第2話
「…さて、と」
目の前にある、小さなカバン2つ。私の荷物だ。お母様から頂いたドレスと、お守りの小さな水晶。そして、ミーラを使役…というよりは、ミーラが私を認識できるようにするガーネットのリング。私はミーラを縛り付けて使役するようなやり方ではなく、昔から友達的な感じでミーラに協力を仰ぐ感じでやっている。といっても、もうみんな昔なじみで、「え?またエリーシアなんかやったの?もー、しょうがないなぁ。」って感じでやって来て、「ほら、これでいい?」って感じでパパッと用事を済ませて、そのまま私の肩やら頭やらで遊んでる。くすぐったいけど、可愛いし、いっか。くらいの気持ちでいる。
にしても…
「頑張った、のに、なあ…。」
私だって、好きで嫌われたわけではない。浮気性でも、それなりに愛そうとした。なのに…
「お姉様は、いつも私のことをいじめてるの…。」
あのミナーシャの言葉で、彼からの信頼、愛情は失われた。
家族の絆なんて、お母様のおかげであったようなものだから、お父様も私のことなんて気にしない。
私の味方はミーラだけ。この子たちは、なんとしてでも守らなくては。
これからの苦しい生活を思うと、どうしてもため息をつきたくなるが、ミーラがいれば、なんとか、なるよね。
私はひと息ついてから、詠唱を始める。
「大地に咲く、聖なる花々の化身、ミーラよ。私の願いを叶えたまえ。」
…(え、なに?いまUNOしてたんだけど。)
「…私を、隣の国のどっか森の中まで、送って!」
…(お、とうとうこの国から出るのね!やった!みんな、遠出だよ!行こっ!隣の国の森…カレイド大森林でいいね!よし、行こー!)
「…え、カレイド大森林?え、ちょ、待っ…」
ヒュンッ!
…あ。
やってしまった。
私の周りは、見渡す限り木、木。
カレイド大森林は、この世界一番森である。なぜ世界一と言い切るかというと、広がり続けているからである。まるで宇宙のように、今この瞬間もとてつもない速さで拡大を続けている。
…そんなところの真ん中に、急に放り出されてもねえ。
たぶんミーラはUNOの続きを始めたし、私こっちの地形一切知らないし…。
しょうがない。
「聖域拡張。周辺の状況を調査。同時に生命活動を感知。」
私の聖力を、ちょっとばかり使うことにした。
私は普段から自分の周りに聖域をつくっている。身の安全のためだ。そして、その聖域をほんのちょっといじれば、いろんなことができる。昔やったのは、自分の歩いた場所に花を咲かせたり、治癒の草を生やしたり。聖女っぽいことだ。
「…さて、周りは…」
…げ。
まじのど真ん中だった。
周り全部森じゃん…どうしよ…。
私は広い森の中でひとり、途方にくれるはめになった…。
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