第4話
「…ふう、やっと終わりましたわね。」
「疲れたよー。エリーシア、くっきー欲しいー。」
「今そんなもの持ってるわけないでしょう。」
聖域拡張の停止を完了した私とオミは、疲労から、息も絶え絶えだ。発動時は私の全力の聖力を注ぐだけ(これもまあまあ疲れますわ…)であり、私自身ポーンと出すだけなのでそのあとはミーラに聖力回復をかけてもらうだけでいいのですが、停止時は、私が適当にだして、使えないごちゃごちゃな聖力をきれいにほどき、私に戻し、そのあといろいろやって聖力を使えるようにするため、まず集中力。次に、聖力はつかえなくても私のもの扱いなので、ミーラは聖力回復をかけられないのです。私はもともと自分の器いっぱいに聖力が入っているイメージなので、器以上はミーラも聖力を与えられない。聖力過多は、命を落とす原因になる。
…そんなことを考えていると、横でオミが叫び始めた。
「って、ちょ、エリーシア!なんか囲まれてるんだけど!」
確かに、なにやら強そうな動物に囲まれている。白銀の狼に、漆黒の梟。茜色の山猫までいる。
「えぇ!どうして!?」
どうしよう。このままでは食い殺されてしまう。焦っていると、周りの動物たちが一斉にひざまずいた。真ん中にいた白銀の狼が口を開いた。
『エリーシア様、突然の訪問をお許しください。我らはこのカレイド大森林の守護聖獣であります。此度、この森の精霊様でおられますオミ様より、あなた様に仕えるようにとのご命令がありましたが、ご存じの通りこの森は人の子が迷いやすくできているため、お迎えに参上いたしました。我らはあなた様に危害を加えず、一生の忠誠を誓います。…紹介が遅れました。私はこの大森林の大守護聖獣を務めさせていただいております。バルと申します。』
「えっと、つまりあなたたちは聖獣で、私が主人になったってこと?」
『そのとおりでございます。精霊姫でおられるあなた様の話は聞いていましたが、まさかお仕えすることができるとはっ…我らは感激し、あなた様を待ちわびていたのです。さあ、他の者も泉で待っております。参りましょう。ハク、エリーシア様をお乗せなさい。』
『承知いたしました。バル様。エリーシア
「あ、はい。ありがとうございます…。」
オミは、にこにこしながら小さく戻って、私の指輪に消えていった。
「そういえば、泉、とは何ですか?」
ハクさんに揺られながら、訪ねた。
『泉は…我らの休息地です。あの泉には微量ながら聖力が含まれており、人の子や動物が入れば瀕死でも肩こりでも難病でも、なんでも治ってしまいますよ。』
まあ、妖精姫様なら、この程度なんの意味もないかもしれませんがね。と笑い飛ばしたのはバルさんだ。
「でも、聖力が湧く泉なんてすごいですね。」
『ええ、しかし昔、愚かな人の子が観光地にしようとして、聖力が著しく減ったため、交代で人の子が来ないように見張っているのですよ。もちろん、精霊姫さまは入っていただいて結構です。』
なんだか、とってもいい温泉に入れそうです!私、先ほどの聖域拡張の停止で、今ならどんなに怪しくてもウェルカムなくらい癒しを求めているのです…。
あとで、オミにはクッキーを出してあげないといけませんね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます