第41話 山田との通話

BBQの件、忘れないうちに電話しておこう、そう考えて俺は夜に山田に電話した。

「もしもし」

「もしもし、今いいか?」

「うん、いいよー」


「夏休みって忙しいか?」

「いや、まあ時々バイトくらいかな。そんなに忙しくないよ」

「そうか、それはよかった。今、前田と野口とBBQをしたいという話をしていて、山田でも呼んだらどうだという話になってな」

「4人でってこと? 君たち2人で行けばいいんじゃないの?」

「BBQ を2人するってなかなかシュールだろ。こういうのは人が多い方が楽しいんだよ」


「そっか。まあ僕はいいけどね。ただ昼は暑いから夜の方がいいかなー」

「そうだな、夜がいいんじゃないか、という話をしている。夕方から初めて夜電車のあるうちに解散という流れだな」

「いいね。場所は決まってる?」

「いや、これから探すところだ。どこかいいところを知っているか?」

「そうだねー。奥多摩とかどうかな? 電車で行けるし、川でBBQしたことあるよ。それは家族とだったけどね。そんなに人も多くなかった気がする」


「奥多摩か。あまり行ったことはないが、自然がいっぱいで涼しそうなイメージはあるしいいな。電車で行けるなら皆で分担して買い物して現地集合というのもできそうだしな」

「買い物は皆でした方が楽しくない? スーパーであーだこーだ言いながら食材を揃えるのが楽しいんだよ。あ、あとBBQセットなら持ってるから、親に確認するけど使っていいと思う。ただ、誰かと分担して運びたいな」

「わかった。野口でも派遣しよう」

「そこは男の出番じゃないの? まあいいけど。そこまで量は多くないから女の子でもいけると思うけどね」


「ちなみに、今井くんは前田さんと付き合ってるの?」

「いや? 特に付き合ってないぞ」

「そうなんだ。その割には仲がいいんだね」

「確かに、最近仲良くなった気がするな。まあ盗撮の件とかで色々あったからな」

「そっか。まだこれからって感じかな? とりあえず前田さんに彼氏が出来たら男達の争いも一旦落ち着くと思うからさ、告白してみなよ?」

「なんでそのために俺が体を張らないといけないんだ? しかもどうせそんなつもりじゃなかった、ってフラれるのがオチだ」


「そんなことないと思うけどなあ…… まあBBQの時にその辺り探ってみてあげるよ。任せてね。どうせ恋バナとかになるだろうしね」

 野口の顔が頭に浮かぶ。野口が山田を前にまともに恋バナができるとは…… 思えないな。パニックになっている姿が思い浮かぶ。


「山田は付き合いたい、とかないのか?」

「うーん、特にないなあ。あんまり束縛されるのは好きじゃないしね。程よい距離感で程よく遊ぶくらいがちょうどいいかな」

「村上みたいにか?」

「そうそう、もし彼女だったらこういうBBQなんかも参加できなくなりそうじゃん? それだとつまんないな、って思っちゃうよ」


「なるほどな。確かにそれはあるかもしれない」

「せっかくの高校生活だからたくさん遊ばないとね。変に制限をかけることはしたくないんだよ。まあ付き合ったらどうなるかは人によって違うと思うけどね。前田さんは…… わからないな。彼氏いたことないんじゃないかな? そういう子が付き合ったらどうなるかは読めないところがあるよね。すごいメンヘラになったりして」


「まあ頭が良いらしいからな。考えすぎて爆発するとかはありそうだ」

「ありそうだね。さすが、中々解像度が高くてすごいよ」


「あ、そうだ。伊藤さんもBBQ誘ってみてくれないかな? 伊藤さんともちゃんと話してみたかったんだよね。なんか面白そうな気がするんだ」

「伊藤か。夏休みは討論部の活動が忙しいと言っていたが…… まあ聞いてみるよ」

「うん、よろしく。山田が討論したいって言ってたって伝えておいて」

「わかった、じゃあまた連絡するよ」

「うん、よろしく」


 伊藤を誘う、という思った以上に面倒な話が出てきてしまった。さて、どうするか?とりあえず前田に相談してみるか。文字に打つのが面倒なので電話する。


「もしもし、今いいか?」

「うんどうしたの?」

「今山田と話したんだが、基本的にはBBQに参加できそうとのことだ。機材も一式家にあるから使っていいと言ってくれてな。それはいいんだが…… 伊藤と話してみたい、ということで伊藤も呼んでくれと言われたんだが」

「あー、伊藤さんか。中々面倒な話だね…… 呼ばないで山田くんのテンションが下がるのも怖いし、かといって呼んで涼子が不機嫌になるのも避けたいし……」


「そもそも奇数というのも厳しいよな。1人会話からハブれるやつも出かねない」

「そうだね。ただ、かと言ってまだ日程も決まってないのに伊藤さんは忙しくて無理っていうのもねえ」

「もう1人男を呼ぶか?阿部とかなら声をかけたらホイホイ来てくれそうだが」

「いいね。その方向で行こうか。6人でBBQなら人数的にも問題ないでしょ!」


「よし、じゃあそれで行こう。グループLINEでも作るか」

「そうだね。私の方で作るから他の人招待してくれる?」

「わかった」

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