第3話

サク、サク、サク…。

あー、もう!なんでこんなに景色が変わんないのでしょうっ!

というか、この幹が100本に枝分かれしてる木、もう会うの3回目ですわよ!?

これ、絶対同じところ回ってますわよね…。

詰みましたわー!!

(ねー、エリーシア。まーだー?)

「まだですわ!というか、あなた方が手伝ってさえくれれれば、もっと早くこの森を抜けられていたのに…」

(えー、それを早く言ってよぉ)

その瞬間、私の周りはまばゆい光に包まれた。誰かに見られたら天使だ女神だともてはやされるんだろうが、私にとっては慣れたもの。

「…オミ、あなたの仕業ね。」

ミーラの中の、最上位種、森の精。私は彼らも数人使役しているのだけど、その中でなかなかに聖力が強く、あとかわいいのがオミだ。ちなみに名付けたのは私。もう2000くらいいるミーラたちは、全員私が名前を付けている。

そして、さっきオミが使ったのは、全聖獣使役ヒアリグ

ヒアリグは、そのミーラの力が及ぶ範囲…オミだったら半径1㎞くらい?…に生息する聖獣すべてと私が意思疎通できるようになり、いうことも聞いてくれるという、なかなかに強めの魔法だ。…その代わり、発動時のエフェクトがえげつなさすぎて、ちょっと苦手。だって私の存在をアピールしてるみたいだもの。まあ、この森の中だったら、たいして見る人もいないでしょうけど…

シュンッ

いやーな、今一番聞きたくない音がした後、肩まである白髪をふたつに三つ編みし、うすいよもぎ色のワンピースを身にまとった小さな女の子が横に立った。

しかたなく、もう何度めかもわからない注意をする。

「オミ、こういう誰もいないところならいいけど、絶対にほかの場所で出てくるんじゃありませんよ。」

「へへ、だってエリー遅くて、つまんないんだもん。」

ミーラたちは、普段は小さな小さな姿で、私のルビーの指輪の中に部屋を作って遊んでいる。いくら小さいからってなんでこの小さい指輪に2000人も入るのかすごく不思議だ。

そして、たまに小さな姿に飽きて、人の姿となって出てくる。いつも生えている羽をちゃんと消しているから、私が連れる分には問題ないのだが、いきなり出てくるのは大問題だ。オミは、一度、隣国の光の魔導士さまの前で出てくるというやらかしをやっているため、何度も何度も注意している。

「はあ、まあいいけど。それで、私はいまどのくらいの聖獣を使役しているの?」

「んー。ざっと500くらい?」

…え、え?この子、今なんて言いました?500?私、もともと200使役しているのですが。

「ちなみに、その子たちはどこにいるの?」

「それがね…この森、広がるのと同時に全地形が変わるみたいでね、あっち行ったりこっち行ったりしてるの。」

えー…めんどくさいですわ…。この子は本当に何をしでかしてくれたのかしら。

まあ、かわいいから許しますけどね!


そんなこんなで聖獣のもとにも行けなさそうだと悟った私は、おそらく意味のない聖域拡張を切ることに専念した。もちろんオミにも手伝ってもらって。…この魔法、起動にも停止にも莫大な集中力と聖力が必要なんですよね…。

だから、私は気づけなかった。何かがこちらに近づいている気配に。

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