんですけど…」

シュンッ

…あ。出てきたな。もー!今は別の子達と話してるのにー!!

「やほ!エリーシア!さっきの笑顔怖かったよー(笑)」

「…オミ。今はこの子達と話してるんです。」

「いやー、私もちょっと話があって…」

二人を見ると、オミを見て硬直している。

「…あー、ふたりとも驚いたかしら?ごめんなさいね、うちのオミが。」

「ちょっとー!!まるで私がやんちゃっ子みたいじゃない!」

いや、そうですが?

この子は今更何を言っているのかしら。

「それで、ふたりとも大丈夫?驚きすぎちゃった?」

そうすると、人見知りの方の子が口を開いた。

「いや、驚きますよ…だってあなたは…。」

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